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Weekly Quest <6つの理由>

(2023年10月2日号)


毎週月曜日に Weekly Quest と称し旬な話題を深く掘り下げて投資のヒントにしていければと思います。


投資家が現在売りに転じている6つの理由


とうとう10月になってしまいました。もうあっという間に年末になってしまいますね。時間の経過が早すぎてついていけません笑

今週は、CNBCではお馴染みのJim Cramer氏が先月9月21日に面白い記事をアップしていましたのでそれをご紹介したいと思います。ただ和訳するのではなく、本当にそのようになっているのかも検証してみたいと思います。


アメリカの投資家が売りに転じている理由には六つあるとのことです。それについて考えていきたいと思います。

1:金利

”金利が高く引き上げられた結果、インフレーションが沈静化すると株式を売却するから”

それは、今後もインフレが沈静化していくことにより政策金利が利下げに転じるなら株式よりもリスクフリーの長期国債の方が値上がりすることになるからです。

金利が下がれば株が上昇すると思われがちですが、金利を大幅に引き上げた後は景気が悪化し、それを修正するために利下げが実施されるというのがセオリーなのでむしろ政策金利引き下げが株式の売却号令になりかねません。これは過去の歴史を見れば明らかです。

このブログでも何度も書いていますが、景気が悪くなると株価は上昇しずらくなります。最近投資を始めた投資家はこれが理解できていない人が多いですがそれは、借入金ということを忘れているためです。

そして景気悪化の中、金融危機でも起きない限り金利が下がるなら過去に発行された国債の高い利息をもらいながら長期国債を保有した方が単価の値上がり益をリスクフリーで(アメリカ人は)狙えるわけですから株式を保有する必要がないということになります。

また、元本の値下がりが配当の何十倍になるかもしれないなら、配当利回りで買った株も売ってしまおうということになります。それなら高くなった配当利回りの株式を買えばいいという発想に陥りがちですが、企業は不景気になり利益を稼げなくなると減配しますから思ったような配当利回りは望めないということになります。


2:マクロ経済の弱まり

”マクロ経済への逆風が企業収益を減少させ、それを反映するように株価の調整が起きるから”

失業率が史上最低を記録したり賃金が大幅に上昇している中でもここ最近のPMI指数など製造業指数の推移を見ていると政策金利の引き上げ以降ずっと右肩下がりが続いています。

また、企業の決算も売上高の毎期ごとの成長率がどんどん低下し、売上高自体も減少してきています。ご存知の通り中国との貿易問題やロシアのウクライナ侵攻などによるエネルギー価格も変動しており海外でビジネスを展開する企業にとっては良い話はいまのところ一つもない状況です。

3:利益確定売りへの恐怖

”機関投資家が年初からの株式評価益を確定させると、それを見て個人投資家が動揺することになるかもしれない”

年初から指数は上昇してきましたが、その間強い経済指標を見てリセッションは来ないとか株価は上昇基調に入ったなどという意見がコンセンサスになってしまいました。

しかし銀行が倒産した時に金融危機だと(金融危機でもないのに)大騒ぎしたこともすっかり忘れて強気になった機関投資家も、ここにきて再びの資源高や緩和に否定的なFEDの様子を見て慌て始めたということです。

ならば評価益を今のうちに実現益に変えておこうと考えて売却に動くのは自然な動きだと思います。今後年金などの資金の動きに注目というところでしょうか。

4:FRB

”FRBが利上げ停止に向けてオールクリアサインを出さないことに投資家が警戒している” 

これは毎回のFOMCでパウエルのコメントを見ればわかりますが、多少CPIが下がったぐらいでは利上げを全面的に停止することはないだろうということです。そのことに業を煮やした投資家が売却に転じているというわけです。

また、FEDには予防的観点から最後に利上げをするということを昔から実施してきました。利上げ停止=利下げではありません。ましてや利下げなどはすぐには実施されるわけもなく、早期に利下げを期待して買いをいれると思わぬしっぺ返しを喰らうことになります。

以前にも書きましたが過去の大暴落はFEDが利下げしてから本格的な下落になったということを覚えておいた方が良いでしょう。

5:政治の動揺

”民主党と共和党が有害な関係にあり、その機能不全は市場も十分認識している” 

これについても予算案をめぐってメンツを優先した結果格付け会社から米国債の格下げという最も不名誉な評価を得たことは記憶に新しいことだと思います。

特に最近は近年稀見るほど対立はひどい状況で、国益を無視して選挙対策だけに終始している姿は見るに耐えないものになっていますが、今回の政府閉鎖の可能性についてもまたもや同じことを繰り返しそうな勢いで、肝心の政府債務削減に対する姿勢が一向に見られないことに対して格付け各社が再び米国債の格下げ見直しを仄めかしています。

これ以上格下げが進むと金融市場には大きな負担となることは言うまでもありません。

また、アメリカ国内での政治による格差社会もほとんど解消されることなく、これが株式市場に良い影響を与えるはずがありません。


6:ストライキ

”ウォール街は全米自動車労組のストライキによる波及効果に怯えているかもしれないが、アメリカの労働者のほとんどは組合に属していないため、そんなことは起きないと考えている”

自動車というのは裾野の広い業界が支えているのはご存知だと思いますが、現実的に川下の部品供給会社の生産も既に止まり、生産に影響が出始めています。先週のブログでも書きましたがストライキは自動車業界だけではありません。

今回のストライキの前にはインフラに関わる分野の大規模なストライキが何回も起きそうになっていますが、そう言った一連の流れが経済に与える影響は非常に大きなものになってきています。

それは賃金インフレです。賃金インフレは、ストが繰り返される限り賃金インフレが緩やかになることはありません。賃金インフレが沈静化しなければアメリカ全体のインフレも沈静化することはありません。

以上、投資家が売りに転じている6つの理由について見てきましたが、どれもこれも今後も簡単に解決するようなことではなく、さらなる売りの材料になりかねないというものです。

特にこの中で三つ目の話は重要です。先にも書きましたが、こう言った状況を見て、年初からの好調だった株式の評価益を機関投資家がいつ利益確定売りに転じてくるのかということが最も懸念されます(既に始まっているかもしれません)。

年初あたりから投資用資金を既にキャッシュ化して ”今か今か” と投資のタイミングを待ち侘びている投資家もいらっしゃるでしょうが、まだまだ我慢が必要ということになるかもしれません。




最後までお読みいただきありがとうございました。