Akari

詩。

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【詩】 雨

雨が通学路を濡らす。わたしはあなたの寝息を聴くと、いつもそこはかとなく孤独を感じるのだった。定期券の入るパスケースの許された直角で、この夜をどこまでも守りたかった。それは叶わなかった。雨音がしんしんと刻むのはくたびれた余白でなく、たった今ここを凪ぐシーツの縦じわであってほしかった、願うのに、砂時計がわたしたちを彼方まで溶かす。このまま眠ってしまおうか、とだけ思った。「その淡い瞳で何をみているの!」知りたくて声をかけるけど、ほつれた学ランの裾の糸、向いていくあの子の白い肌、それ

    • 【詩】 child

      体温を計ると庭先には春の匂い、ぼくは爪先から引力を疾走するムカデになりたかった。 お母さんについて酷く思い付くのはそうして朝を省みず後ろめたく家出した昨晩、泣きながら戸を叩くボーイフレンドの嘘つきな加減から、たまらなく虚しい夜の底を仰いだ気になる。 バターを切るときにバターナイフを使いたくてどうしても、ぼくはその指を仕舞った、朝。 人を化かす恋の季節が湖を埋めるとゆるやかなカーブで思い出す、塩味の青がもうパンへ染みた。 * 大胆な下着を譲り受けたぼくのクローゼットは

      • 【詩】 from

        花びらの香りに包まれながら あなたの泣き顔を想った。 しっかりと立ち尽くし 手鏡の中に映るわたしの、 短い睫毛が春風の方へ散らばる それを鋭利に縛り、 カメラのシャッターは魂の居どころか あるいは招く楽園の蕾。 出会した猫を抱き上げ 震わせた声のない音で、 わたしをどこまでも連れ出してほしかったーー

        • 【詩】 moon light

          月がきれいというだけで ずっと前から知っていたのだろう あなたと わたしと 星たちの、物語。 たくさんの美しさを抱えて 生きながら、死んでゆくかのような おぼろげな横顔は 永遠を  遠くに ひきつれたまま ひどくかなしく、笑うこともあった。 踊る頃 踊る頃 ネッシーに出くわすみたいな 時刻 それは星座を みつけるための、 準備された すこやかな 時間。 目を閉じて、息を吸おう あなたと わたしと 星たちを、保つ。 いちまいの大きな光なら、 この愛をひろびろと 受けとめ

          【詩】 銀河

          あらいたてのシャツの香り、 身に纏って。 あらわになった瞬間の丘を駆け下りた ここは、東京。 リンパをめぐった家々の遠い旅と、 シャッターチャンスの幻にだけ 星たちと、 わたしの目は、ぐっと見開かれて。 (なつかしいラメのかたちに) たくさんの愛を、知りたい たくさんの恋に、触れたい いまならそう、思えた。 ことばの深海を 手をのばし、 わたしたちは (あてもなくなって、)

          【詩】 銀河

          【詩】 夢

          叶えたいことなら 幾らでもあった わたしたちだけど。 願うより先に 見惚れてしまうもんだから 仕方がないよね、 穴の開いた クラスメイトの顔が やけにふらふらと 近づいてきたときは、 輝かしい命ごと 捨ててしまおう、 その海へ。 夏の日差しを ふやかしていた 口笛の喪失では、 あたたかい時刻だけ 淡々と覆っていた、 喉声のつややかさ。 (あちらこちらに抱き締め)

          【詩】 夢

          【詩】 Blue

          ふいに積み上げた 公道を飛ばして 懐かしい果実を ほおばっていた ダンスするしかない 合図鳴らしたなら 弁護されてみたい わたしたちの 何の取り柄もない幻想は、 (微風くらいあったから) 遠ざかる鱗粉の 秘密基地では 空洞を思いやるようでいて 開け放たれた いまごろ大胆なうつしみを 投げだしているころだろう 前世。

          【詩】 Blue

          【詩】 ありふれた態度だけ 煩わしいな 猫のふりして またたび嗅いだの あなたのまあるい膝の上に、 はびこったのは 夢だろうか 幻だろうか つたないあたしの 身のこなしだけは 世界のだれにも 知られてしまわない あたたかい部屋の隅。 (オレンジシトラスのかおり)

          【詩】 ありふれた態度だけ 煩わしいな 猫のふりして またたび嗅いだの あなたのまあるい膝の上に、 はびこったのは 夢だろうか 幻だろうか つたないあたしの 身のこなしだけは 世界のだれにも 知られてしまわない あたたかい部屋の隅。 (オレンジシトラスのかおり)

          【詩】 雪国

          今、奮い立て。 ファインダー越しにしか知らなかった世界 (行きずりに、抱いて。) やわらかい紫外線に歓喜されながら、 うつつをみつけた。  淡いだけの美しい  高架下の風景は  年代のあらわれない岐路の上、  半裸になって踊る  (虫かごの喘ぎしかしらない。) ああ、奮い立て。 わたしたちの半端なため息と軽快は、 こころ麗らかに (すべって。)  その雪山へひっそりと、  歩いてゆきたいだけなのだろう?

          【詩】 雪国

          【詩】 fiction

          波の流れる清潔さを受けとめて、 私はここで、生きている。

          【詩】 fiction

          【詩】 胎児

          口数の少ないあなたが泣いているのはどうしてだろう、 すべては砂のようなやさしさで、 包みこんでしまえば。 コーヒーカップの湯けむりを遠回りした、 みたこともない景色が燦々と、 わたしたちを、 部屋を覆い尽くしたカーテンのやわらかさを伝って。 (わからない視線の一部始終をもう、剥いだりはしないよ) また、ここから始めればいい 何度でも。 ずっと、抱っこしたルールに切り貼りされて。 おなかの中から、 美しい鏡になることを はじめから、 予感されていたのだろう。 胎児の声がする

          【詩】 胎児

          【詩】 正義

          正しい道にたった一つの魂があって、 それを織りなすわたしたちの気配は幾許もないんだろう、 (空気みたいにさらさらで。) 七夕の夜にまっすぐな瞳を零れた、 頭上には訪れるかもしれない星がなん百と駆けていた、 信じていたいロマンスの一欠片。 抱きしめて、 目が合ったなら、 願うまでもなかったと嘯いてしまえばいい、 たよりないことばの天気予想は、 こわして、 (誰にもしられたくない空砲みたいな藍色をしていました。)

          【詩】 正義