12歳のラック
ある獣医さんが次のように述べています。
犬の愛情表現は分かりやすいと思います。例えば見つめて首をかしげたり、眉をぴくぴくさせる。外出の時にお見送り、そして出迎えをしてくれる。飼主さんに寄り添ったり、ベッドに寝たり、寄りかかったりといった行動をとる。こういった行動が出たら犬から愛情をもらっていると理解してください。
犬を飼っている方には、それがどういう仕草か手にとるように分かることでしょう。
さて、わが家の愛犬ラックはもう12歳になりました。人間の年齢ですと62歳くらいです。犬種にもよりますが概ね犬は1年で18歳になりあとは1年に4歳ずつ歳をとると言われています。人の四倍速で生きて行きますので、あっという間に老年期に入ってしまいました。
関節痛、首のヘルニアに加えて内臓の機能も少しずつ衰えて、禁止事項が増えています。若い頃、大好きだったボール遊びは膝腰に負担がかかるので禁止されました。
でも、体調の良いときは、ボール遊びの楽しさを思い出すようで、オモチャがしまってある場所へと上手に手?を使い誘導し、ボールを投げてほしいとアピールします。
そんな時は、ほんの少しだけボールを転がしてあげるのですが、不満そうな顔をして
「ちがうよ、もっと遠くに投げて!」
と言いたげに姿勢を低く構えて待っていますので、こちらも切なくなります。
また、大好きなジャーキーもタンパク質と塩分を規制されているので禁止になり、おやつは野菜ボーロかサツマイモになりました。
それでも、その時その時の楽しみを見つけ過ごしています。毎日の散歩では、いろいろなものに興味が向くようで距離は短くなりましたが時間は長くなりました。
毎回同じドライフードでも、まるで初めて食べるご馳走の様に喜んで食べるのです。
こんな姿を間近で見ていると、子犬のころの無条件の愛らしさや青年期の絹糸の様に輝く被毛に覆われた姿にも増して、
12歳のラックは命の美しさが際立って、さらに、いとおしく感じます。
生きるものは、例外なく「生、病、老、死」という道をたどります。この苦しみからは逃れようがありません。人も犬も同じです。
ラックの老いゆく姿は、飼い主に、行く道を見せてくれているようです。
さて、話は始めに戻りますが、振り返ってみると、こちらが愛情を注いでいると思っていても、実は四六時中愛情をもらっていたんだと気付かされました。
夏休み中、ラックもお稽古におじゃまさせて頂くことがあると思います。どうぞよろしくお願い致します。
※2019年7月第51号掲載。この度、再校正しました。ラックは教室の看板犬として生徒さんたちに愛されましたが、2021年12月14歳10ヶ月で虹の橋を渡りました。
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