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トンネルの向こう側 13/20

目を閉じ見える光景はいつも同じ。記憶の中に、いつも後ろ姿の人が現れる。距離は遠く、時間が経てばまた離れていく。その大きな背中を私はだた見ていた。手には遊び道具を持っていた、無邪気な頃の記憶。距離は変わらず離れていく。その感覚を、その距離を、私はどう感じたらよかったのだろうか。聞きたかった事も、話して欲しかったことも、その光景が私の言葉を奪っていく。あ…手から何かが落ちて、割れた。それはたしか大切なものだったのに、簡単に放してしまった。沈黙の中に、壊れた音が強く響き、私は周りの目線を奪った。が、その人は振り向かず離れていく。私をひとりにして、私から言葉を奪って。私の大切なものは一瞬でなくなった。