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Weekly Quest あとがき

今月はWeekly Questで米国株暴落の歴史を見てきました。その中で暴落共通要素というものが出てきましたが、その要素が今の市場に当てはまるのかどうか考えていきたいと思います。


過去の暴落で見られた前兆とも取れる共通要素は次のようなものでした。

①金利の引き上げ
投機を可能にする新技術
投機の拡大

①金利の引き上げ

12月のFOMCでFRBはテーパリングを加速化し2022年中に3回の利上げを行う予定だと発表しています。コロナが一旦落ち着きを見せたと思われましたが、その後の労働力不足による物価の急上昇に見舞われた結果の動きです。2020年3月から続いた低金利がいよいよ終焉を迎えようとしています。

・米22年に3回利上げへ FRB、緩和縮小終了の前倒し決定


投機を可能にする新技術

これは非常に興味深いです。コロナ禍で外出が禁止されたころから出現してきたのが「ロビンフット」と呼ばれる株式売買手数料無料アプリで1株からの売買が可能です。おりしもコロナ禍で米国では給付金が支給され外出もできない中、「少額でできるなら」ということで爆発的に拡大しています。いままで証券会社や投資銀行、ヘッジファンドの機関投資家が牛耳ってきた市場に対して個人投資家はささいな市場参加者でしたが、これがSNSと組み合わさることによって機関投資家をも脅かす存在にのしあがってきました。「ウォール街の連中め!我々が結託したらどうなるか目に物見せてやる!」と言った具合に大きな影響力を持つようになりました。

・ヘッジファンドに敵対し暴走する米個人投資家

実はこのロビンフッドによる売買は市場に直接流す注文ではなくHFTという高速売買業者(Weekly Quset 2021年12月6日号を参照)に注文が流れる仕組みです。通常の現物売買だけでなくオプション取引などのレバレッジをかけた取引も可能になっています。


投機の拡大

このロビンフッドも含めた現在の米国エクイティー市場に占める証拠金取引、レバレッジ取引の割合がかなり増加しています。この点については特に若い人たちのポジションが高いことも話題になってきています。

(Wolf Streetより引用)

・Stock Market Leverage Spikes, Margin Debt Up 42% YoY. Fed Warns about  High Leverage Ratio of “Younger Retail Investors”


現在の状況は過去の暴落時に見られた前兆とも取れる要素を全て満たしてしまったことになりますが皆さんはどのように判断されるでしょうか。また、過去の歴史を見ても「何があっても株価は上がる」という根拠のない思い込みや「いままで暴落しても必ず高値を更新してきたから次も大丈夫」、「暴落なんてするはずがない」「いつ暴落するんですか」などの「投機Euphoria」が蔓延した後暴落していますが最近日本でもそのような風潮がSNS上で見られるようになってきています。

そして急落のきっかけになりうる今後のイベントにも要注意です。FOMCや経済指標の確認は当然ですが、以下のようなイベントにも注意する必要があります。

・コロナ変異株のさらなる出現による景気悪化
・金利上昇に伴うレバレッジの巻き戻し
・米国、NATO諸国とロシア関係悪化(ウクライナ問題)
・米国と中国の関係悪化(台湾問題)


さて、今年も残りわずかになってきました。このくだらないブログを最後までお読みいただきまして本当にありがとうございました。いつまで続けられるかわかりませんが、違った観点から見た投資に関する記事を今後も書きたいと思っております。これで年内最後になりますが、来年も何卒よろしくお願いいたします。

関連バックナンバー
Weekly Quest 2021年12月6日号
Weekly Quest 2021年12月13日号
Weekly Quest 2021年12月20日号
Weekly Quest 2021年12月27日号