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読者からワードをもらって作った物語
先日、企画で皆さんに何でもいいからワードを募集しました。
そのワードを使って物語を作ろうという企画です。
6つもらいました。
「猫」「芸人」「ラジオ」「ツインレイ」「アイス」「号泣」
せっかくなので、6つ全部使って作りましょう。
『ラジオと猫』
美容師の彼はこじんまりとした自分の店を持っている。
お客さんは来たり来なかったり。
でも一人なので何とかやってはいける。
そんな彼はいつもラジオをかけて仕事をしている。
そしてお気に入りはある芸人のラジオだ。毎週欠かさず聞いている。
なぜ彼はこの芸人のラジオが好きかと言うと、まあ単純に面白いというのもあるのだが、もうひとつ理由がある。
それはこのラジオをやる時間にいつも猫が店の前にやってくるのだ。
そしてずっとにゃーにゃー鳴いている。
最初は何で鳴いているのかわからなかった。ラジオが終わるまでずっと鳴いているのだ。
白と黒の斑点模様の猫だった。
白い部分も真っ白というわけではない。少し汚れている。なのでどこかの家猫ということはないだろう。
そんな野良猫が芸人のラジオが始まると、店の前に来てにゃーにゃー鳴く。
そしてラジオが終わるといつの間にかいなくなっていた。
彼は号泣猫と名付けた。
そんなある日今週も芸人のラジオが店に流れた。
そしたらまたどこからともなく猫がやってきた。そして店の前で鳴いている。今、お客さんは誰もいない。
彼はドアを開けてみた。
すると、鳴きやみ、とことこと店に入ってきて、お客さんの座るイスへちょこんと乗って、丸まって寝だした。
まるで芸人のラジオを子守歌代わりのように。
そしてラジオが終わると店を出ていくのだ。
何だこの猫は?
そしてその号泣猫は毎週ラジオの時間にやってくるのだ。
芸人のラジオが始まると店の前にやってきてにゃーにゃー鳴く。美容師の彼がドアを開けるまで鳴く。そして開けると鳴きやんで、席に座ってラジオを聞きながら寝る。終わったら変える。これぞルーティンだった。
彼はこの事をお客さんに話した。
お客さんも面白がった。
「その猫はその芸人が好きなんじゃないか?もしかしたらツインレイじゃないか」とお客さんは言う。
「ツインレイ?」
お客さんは説明し出した。
「ツインレイとは、「魂の片割れ」や「魂の伴侶」とも呼ばれて、この世にたった一人だけの運命のパートナーのことです。前世で同じ魂だった二人は、現世では別々の人生を歩みますが、いつかは必ず出会い、さまざまな試練や喜びを経て、お互いの魂が成長すると言われています。ツインレイは、双子の「ツイン」と光の「レイ」を掛け合わせた言葉で、「双子の光」と言う意味です¹。魂レベルで深いつながりを持つ相手のことを「ソウルメイト」と言いますが、そのソウルメイトの中でも特に結びつきが強く…」
と言いながらお客さんはタロットカードを出そうとしたので、「もうわかりました」と言った。
要するに猫と芸人は魂が同じモノではないかというだ。
そう話しているうちにその時間がやってきた。
芸人のラジオが始まるとにゃーにゃーと聞こえてきた。
お客さんは驚いた。本当に来た。
美容師の彼は迷った。
今お客さんがいて、まだパーマの途中だ。
しかし、お客さんの方から猫に席を譲った。
なんという光景だ。
シルバーシートのようにカールを4,5個巻いたおじさんが猫に席を譲っている。それを当たり前かのように席に座ってゴロゴロ言いながらラジオを聞いている。
毎週そんなことが続いた。
しかし、それは突然やってきた。
いつもやる芸人のラジオがやらなかった。
女の人の声が流れていた。急遽打ち切りになってしまったのだろうか?
それと同時に猫も姿を見せなかった。
次の日も、また次の日も、あの号泣猫は現れなかった。
彼は寂しかった。
ひょっとしたら芸人のラジオより号泣猫を楽しみにしていたのかもしれない。
数日の彼は抜け殻だった。
ツーブロックにするお客さんを坊主にしてしまったり、ハサミで髪じゃなく服を切ってしまったり。
彼はもう美容師をやめようと思った。
それくらいあの号泣猫は彼にとって、かけがえのないものになっていた。
もしかしたら芸人より彼の方がツインレイだったかもしれない。
しかしもう猫はいない。
彼は号泣猫がいつも座っていたイスに座って泣いた。
もう会えないくらいなら、こんなイス…。彼はそのイスを壊した。
美容室のイスは特殊だ。しかし、そんなことはお構いなしに思いっきり叩き割った。
彼は疲れて倒れた。
そしてまた泣いた。
そのまま寝てしまった。
そして号泣猫の夢を見た。
彼は毛を切ってあげて、猫はゴロゴロと喉を鳴らしていた。
幸せな時間だった。
しかし、何か現実がうるさい。
彼は目を覚ました。
するとにゃーにゃーと聞こえた。
彼は驚いた。現実か?これは?号泣猫が鳴いている。
開けろと鳴いている。
彼はドアを開けた。
そしてラジオを付けろと鳴いている。
彼はラジオを付けた。
するとあの芸人の声だ。
なんと時間が繰り上がり30分番組から2時間番組に昇格していた。
やはりこの号泣猫とこの芸人はツインレイだと彼は思った。
それと同時に大事な事を彼は思い出した。
あイス!
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