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15年位前に タクシーの運転手さんに言われたことを ずっと心に留めている

”キャンドル作家”や、”灯りのソムリエ”と名乗って活動している私が、
ことあるごとに思い出す一言があります。
気になり出すと、考え込んでしまうこともあるし、キャンドルを作ったり
キャンドルを灯す楽しみをご紹介している私にとって、とても複雑で、今の世の中で 何とも言えない難しさがありながら、普段ほとんど考えていなかった事です。

おそらく、15年以上は前だったと思います。
キャンドルナイトのイベントに声を掛けていただき、少し荷物が大きくなってしまったけれど、駅前近くの会場で 駐車場に車を入れられるか分からないので、タクシーに乗った時のことです。

大きい荷物を見て、「今日は何かあるんですか?」と運転手さん。
キャンドルナイトのイベントのことを説明する私。
今もそうですが、『電気を消して、環境のことを考える時間にしよう』みたいなコンセプトで、キャンドルナイトが盛んに開催されるようになっていた頃です。
色々お話しているうちに、こんな内容の一言を運転手さんが仰いました。

「でもさ。ロウソクだって、燃やしたら二酸化炭素が出るよねぇ。ずいぶんたくさん燃やしてるのを見るけど、それって環境のためになるの?」

その時の私は、「う~ん…それもそう…です…よね…」のようなことしか言えず。
だって、確かにそうなんですもんね。

運転手さんは、別に問題提起しようと思っていたわけではなく、普通に
素朴な疑問を口にしただけだったと思います。
・・・が、私はその後しばらくの間考え込んでしまい、複雑な思いになりました。その後もずっと心に引っかかっています。

それを言っちゃあ終わりでしょ?!というような事なんですけれど。
人間が生きて呼吸しているだけで二酸化炭素を吐き出していますし、キャンドルを灯すなんてたいしたことない、他にもっともっと二酸化炭素の排出量が多いものはたくさんあるよ!と言えば、それもその通りなんですけど。。。
考え出してしまうと、何と言ったらいいか、、私は、何もできなくなってしまうような気がしてしまいました。

その後、東日本大震災があり、
昨年の春には、世界的パンデミックの中、いろんな国で同時にロックダウンが行われたような時期に、一気に自然環境が良くなったり、環境汚染が一時的に良くなったり、生物達がイキイキしてきた様子なども見ました。
人間が活動するだけで、環境にとんでもない負荷をかけていたことが、はっきり目の前に見える形で現れていたようでした。
そんなことがあったりで、またあの一言を思い出したりします。
・・・「燃やしたら、二酸化炭素が出るよね?」・・・むむ・・

今後、SDGsを大切に考え、行動していくことが増えていきますが、そういった意味でも「キャンドル」「蝋燭」というものはどうなっていくのか、考えることも増えました。
石油から採れるワックスなど「燃料」ともいえるものを材料にして作るクラフトって、キャンドルくらいでしょうか。蜜蜂の巣から採れる蜜蝋も、今や貴重な素材です。材料が無限にあるわけではないこと。これも、考えなければいけない事ですね。

そんな風に、キャンドルを作ったりキャンドルや蝋燭について学ぶ意味って何なんだろうと考えていくうちに、私の中では、キャンドル・蝋燭を「灯り文化」として伝えていく役割があるのかな、という結論にたどりつきました。

キャンドルナイトにも、様々な意味合いのものがありますね。
1人1人が電気を消して、昔のようなキャンドルの灯りの下での暮らしを
体感・想像してみることは大切だと思いますし
皆でキャンドルを作り、あかりを灯すという作業自体が、例えばお子さまにとっての良い体験になったり、その場の皆さんの絆が深まったりすると思います。
鎮魂の意味で灯すキャンドルナイトがあります。これは、亡くなった方への想いがこもっていて、お盆の迎え火・送り火のような、一種の儀礼・祭礼的な意味合いが大きいです。
イベントとして、集客のために開催されるものもありますが、それはそれで、町おこしの役に立っていたり、キレイな沢山の灯りで心が癒されたり、思い出になり、感動が生まれて次に繋がるなら、文化として残っていくと思います。

前に、今は「ハンドメイドキャンドルの黄金時代」かも!という内容で記事を書きましたが、
ただ、作って楽しい!こんな技術もある、こんなのも作れるよ!で終わらない何か。キレイ!かわいい!だけでない何か。
それを学んだり、伝えるにはどうしたらいいんだろう?
キャンドル・蝋燭に限らないことですが、奥深いです。そして現代は特に、物事を様々な角度から見て考えて行動することが、ますます必要になってきますね。
そんなことを考えるきっかけをくれたのは、15年以上前の、あの運転手さんの一言だったと思っています。

( 2021年8月17日 /9月17日一部本人による加筆修正・編集)

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