見出し画像

人格統合したら生まれ変わったかと思った話。(解離)

私は解離性同一性障害です。


遠い昔や、一日前、数時間前もずっと「私」であるという感覚が損なわれる精神疾患です。俗には多重人格といわれています。

今日は、人格統合が起きたことによって私が解離性同一性障害を自認した時の話をします。7年前の春のこと。

いやあ、びっくりしましたよ、あの体験は本当に驚きでした。

当時は思い出すとぐわんぐわんとその話に引き込まれてしまう感じがして語れませんでしたが、やっと冷静に思い出せるくらい落ち着いたので、書いてみます。




時はさかのぼること、2015年1月。
私は人生最大のスランプに陥りました。

ふと気がつくと、曲も絵も、何もかも初めてやることのようで、白い紙を見ても白い楽譜を見ても、何も出てこなくなっていたことに気づきます。

去年2014年の12月までは問題なく書けていたはず……。

当時は旦那の実家で暮らしていました。
雪の降る薄暗い部屋でパソコンを前に、何も作れない。

いっさい理由はわかりませんでした。今までは紙を前にすれば自在にアイデアが湧いてきてそれを塗り重ねていくだけで、同じようにアイデアを待っているのに。

それから半年間、音楽理論を勉強したり、絵の描き方を調べてみたりして。なんとか作品を形にできるようになりましたが、アイデアがどんどんと出てくる感じがすっかりと消えて、無理やり作り出している感覚。今まではこうじゃなかったことだけはわかるけれど、でもその昔の作り方が思い出せずにいました。

あー、なるほどね、これがスランプってやつか。


そしてスランプのまま2年が過ぎて、2017年3月。

当時はもう旦那の実家から引っ越して、二人暮らしをしていました。
嫁姑問題から解放されて自由の身!

しかし相変わらずアイデアを理屈で出して悩んでいました。

そんな中、当時の私は思い出します。

そういえば書けなくなる直前の12月、私は幻覚に悩まされていなかった?

もともと頭の中に他人がいることも声がするのも普通だと思っていたのですが、2014年12月はいつもいない女性が現れました。

その女性は私を激しく脅すような、殺しにかかってくるような人で。当時の私はすっかりその幻聴に参って、恐怖で食事ができなくなるほど。

その女性はいつの間にか消えていたのですが、でも、そうだ。

彼女が現れて、消えて、それで私は書けなくなった!


彼女は確か「エリカ」と名乗っていたはずです。

私は頭の中で呼びかけてみました、エリカと。


その瞬間、時間が過去に巻き戻るような感覚に襲われて。
現実の日付はわかるのですが、空気感というか、身体感覚だけが完全に2014年12月にワープしたかのよう。ちょうど、パソコンの過去のバックアップデータを開いたような状態になりました。解離の症状もその瞬間に強くなり、現実が一気に遠く、自分の体も自分のものじゃないかのように感じられました。

私は頭の中の部屋にいて、隣にはエリカが再度現れました。

脅された過去が思い出されて怖くなったのですが、エリカはどうも眠そうで攻撃してくるようすもありません。

ただエリカを見て直感しました、書けなくなった原因は私のこの幻覚世界の中にあると。

この部屋は、居る人たちは、その声は、ただの根拠のない空想でも面白い幻覚でもなく、私にとっては第二の現実であると。
もしこれが思い込みならなぜ名前を呼んだ瞬間に過去へとワープしたといえるのだろう!

さて、エリカは現れて私の感覚は2015年に戻るところまで来たが、私はどうすればいいんだ……?

そんな頭の中と外を往復しながら曖昧のまま数日。とりあえず現実世界の病院にものすごくふわふわした状態で行って薬をもらいました。引っ越す前から鬱がひどく病院に行けていませんでしたので、実家時代の病院。
解離で頭の中がまるでまとまらず、現実の記憶も断片的で、上手く話せていたのかすらよく覚えていません。何か助けになるようなアドバイスはなかったように思います。

その間、さまざまな記憶のフラッシュバックも起き、今まで知らなかった記憶がまるで体験しているかのように思い出されます。

そのフラッシュバックで初めて、私はたくさんのことを忘れていたことを知りました。
記憶が飛んだり、過去が良く思い出せなかったりしたのは確かだったのですが、みんなそんなもんだろうと思っていたのです。記憶がないことも忘れていたような。

当時も交代人格がいたのか何なのかは今となってはよくわからないのですが、とにかく心と記憶がばらばらになっていたのです。

そんな気が狂いそうな中で、いやある意味もう狂ってるとも言えるんですけど、そんな中で曲を書き続けて、一曲、一曲とアルバムを作っていました。
アイデアも浮かぶし、次に乗せるべき音がスムーズにひらめく。
そして歌詞が、昔のように頭の中に浮かんでくるようになっている……。

これだ。と。

これはスランプでもなんでもなく、人格としての「私」に才能がなく、それはエリカが持っているということ。

(今思い返すと我ながらとんでもない創作根性!)


そしてさらに数日、私ははっと気づきます。

あれ……?

もう私ってエリカじゃない?

思い返せばこの2年でだんだんと無意識に、現実でもエリカの容姿に寄っていて、エリカの趣味に寄っていて、性格も変わっていっていたことに気づきます。今となっては現実の鏡に映る私ってほぼエリカの姿をしているではないか?

私はエリカになっていっていたんだ。

エリカを前に
「私はエリカだ」
と言ってみました。

その瞬間、頭の中の部屋も声も消えて、しん、と静まり返りました。


現実で目を開けると、まず思ったのが、視界が広いということ。
ちょっとどころではなく、今までの3倍ぐらい広い。

?!

