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よく聞かれる文様の意味



文様の意味

 ここ数年、アイヌ文様を利用し商品開発をしたい、文様はどう使ったら良いのか?という問い合わせが多くなってきました。

 あるクライアントさんは、長寿の意味をもつ文様を描いて欲しいとおっしゃいました。また、ある方はこの文様の意味を教えて欲しいとおっしゃいました。

私たちは、認証事業を通じ、このようなパンフレットを用意してお話をさせていただきます。

 基本的な文様の「形」を意味する「名前」のようなものがあり、例えば、渦巻き文様=モレウや、植物の蔓を形取った文様=プンカㇻなど...そのいくつかの基本的な文様を組み合わせる事で複雑なひとつの文様が出来上がるのですが、文様ひとつひとつに「意味」があるわけではなくアイヌ文様自体に「悪いものが入らないように」という願いの他に、使う人への様々な気持ちを込めて、ひと針ひと針着物の袖口や襟元、裾などに魔除けの意味を持たせた刺繍をあしらったり、木製の日用品などに文様を彫ったりしました。

 地方によってはその使われ方や解釈の違い、名称そのものの違いなども異なる場合もあったり、もう少し複雑な文様の違いなどもありますが、当法人では知的財産として認証するためのひとつのルールとして、上記のようなパンフレットを使ってお伝えしています。

 そのほか、伝承されてきた地域によってもよく使われる文様があったりします。
 アイヌの方が見ると、「それは〇〇地方に多い文様だね。〇〇さんの系統かい?」など、少々大げさな表現をすると文様だけで作者の出身地が判るということも少なくないという話も聞きます。


着物に見るアイヌ文様刺繍

カパラミㇷ゚
カパラミプは大幅の白布に切り抜きの模様を作り、木綿の生地に張りつけた衣服です。北海道大平洋岸の日高東部に多く見ることのできる木綿衣です。浦河の近く、静内あたりが発祥と言われ、時代も比較的新しく明治の中頃にはすでにつくられていました。カパラミプは現存するアイヌの衣服の中では最も多く残されています。
チカㇻカㇻペ(※釧路地方の表記)
チカルカルペは直線裁ちの布でつくる切伏模様の上に刺繍を施した木綿衣です。北海道のほぼ全域に見られますが特に日高西部と東部、北海道西海岸に多く残っており、地域によって下地の布や切伏模様、刺繍の模様や手法が違っています。昔のチカルカルペには樹皮を使って衣服に仕立てたもの、浴衣地などの柔らかい生地を使ったもの、男物の和服そのままに模様を施したものなどがあります。
ルウンペ
ルウンペは木綿、絹、メリンスや晒などの布を使った切伏や刺繍がふんだんに用いられた、華やかで手 の込んだ木綿衣です。北海道南西部の八雲、有珠、虻田などの噴火湾沿い、そして大平洋岸の室蘭、 白老で着ていたものです。文様のつけ方などで地域性がわかります。
チンヂリ
チヂリ(又はチンヂリ)は切伏を置かずに刺繍だけで模様をつくる唯一の木綿衣です。木綿地の衣服の中には和服の古着もあり、それに刺繍を施したものもあります。切伏は下地の補強にもなっていましたから、チヂリは大きな布や和服が手に入りやすい時代につくられたと考えられています。北海道の全域に残るチヂリは、刺繍模様のつけ方で、十勝、静内、上川など、いくつかの地方に分類できます。

※説明文は財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構 アイヌ生活文化再現マニュアル 「縫うー木綿衣ー」より引用しています。
※当法人では、アイヌ模様とはせず「もんよう」を表記する際は「文様」に統一しています。


アイヌ文様を蓄積・管理する

 私たちは、阿寒湖在住のクリエイターの他に、アイヌコタンで長く創作活動をされている方を対象に、オリジナルのアイヌ文様を募集し、広く多くの方に使用していただけるよう、蓄積・管理しています。

募集の際は、
①基本文様がベースのシンプルな文様
②基本文様を展開させた文様
③基本文様を高度に、かつ複雑に展開させた文様
使用用途を明確に出来るよう3つに分けています。

①ですと、ワンポイントのシンプルな使い方が良いでしょう。
小さなパーツで作成するものやロゴ、いくつか並べて仕切り線(ライン)に使用するなど。
②になりますと、何かにプリントしたり出来る象徴的なアイヌ文様デザインとして使用できるかと思います。
③は、より工芸に近いデザインとして使用されることが多いと思います。

 クライアント様から相談を受けた際、文様の希望イメージ、使用の希望イメージなどをお聞きし、いくつかの文様を選出して決定しています。
 この他、管理している文様以外に、新しく作る文様を希望される方も少なくありません。


わたしが思うこと

インターネットに溢れるアイヌ文様のデザイン。
問題になっているとかいないとか聞いた事がありますが、アイヌ文様(とされるもの)をダウンロード出来るフリーサイトもありますよね。

アイヌ文様に意味があるとするならば、
アイヌの歴史と伝統とアイヌの人々の思いが込められた印(しるし)なのではないかと感じます。
アイヌ文様は単なる創作デザインとは違うと感じます。

アイヌ文化の伝承をされた事のない、いわゆる和人のデザイナーさんとか、アイヌ文化に関心があって真似してやってみる方とかが、なんとなくそれっぽいカンジという概念で作られたものを、アイヌの人々はアイヌ文様だと言わないと思います。
とはいえ、個人の趣味にて創作文様を用いた刺繍の巾着を作ったり、フリーサイトから拝借した文様デザインを使用したりすること自体を咎めるつもりはありません。アイヌ文様について明確な定義は、明確にはありませんし、今日アイヌの知的財産を守る法律はまだありませんので。

アイヌの人々が思いを込めた文様を大切に、かつ自信を持って使っていただきたいと思うのです。
だからこそ正しく作られたアイヌ文様を使用できる「認証制度」をお勧めしたいのです。


認証制度についてより深いお話。


それはまた別の機会に。