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Weekly Quest <スマホで何する?>

(2023年9月18日号)


毎週月曜日に Weekly Quest と称し旬な話題を深く掘り下げて投資のヒントにしていければと思います。


スマホの今後の拡張性


Apple の新製品発表イベントがありましたが、特に目新しいものはありませんでした。事前に言われていたようにiPhone15ではチップ性能向上のほか、Lightning端子が USB-C端子に変更されたぐらいでした。

端子変更については一部の Appleユーザーからは ”ようやっとかよ” という声も出ていますが、iPhoneしか使わないユーザーも以前の Lightning ケーブルの廃棄処分が増えるということです。廃棄するかどうかはユーザーの責任で Apple 側は関係なしということでしょうか。

あとはボディーの素材変更で重さが少し軽くなるということでしょうか。しかし、今回の Lightning 端子の変更について個人的には Apple の現状を物語っていると思っています。

いわゆるマイナーチェンジばかりでフルモデルチェンジをする要素が現状ではなくなってしまいました。iPhone3GS 以降利用しているユーザーとしては、最近のiPhone にはほとんど感動することがなくなりました。

それでも Siri が搭載された時には「これすごいな」と感じたもので、英語版に変更して英会話の練習に利用したものですが、世間の評価はイマイチでした。今や生成AIといえば最近出てきた最先端技術のように思っている人が多いですが、精度は悪かったものの、Apple は随分前から iPhone に搭載していたということになります。しかし、いまや Siri が取り上げられることすら無くなってしまいました。

それにしても最近ではスマホがあれば、電話やメール、インターネット、ゲームや音楽や動画鑑賞の他に電車や飛行機にも乗れる、店舗でも商品が買える、株の売買や振込ができる、家の家電をコントロールできるなど、できないことを探す方が難しいぐらいスマホで完結してしまい、何でもできるようになってしまいました。

逆にいえばこれ以上の機能拡大はもはや難しいのではないかと思います。唯一不便なことといえばバッテリーの持続時間ぐらいではないでしょうか。これについては機能向上と相反することになりますし、電池の機能向上も今のところ今以上の改善は難しいです。

拡張とは言っても AIチップを搭載しこれ以上の画像認識力や位置情報が必要になるのでしょうか?。解像度のアップは映像関連の関係者にとっては朗報ですが、少なくとも今の私には必要のない機能だと思います。

そう言ったことを踏まえて世界でのスマホ販売台数をここ10年間の推移を見ると2017年あたりがピークでその後緩やかに減少してきています。


(世界のスマホ販売台数推移)

これ以上の機能拡張が期待できないのであれば、あとは限られた市場でのシェアの奪い合いだけになってしまい、最後は価格下落を招き業界としてはお終いということになります。

しかし、Apple について考えると市場でのブランド力は最後の武器になります。ブランド力がないのに市場シェアを拡大しようとして失敗したのが、日本の家電業界です。一つのボタンにいくつもの機能を搭載し高額な洗濯機や冷蔵庫を中国やインドで売り出したのはいいもののちっとも売れなかったという例があります。

「我々の高い技術は必ず受け入れられる」といった見事なまでの勘違いが失敗の原因でした。結局、最低限の機能で安価な地元企業の家電がバカ売れして日本の企業はさんざんな目にあったのは有名な話です。

インドに至っては3000円ぐらいの手回し洗濯機がバカ売れしたという話がありましたが、一台あたりの単価が安くても人口が多い分、数が売れれば儲かるわけです。

日本企業としてのプライドとコストが安売りを許さなかったんでしょうが、ブランド力が確立していないと高くは売れないのです。ベンツやポルシェがリーマンショックの影響をほとんど受けなかったのも、ブランド力のおかげということなのです。

Apple の iPhone をやめて中華製のスマホに乗り換える人は ”無理やり” でなければごく少数です。市場が縮小する中にあってはこのブランド力が Apple の唯一の武器ということになります。


最近のApple


それでは最近の Apple はどうなっているのでしょうか?。iPhone の最近の売上高推移を見てみます。


(iPhoneの売上高推移:単位百万ドル)

これを見るとクリスマス商戦頼みが鮮明です。クリスマスをきっかけとした機種変更も年々増加しているものとは思われますが、それを除くと低迷していると言わざるを得ません。

ピークの売上高から見ると直近は約43%も減少しているというボラタイルな推移になっています。この四年間の iPhone 売上高の中央値は440億ドルぐらいですので直近はそれも下回っているということになります。


(Appleの売上高利益率推移)


この四年間の Apple 全体の売上高純利益率を見ると概ね24%ぐらいで推移しており、製造業の平均よりも高い数字になっていますが、これはブランド力があるからこその利益率です。値上げしてもみんな Apple 製品を買っているということです。しかし、気になるのは中国での売上高の推移です。


Apple の全体の売上高における中国でのシェアは約20%ということで無視できない規模になっていますが、中国での Apple 製品の売上高推移を見てみましょう。


(Apple製品の中国での売上高推移)


こちらもクリスマス商戦によるところが大きいですがここ四年間の中央値は約146億ドルぐらいですので直近の販売台数は若干多いというぐらいでした。今回の規制は中国共産党の役職員に限定されるものですが、いずれ中国国内での全面使用禁止も考えられます。そうなると厄介なことになります。

Apple にしてみればかなり迷惑な話ですが、政治的な話ですのでどうにもならないところがあります。ヒット作が出る、出ないの話より政治的なリスクも考える必要があります。

最近では中国政府が ”China Chip , China Heart” というスローガンを掲げ始めていて暗に Apple 製品を使うなと言わんばかりの状況になってきています。また、SNS上でも iPhone の利用を諦めるという人が42%に上るなどというあやしげなアンケートも中国国内で出回り始めています。

先週のブログでも書きましたが、中国で iPhone を買わないというのは、中国政府に不信感を持って貯蓄に走るということの影響が大きいのかもしれませんが、いずれにせよ今年の Apple のクリスマス商戦には頭の痛い話になりそうです。

なんだか、昔のアメリカでの日本車叩きを思い出させるような流れになってきています。ここまでスマホと Apple について考えてきましたが、スマホ機能がこれ以上の画期的な拡張が見込めないことや政治の駆け引きの道具になってしまい自由に販売できなくなる可能性があるという状況です。

そういったことを踏まえた上でバリュエーションを見てみると現在の Apple の PER は30倍、来期の予想 PER も28倍と依然として市場平均より高い水準です。アメリカのどこかのアナリストが目標株価を $120としていて「そんなアホな」と思いましたが、PER 20倍の水準ですから、ネガティブな材料を考えるとあながち大きく乖離しているとも思えなくなってしまいます。

今後の方針としてホルダーは徹底的にホールド継続で行くのか、一旦売却して様子を見るのか腹を括って考えるタイミングであるといえそうです。


最後までお読みいただきありがとうございました。

参考記事: