そして誰もいなくなった。

 悲鳴が館内に響き渡る。
 すぐさま部屋に飛び入ったのは、メイドの一人。
 倒れていたのは、死体となった館の主人の姿だった。
「ご主人様⁉︎ 主人様が! ……おや?」
 倒れた主人の前には、謎の白い粉が床にこぼれていた。
 気になったメイドは、指の腹で粉を取って舐める。
「ペロッ、こ、これは青酸カリ⁉︎ ……げふぅーっ‼︎」
 メイドは主人と重なるように倒れて死んだ。
「な、なんだ⁉︎」
 メイドの死んだ直後、執事が入ってくる。
「メイドと主人様が……ん? なんだこの粉は……ペロッ、こ、これは青酸カリ⁉︎ げふぅーっ‼︎」
 メイドに続き、執事も重なるように倒れて生き絶える。
「……フフフ、ようやくこの男を仕留められた」
 その後、ゆっくりと落ち着いた様子で、不敵な笑みを浮かべながら入室してくる従者。
「まさかコーヒーに青酸カリを混ぜたとは思うまい……ところで、この床の粉はなんだ? ペロッ、こ、これは使わずに置いておいた残りの青酸カリ⁉︎ げふぅーっ‼︎」
 従者もそのまま事切れてしまう。
「きゃぁああっ! し、死体が四人も!」
「どうしてこんなことが……」
「ねぇ! あの粉は何⁉︎」
 その後、ぞろぞろとやってきた使用人たちは、こぼれた白い粉を舐めていく。

「「「こ、これは青酸カリ……げふぅーーーっ‼︎」」」


 そして誰もいなくなった。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?