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仮面を外した日。それは友達と心の交流物語

『仮面の向こうの君』

私は仮面をつけている。
仮面は私の顔とぴったり合っていて、どんな時も必ず合う表情の仮面を私は持っている。仮面は私の味方だ。仮面は私を守ってくれる。

私は仮面をつけている。
今日は友達の誕生日だ。笑顔の仮面をつけて、サプライズケーキを持って部屋に入る。電気を消して、ハッピーバースデーと歌う。友達は驚いて喜んでくれる。笑顔の仮面は私に明るさを与えてくれる。笑顔の仮面は私に人気を与えてくれる。笑顔の仮面は私に幸せを与えてくれる。

でも、本当は笑っていない。
本当は楽しくない。本当は幸せじゃない。笑顔の仮面は私に嘘をつかせる。笑顔の仮面は私に孤独を与える。笑顔の仮面は私に苦しみを与える。

私は仮面をつけている。
昨日は上司に呼び出された。仕事で大きなミスをしたからだ。怒りの仮面をつけて、ミスを認めまいとドアの前でノックした。怒りの仮面は私に力を与えてくれた。怒りの仮面は私に正義を与えてくれた。怒りの仮面は私に復讐を与えてくれた。

でも、本当は怒っていない。
本当は強くない。本当は正しくない。怒りの仮面は私に逃げさせる。怒りの仮面は私に罪悪感を与える。怒りの仮面は私に後悔を与える。

私は仮面をつけている。
明日は悲しみの仮面をつけるつもりだった。友達がガンで入院したと聞いたからだ。悲しみの仮面は私に涙を与えてくれるだろう。悲しみの仮面は私に同情を与えてくれるだろう。悲しみの仮面は私に慰めを与えてくれるだろう。

でも、本当は悲しんでいない。
本当は心配していない。本当は気にしていない。悲しみの仮面は私に無関心させる。悲しみの仮面は私に冷たさを与える。悲しみの仮面は私に罰を与える。

しかし、今日、悲しみの仮面をつけて病室に入ろうとした時だった。あれ?…悲しみの仮面がない。

家を出る前に忘れたか落としたか、どこにも見つからない。
どうしよう?
どんな顔して病室に入ればいいんだろう?
ダメだ。わからない。
一旦帰ろうと思った。

しかし、友達のお母さんと会ってしまった。
「あら、君も娘のお見舞いに来たの?ありがとうね。申し訳ないけど、励ましてやってね」と言われた。

どんな顔をして会えばいいんだろう?
無表情でいようかと思ったが、それでは失礼だろう。
笑顔でいようかと思ったが、それでは不謹慎だろう。
怒りでいようかと思ったが、それではおかしいだろう。

そこで、私は別の仮面をつけることにした。
心配そうな仮面だ。
心配そうな仮面は私に同情心を与えてくれるだろう。
心配そうな仮面は私に優しさを与えてくれるだろう。
心配そうな仮面は私に友情を与えてくれるだろう。

友達の部屋に入ったら、友達がベッドで眠っていた。
顔色が悪くてやせ細っていた。

友達が目を開けた。
「あ、来てくれたんだ」と微笑んだ。
「ありがとう」

どんな顔をして返せばいいんだろう?私は自分自身を知らない。

「ごめんね、こんな姿見せちゃって」と友達が言った。「でも、大丈夫だよ。治るって医者が言ってたから」

どんな言葉をかければいいんだろう?私は自分自身を知らない。

そして友達は聞いた。

「ねえ、君はどうしていつも仮面をつけてるの?」私は驚いた。
「本当の君はどんな人なの?」

私は答えられなかった。

「いいよ、仮面を外しても」と友達が言った。

「私は君のことが好きだから」

私は仮面を外した。

仮面を外した瞬間、私は泣き出した。
仮面を外した瞬間、私は笑った。
仮面を外した瞬間、私は怒った。

仮面を外した瞬間、私は自分自身になった。

「あなたも仮面を外して」と私は友達に言った。
「私もあなたのことが好きだから」

友達も仮面を外した。

仮面を外した瞬間、友達も泣き出した。
仮面を外した瞬間、友達も笑った。
仮面を外した瞬間、友達も怒った。

仮面を外した瞬間、友達も自分自身になった。

私たちは抱き合って泣いて笑って怒って話した。
私たちは仮面なしで心を開いて見せ合った。
私たちは仮面なしで本当の自分になった。

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