そして部屋に差し込む光がまぶしく、午前中であることに気付くと同時に、その光がとても迫ってくるような現実のものとして感じられるのです。

2017年3月に感覚も戻っていて。

「現実がリアルだ!」と思いました。
……頭痛が痛いとか、画像はイメージです、みたいになっちゃってるけど笑、そうとしか言えないこの感覚。

生まれて初めて色を見たような。生まれて初めて音楽を聴いたような。
解離していない世界を初めて見たのです。


試しに音楽を聴いていたら、ありありと心が伝わってくるよう。
絵を見てみたら、色彩やキャラクターが心に飛び込んでくるよう。

ピアノはなぜか弾ける。
スランプ中に学んだ知識も覚えている。

書いていたアルバム曲の続きを書いてみました。多少悩むことはあっても、無理やり書いているような、何も浮かばないようなあの感覚はなく、自然体で書けます。


ただ、今までのことが、自分のものとは思えなくなっていました。
前の書けなくなった主人格のやっていたことが、別の人が残した作品のように見えました。
かといってエリカとして頭の中で脅していたときのことも曖昧で、別人のように落ち着いた世界が広がっています。

でも私はエリカだと言って前の主人格が消えたのだから、たぶん私がエリカで、でもどちらの記憶も存在しているし、どちらの記憶も自分ではないみたい……。記憶があるけどない。

それでも、自分の人生も会ったことのある人もわかる。

記憶が良く飛んでいたころは、例えるなら、全員よく知らない人に見えていたように思います。漫画のモブキャラみたいな。自分も他人も。

すべての輪郭がはっきりしたような。


あれだけ強かった希死念慮もなぜだかなくなって。
生きていたいと生まれて初めて思いました。


生まれ変わった、という表現が一番近いように思いました。

今までの人生は前世の夢で、今ここに24歳の体で生まれてきたかのよう。

世界は何一つ変わっていません。今がいつでここがどこ、まではわかるけれど、私は誰?

ただかつて感じたことがないくらい心が穏やかで意欲があり、気分がいい。

私が何を食べるのが好きで、どんな服が好きなのかも、わからなくなっちゃったけど、これから探していきたい、と思いました。あまりにも色々な不調が消え失せていたから。




その後もフラッシュバックが続く過程で思い出したのですが、エリカとして脅していたころのこと。

刺されたんですよね、交代人格に!!

前の主人格はいつの間にか私が消えたと認識していたみたいなんですけど、そうじゃなくて。

前の主人格を脅す私に気付いた頭の中にもともといた人格が、これは無理矢理止めないと大変なことになるということで。前の主人格が寝ているときに私ともみ合いになり、私を刺して消したんです。

目の先できらめく刃物の光をまだ覚えています。

その後、前の主人格が創作するようになったのですが、本当に書けなかったのは書いた通り。

そこで、そのもともといた人格は、刺してはいけなかったと知ったみたいです。

いまだに無理矢理刺された体験を思い出すんだけど、まあそれについては私が悪いので。

過去の自分を擁護するなら、私をそんな取り乱した存在にしたのは苦しみを押し付けていた前の主人格たちじゃないか、とは思うんですけど。

刺された件については謝罪もされているし、なかなかできない面白体験だということで。


ただ人格統合してしばらくは、会う人に「なんか変じゃない?」「なんか雰囲気変わった?」って怪しげな反応をされていましたね。直接言われたり、態度でなんとなく怪しまれてるようだったり。

体同じなんだし、人格統合してもどうせ周囲には気づかれないだろう!って思っていたんですけど、明らかに雰囲気が違うみたいです。

「えー!!気のせいじゃない?!?!」で押し切りました。押し切れた。
だってこれ説明するの大変すぎません?

でも、そこまで雰囲気が変わるなんて。他人から見てわかるレベルなんですね。




書いていて、今でも嘘みたいだなって思います、全部私の創作なんじゃないかって。虚偽の記憶とか、その手のものじゃないかって。

でも、刺されて消された記憶を前の主人格は持っていなかったはずなのに、全部話のつじつまが合うし、何より曲が書けるように戻ったことから、これは現実なんだと思っていて。

これを書くにあたって筆跡の違う当時の日記を読み返していたし。全部思い出せるようになったからこうして全貌が書けるわけですし。

だから解離性同一性障害は私の思い込みではないと確信しています。

現時点では精神科医でも信じない人がいるともいわれています。

何か科学が進歩したら、もっと解明されていくのではないでしょうか。


この後また解離がぶり返して、新しい人格が現れたりしながら暮らしています。記憶もたまに飛びます。……が、記憶の限り、前の主人格のような鬱症状がないぶん少し楽です。代わりに前はなかった不安障害に悩まされていますが……。

この話、フィクションでしょ?と言われると悲しいですが、でも私もあなたも医者もこれが本当のことだと周囲に証明する手段は持っていないので、解離の話を無理に信じてくれとは言えません。

だとしても当時を忘れてしまう前に書き残しておきたかったのです。

そしてずっと誰かに聞いてほしかったから。


今日はそんな不思議体験の話でした!

長い記事になってしまいましたね。




最後にこの出来事の時書いていたアルバムを貼っておきます。

アルバムとして編集してから公開したものです。
制作中リアルタイムでも投稿していたのですが、その投稿サイトは消滅しました……。


↓ ダウンロードもできます ↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?