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我が家に来た可愛いベビーの話①

私はどこにでもいる30代の主婦だ。
結婚して20代の半ばに第一子を授かり、初めての育児はとても幸せでとても大変だった。いや、七歳になった今も別の大変さはあるが。
中学校の教員である旦那は土日もほとんど家におらず、初めての育児をおよそ二年間ワンオペで奮闘した。
寝ない、食べない、のんびり成長の長男との日々も語りだしたらネタはきりがないのだが、タイトルのベビーとは長男のことではない。
ここでお話ししたいのは、我が家の次男のことだ。

次男を妊娠したのは夏の終わりのことだった。
私は三年前に女の子を子宮内退治死亡、つまり死産している。
原因は急性妊娠高血圧だと言われた。
臨月に入る最初の検針日、病院で旦那に電話をしながら泣き崩れた。
そのため、次の妊娠の時にはNICUがある総合病院にかかることをすすめられていた。
幸い今回の妊娠は三年前のような体調不良はなく、血圧も安定していた。
辛いつわりを乗り越え体調が安定してくると、今度は無事に出産へ辿り着けるかもしれないと期待していた。

通っていた総合病院の産婦人科で、異常が見つかったのは20週の頃のことだった。
やけに長いエコーを終えると、担当医から心臓が真ん中にあることが心配だと言われた。
詳しい話は忘れてしまったが、通常左寄りにあるはずの心臓が左側に何かがあることによって真ん中へ寄ってしまっている、ということだった。
担当医に告げられた病名は横隔膜ヘルニアだった。

先天性横隔膜ヘルニアは横隔膜に欠損があることによって、本来腹部に収まるべき胃や腸が胸の方へ上がってきてしまう病気だった。
穴の大小によるが、臓器が上がってきてしまうことによって肺が圧迫され、肺が十分に成長しない肺低形成を伴う。

この時、次男はまだ20週。
横隔膜にどれほどの穴があるのか、エコーでは判断できなかった。
そして担当医に言われたのは残酷な現実だった。
無事に出産にたどり着けても、生まれてすぐに死んでしまうかもしれない。
そもそも出産までたどり着けず、お腹の中で死んでしまうかもしれない。

もっと詳しい検査ができる病院を紹介する。
もう20週。
早く決断しなければいけない。

それはつまり、人工妊娠中絶を視野に入れるべきだということだった。


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