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犯人失格

『犯人失格』

私は彼らを見下ろしていた。彼らは私が仕掛けた罠にかかって、地下室に閉じ込められている。
彼らはまだ気がついていないようだ。
私は彼らにビデオメッセージを流す準備をしていた。ビデオメッセージには、私の顔は映っていない。声も変えてある。

「こんにちは。あなたたちは私によって選ばれた特別な人たちです。あなたたちはこの地下室から脱出するチャンスを与えられます。しかし、そのためにはあるゲームに参加しなければなりません。ゲームのルールは簡単です。あなたたちはこの地下室にある鍵を見つけ出し、扉を開ければ自由になれます。しかし、鍵は一つしかありません。つまり、あなたたちの中で一人だけが生きて脱出できるということです。さて、どうしますか?協力して鍵を探すのですか?それとも互いに裏切って自分だけを救うのですか?あなたたちの運命はあなたたち次第です。ゲームの時間は一時間です。一時間以内に脱出できなければ、この地下室は爆発します。では、ゲームを始めましょう」

私はビデオメッセージを巻き戻して、流す準備をした。

そのとき、彼らの一人が動き始めた。
「やっと起きたか」と思ったが、彼はただ身体をずらしただけで、また眠りに落ちてしまった。
私はイライラした。「早く起きろよ」と心の中で叫んだ。

…。

誰も起きない。

そして全員気持ちよさそうだ。
私はもう待ちきれなかった。
私はビデオメッセージを流すボタンを押した。
そして、ボリュームを最大にした。
地下室に大音量でビデオメッセージが流れ始めた。

「こんにちは。あなたたちは私によって選ばれた特別な人たちです...」

大音量のビデオメッセージの声に驚いて、彼らは次々と目を覚ました。
彼らは周りを見回し、自分たちが閉じ込められていることに気づいたようだった。
私は彼らの反応を楽しみに待った。

しかし、彼らは全然ビデオメッセージに興味を示さなかった。
彼らはパニックに陥って扉や窓を叩いてみたり、携帯電話で助けを呼んでみたり、大音量のビデオメッセージより騒いでいた。
私はさらにイライラした。
「聞けよ」と心の中で叫んだ。

そして、やっと彼らの一人がビデオメッセージに気づいて声を上げた。

「おい、何だこれは?」
全員がモニターの前に集まってきた。
ビデオメッセージが流れている。
「…つまり、あなたたちの中で一人だけが生きて脱出できるということです。さて、どうしますか?協力して鍵を探すのですか?それとも互いに裏切って…」

「鍵を探せということか」
「一人だけしか出れないって言ってるぞ」
「でも、鍵見つけて、扉開けて、みんな出ればいいんじゃないの?」
「確かにそうね。裏切る要素は別にないわね」
「じゃあ、みんなで探して、みんなで出ましょう」
「よし!」

「全然怖がんねーじゃねーか」犯人の思惑とは全然違った。

みんな冷静に鍵を探し出した。

こんなはずではなかった。
こいつらは悪いことをしてきた連中なのだ。
なぜこんな時だけ一致団結しやがって。

私は仕方なくマイクから声を出して、混乱させようと煽ることにした。

「やあ、みなさん。鍵は見つかりましたか?」

全員反応した。
「誰だ?」

「おや、あなたは自分の会社の金をちょっとずつバレないように横領している村上さんじゃないですか」と私は言った。

「な、なにを言っている?」村上は動揺した。

「あんたそんなことしてるの?」

「おや、村上さんに隠れて浮気しているミクさんじゃないですか」と私は言った。

「え?どういうことだ?」村上はミクに詰め寄った。
「でたらめよ、何信じてるの」とミクは返した。

「と、言ってますよ、近藤よしあきさん」

「ミク、どういうことだ?村上は会社の同僚じゃないのか?」と近藤よしあきは言った。

私はよしよし頷いた。
良い具合に荒れてきた。
もう一押しだ。
「そこで関係ない顔をしている横沢敏夫さん。あなたは…」

私は止まった。

ボイスチェンジャーをONになっていない!

たった今気付いた。
どうするか?ここからONにするか?いや、急に変えておかしくないか?
せっかくみんな混乱してきて計画通りに持っていけそうなのに、急に声変わったら、疑問に持たないか?だったらこのまま…でもさすがに地声はまずいだろ。

止まったのは犯人だけではなかった。
全員も止まっていた。

やばい。もう疑問持たれている。

私は思い切ってボイスチェンジャーをONにした。
バレないに懸けた。

「そこで関係ない顔をしている横沢敏夫さん」とボイスチェンジャーの声が流れた。

横沢が笑った。
「バレたーーーーーー!」私は心の中で叫んだ。

そして横沢は言った。
「ひょっとして、地声で喋ってるの途中で気付いて、今ボイスチェンジャーに変えた?」

「俺の心理もバレてるーーーーーー!恥ずかしいーーーーーーー!」

もう私は居ても立っても居られなかった。

ガチャンという音が鳴った。
そしてギ―という音とともに扉が開いたのだった。
 


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