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Weekly Quest 2021年8月30日号


毎週月曜日にWeekly Questと称し旬な話題を深く掘り下げて投資のヒントにしていければと思います。今月のテーマは「バイオテクノロジーと投資:認知症」についてです。


今月のテーマ 〜「バイオテクノロジーと投資:認知症」〜


相変わらず残暑が酷いですが、はやいもので8月も明日でおしまいです。時間が経過するのが本当にはやくてびっくりしてしまいます。今回は認知症の中の ②脳血管性型認知症と投資について考えていきたいと思います。

これは脳の血管でなんらかの理由で障害が生じた結果、認知症を引き起こすというものです。血液の塊が脳の血管内で詰まると「脳梗塞」、破裂すると「脳出血」を引き起こして詰まったり破裂したりした周辺部分やその先に血液が行かなくなり脳神経が死んでしまうことで脳が活動ができなくなり認知症を引き起こすというものです。

詰まりを取り除いたり、破裂したところを治せば脳の機能は回復しそうですが、ダメになった脳神経は二度と回復してくれません。これがこの病気の非常に厄介なところです。現状では詰まった血液の塊を溶かすという治療が行われますが、脳神経を再生するということはできません。また「脳神経を再生医療で蘇らせる」と言った研究があるのかどうか知りませんが、非常に難しいと思います。結論から言うと現状では治療薬はありません。

ただしその仕組みや現在の取り組みを知ることにより投資へのヒントになるかもしれません。ココが投資の肝です。簡単に仕組みを見ていきます。

前回のアルツハイマー症でも出てきましたが脳内では「脳脊髄液」、首あたりから「間質液」という液体に変わり全身を循環していますが、「脳脊髄液」が流れなくなることがアルツハイマー症の原因ではないかというのがBiogenの薬の考え方になっています。脳でなんらかの障害が起きるとこの「脳脊髄液」が流れなくなり脳浮腫(脳組織が膨らんだ状態)を引き起こし周囲の組織を圧迫していきます。さらに脳組織が圧迫されると神経内のニューロンが異常を起こし、脳内に「ノルアドレナリン」という物質が大量に放出されてきます。これが今度は「間質液」にも影響を与えてしまいます。「脳脊髄液」「間質液」は常に循環しているものですから、流れが停止すると神経伝達に重要な役割をはたすニューロンが今度は壊死してしまうのです。壊死したニューロンは二度と回復しません。それが麻痺や障害を引き起こすという流れになります。

しかし、この「ノルアドレナリン」を受け取らなくすれば間質液の異常も防げることになります。「ノルアドレナリン受容体を阻止」することができれば脳の被害の拡大も防げるかもしれないということになります。

クリアランスによる脳卒中後の損傷拡大の抑制 -脳内の水の動きが鍵-


ただ、人間の脳血管はちょっと厄介なもので、ほとんどの治療薬を吸収しません。血液脳関門と呼ばれている”関所”のようなものがあり、そこを通過できる物質が限られているので薬を脳の奥深くまで届けることができません。ただしこの「ノルアドレナリン受容体阻害薬」はこの脳関門を通過することが可能なものもありますので、今後の治療薬として可能性があるかもしれません。ちなみにアルコール成分、カフェインはなぜかこの脳関門を通過することができるんです。その効果はみなさんがよくご存知だと思います(笑)

また、この「脳脊髄液」の出口が鼻粘膜のリンパ管であることから(そこから間質液と入れ替わり不要な物質はリンパ管に出される)鼻から脳に薬を届けるという方法も現在考えられています。

余談ですがこの鼻粘膜のリンパ管がコロナで異常をきたすと今度は脳障害の恐れがあると言われているのは今まで見てきたような仕組みがうまく行かなくなるということです。

(次回に続く)

最後までご覧いただきありがとうございました。