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男女は毎日がプラクティス

お正月休みの午後2時、池袋某所。読書をしたくて、私はお茶をしていた。そこに、若い男女が入ってきて、私の隣の席に座った。なぜか直感で「あ、アプリでマッチングして、今日初めて会う二人だ!」と思ったのだ。そして、男子はなにやら獲物を狙う獣の空気をまとい、血の匂いをさせていた。

いま、モテてるでしょ。 

直感はあたり、アプリからの初対面だったようだ。女子の「ずっと会話してたのに、なんか変な感じするね」から始まり、男子の「そうだよね、違和感なさすぎて初対面な感じがしないよね」と返し、「え?私は、初対面だから緊張してるよって言いたかったの」とトーク開始。

(すでに、ここで試合の実力差を感じる。女子のいう「変な感じ=どきどき」として非日常という定義に対して、男子は「変な感じ=違和感を覚えない不思議さ」とまるで日常と定義することで、「この出会いは運命的な特別感」を醸すわけです)

すると男子、「思うんだけど、●●ちゃん、いまモテてるでしょ、そういう雰囲気でてる」「え??そんなモテとか関係ない人生だし…」「そうなの?絶対モテの空気でてるよ。だって、俺、今日すごく嬉しいもん」

(はい、きました。自分を特別な男性として意識させるためには、相手に“自分は女の子として意識されている”という認知を刷り込むわけですね)

午前中はなにしてたの?

とにかく、終始会話の展開が素晴らしかったんだけど、今日の会話スプリクトの肝はココです、最後まで読んでね。テストにでます。

男子「午前中はなにしてたの?」
女子「ゆっくり起きて、のんびりしてた。●●くんは?」
男子「引っ越ししてた」(←はい、ここ想定外ですね)
女子「え?引っ越し?」
男子「一人暮らしの部屋から、実家に戻るんだよ。だから自分の車で何回か往復して荷物移動させてた」
女子「えー、そんな大変な時にありがとう」
男子「この時間に来れるように引っ越し頑張った!褒めて!」(←女子からすると、自分のために時間を作ってくれたと思う)

今日のルールは写真みせるまで帰れないだからね!

冒頭から、男子が会話のきっかけをリードして、女子の過去の恋愛やバイトなどを傾聴、同意、深堀を繰り返し、女子の警戒心を解いていくわけです。途中で男子も自分の過去(=汚点)を話しながらも、おおよそ会話のバランス的には、女子7:男子3のバランス。女性としては「自己開示していく気持ちよさ」を感じつつ、相手の自己開示も聞けることで、「この人、いいかも」になっていく会話の展開が素晴らしかった。なにより、彼の日頃の訓練、毎日のプラクティスと実践経験の豊富さを感じました。

例えば、

男子「年上と年下だと、どっちが好き?」
女子「えー、どっちでもいいけど、癒されたい」
男子「俺、世界で3本指に入るレベルで癒し力は高いよ」(←明るくて明確で盛大なウソは、ネタとして聞けるので、好感度高い)
女子「えー、もう嘘しかないじゃん」
男子「なんで見抜くの?俺の嘘。もっと俺のこと見抜いてよ、見抜かれたい!」(←君は特別だから僕を知ってもらいたい、を刷り込む)

女子「私ね、今すぐ結婚したわけじゃないの」(←重たい女じゃない主張)
男子「でも、俺はいつの日か未来はそうなりたいって考える女の子って素直に素敵だと思うよ」(←女子の予想を超えてくる肯定)

男子「あ、バイト時代の写真みたいな」
女子「え、やだ。いまより太ってて、顔パンパンだもん」
男子「絶対可愛いから、みたい。あ、その写真みせてくれるまで、帰れないが今日のルールだからね!」(←ルールという言葉で、気持ちを縛る)
女子:「えーーーいじわる」(←嬉しそう)

ってな感じで心地よくテンポよく展開するわけです。これ以外にも「じゃ、●●ちゃんの好みは俺だね」「俺、期待していいの?」「俺なんかと話してて楽しい?」など、さわやかに「俺」を主張する。。。策士だのう、貴様。

認知心理学なのか、恋愛工学なのか…?

まあ、23歳男子(大学院生)すばらしかった。ちなみに、女子は25歳社会人。

*異性として扱うことで、自分の女子を意識させ、恋愛スイッチを入れる
*女子に、自分の存在が特別であることを認知させ、脳内シェアを高める、刷り込む
*相手の会話の言葉を繰り返しつつ、疑問と同意をバランスよくちりばめてることで、お互いに「共通性」があることを認知させる
*女子に自己開示させることで「共感」と「理解」が成立したと誤認させる

認知心理学なのか、恋愛工学なのか不明だが、、何かベースにしてテクニックを駆使している会話展開。もう、女子から「すきすき♡」のオーラがでているのに対して、男子からは全く温度を感じない。。。女子、かわいそう。。。涙。

この後、予定あるの?

おおよそ会話も終盤戦となり、

男子「この後、予定あるの?」
女子「ううん、特にないよ」
男子「そっかー。残念。」
女子「え?」
男子「俺、今日中に引っ越しの続きしないと契約違反になるんだよ…」
女子「え、…そうなんだ。うん、大変だよね、今日はありがとう」
男子「じゃ、帰ろっか!またデートしようね」

と、二人は帰っていきました。

そう、男子の最初の「引っ越し」話題は布石だったんですね。
自分側に意思決定のカードを残しておいたわけです。男子的には、「お持ち帰り」も「帰る」も、どちらでもカードを切れるように仕込んでおく。

女子としては、お茶の後のデートや展開を期待して、「予定空いているよ♡」と言ってしまったことで、自分の恋のカードと陣地を明け渡してしまった。
ここに、彼の毎日のプラクティスの賜物を感じたわけです。

「写真を見せるまで帰れないルールは、いったいどこにいったのか?」

そんなことを思いながら、私は「命短し恋せよ乙女」を心の中で歌いながら、大仏のような表情でお茶を飲んだのでした。


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