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THE 戦闘員 第2話

商店街を抜け、細い路地に入り、くねくねと進んでいくと、アパートがある。その外観はエグイ。壁一面にわざと生やしてない草が生えていて、階段は元は何色なのかわからない錆びきった茶色をしている。その階段にもわざと生やしてない草が絡みついている。その茶色にその緑、なんとも言えない不協和色なのである。

そして、鍵なんて必要ないくらいの、強引に押したら開きそうなドアの前に小野剛は立ち止った。

ここが彼の家なのだ。築40年、間取り7畳、風呂無し、トイレ共同、家賃3万5千円。

今の秘密結社サタンからの給料じゃこれが限界なのである。しかも毎月、決まった額をもらえるというわけではない。何を隠そう、秘密結社サタンは…

歩合制なのである。

説明しよう。秘密結社サタンの給料の仕組み。一回戦闘に出れば1万円。仮面バスターにダメージを与えると5千円。さらにダメージを与え、人間の姿に戻せば5万円。そして仮面バスターを倒すと1千万円なのである。他にもいろいろあるが、大まかに言うとこういうシステムだ。

従って今日はというと、戦闘に出ただけだから1万円だ。一日1万だったら意外といいじゃないかと思うだろう?しかし今日戦った場所は、えらい山奥の方なのだ。

ルートを説明しよう。電車に乗る。バスに乗る。ロープウェイに乗る。往復6千800円。1万-6千800円=3千200円。手取り3千200円。そう、秘密結社サタンは交通費が出ないである。しかも、これで仮面バスターにボコボコにやられ、入院なんていったら、赤字になる可能性もある。そう、秘密結社サタンは労災もおりないのである。

そう考えるとこの不協和色のアパートにも納得がいくだろう。

小野剛は玄関を開けた。

「パパお帰りなさい~」

小野剛には息子もいるのである。


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