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チョコレートを盗む男とレジの女の子の甘くて苦い恋物語

「あの人、カッコイイわ」
私はレジの横にあるモニターを見て、つぶやいた。
モニターには、スーパーの入り口に入ってきた男の姿が映っていた。彼は白いシャツと黒いパンツを着ていた。私は彼を見て、惹かれた。

彼はとても美しかった。目は青くて鋭く、鼻筋は高くて整っていた。唇は厚くて赤く、笑っているように見えた。髪は金色で長く、肩にかかっていた。体つきはがっしりとしていて、歩き方は堂々としていた。

私は彼を見て、ドキッとした。こんな人がこのスーパーに来るなんて珍しい。彼は何を買うのだろうか。彼はどんな人なのだろうか。

私は彼に興味を持った。でも、それ以上何もできなかった。

私は彼を追うことも話しかけることもできなかった。ただ見送るだけだった。

翌日、私はレジに立っていると、また彼が入ってきた。

「あれ……」
私は息を呑んだ。

彼は昨日と同じように白いシャツと黒いパンツを着ていた。
私は彼を見て、また惹かれた。

そして彼と目が合ったような気がした。
私は動揺した。
手が震えて、何度も同じ商品をバーコードに当ててしまっている。
同じ商品から何度もピッピッピッピッと音がしている。
私は我に返りお客さんに謝った。

その日の夕方、仕事が終わって帰ろうとしたときだった。

「ちょっと待って」
店長が私を呼び止めた。

「どうしました?」
私は店長に尋ねた。店長は中年の男性で、厳しい顔つきをしていた。

「今日も万引きがあったんだよ」
店長はそう言って、不機嫌そうにした。

「え? 本当ですか?」
私は驚いて聞き返した。

「本当だよ。防犯カメラで確認したんだけどね」
店長はそう言って、モニターを見せた。

「あれ……」
私は息を呑んだ。モニターに映っている男は、あの彼だった。

「この男がやったんだよ。チョコレートを盗んで行きやがった」
店長はそう言って、怒鳴った。

あの彼が万引き?
あんなにカッコイイのに万引き?
あんなに鼻筋が高いのに万引き?
私は困惑した。

翌日、私はレジに立っていると、また彼が入ってきた。

私は息を呑んだ。彼がまた来たということは……?

今日も白いシャツと黒いパンツを着ている。
美しくカッコイイ。
でも万引きする人。
どんな理由があるんだろう?
知り合えば分かる?
でもそれじゃダメ。
万引きする人。
危険。
でも近づきたくなる人。
どうしよ。

そんな時だった。
彼は万引きをした。
またチョコレートを盗んだ。

追わなければ。
止めなければ。
好き。
でも止められない。
引き留められない。
好き。
引き留められる?
引き留めよ。
好き。
引き留めよ。
引き留めよ!

「ちょっと待って!」
私は思わず叫んでしまった。
そして走り出した。
レジから離れて商品の補充をしている同僚やお客さん達から驚かれつつも、気にせず走り出した。
そして彼の前に立ちふさがった。

「あなただ!」
私は息切れしながら言った。
彼も驚いて立ち止まった。
彼の青い目が見える。
鋭く美しい目。
その目が私を見つめる。
ドキッとする。
でも気付く。
ポケットからチョコレートが出てる。
確かに盗んでる。
許せない。
彼は万引きをしている。
私は彼を止めなければならない。
私は彼に怒りを感じた。
でも、それ以上に恋心を感じた。
私は彼に惹かれている。
私は彼に近づきたい。
私は彼に話しかけたい。
私は彼に触れたい。
私は彼にキスしたい。

「好きです!」
私は勢いで叫んでしまった。
そして彼に飛びついた。
「何を言っちゃったのか……」私は気がついて慌てた。
困惑する二人。周りの人々も困惑する。

「ごめんなさい!」私はそう言って、彼から離れた。
赤くなった顔を隠した。

「僕も好き!」

「え?」
私は驚いた。

彼は店の入り口で続けた。
「あなたのことが気になって仕方がなかったんです」

「どういうこと?」
私は不思議に思って聞いた。

「あなたが好きだからです」
彼はそう言って、笑った。

「好き……?」
私は信じられないように言った。

「そうです。チョコレートよりもあなたが好きです。実は僕は、チョコレートが嫌いなんです」

「嫌い……?」

「そうです。嫌いです。でも、盗んでいるんです」
彼はそう言って、説明した。

「どうして……?」
私は興味深く聞いた。

「どうしてって……あなたに会うためです」
彼はそう言って、笑った。

「あなたに会うため……?」
私は驚いて聞き返した。

「そうです。あなたに会うためです。初めてあなたを見たときから、あなたに惹かれました。でも、あなたはレジの女の子で、僕はただのお客さんでした。話しかける機会もなかったし、話しかける勇気もありませんでした。だから、何か目立つことをしなければと思いました。それで、チョコレートを盗むことにしました」
彼はそう言って、続けた。

「チョコレートは目立つし、甘いし、女の子が好きなものだと思いました。だから、あなたが気づいてくれると期待しました。でも、あなたは気づいてくれませんでした。だから、何度も来店しました。何度もチョコレートを盗みました」

そう、彼は何度も盗んでいたのだ。

「そして今日。ようやくあなたは僕に気付いてくれました。そして僕を好きと言ってくれました。なんという運命」

私は彼は狂っていると思いました。
でも好き。

私たちは抱き合いました。
そしてキスをしました。
店の入り口で。

それはチョコレートの甘い味がした。

彼は警察に取り押さえられた。
私はスーパーをクビになった。




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