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地名は囁く

#推し短歌
意味取り違えシリーズ

今回は「めっちゃ好きな歌人」の「めっちゃ好きな短歌」について


先日大神神社に向かっていた折に見かけた、行き先を示す看板に書かれていた文字

阿騎野GC

ゴルフには興味がない
しかし阿騎野
あの阿(安)騎野だ
あのひとがあの歌を詠んだ地

東の  野に炎の  立つ見えて
かへり見すれば  月傾きぬ

柿本人麻呂

初見のひとでも、現代語訳は必要ないだろう
(強いて言うなら、炎の読みは「かぎろひ」)

昇る太陽を見て、反対側を見れば月が傾いていた
というそれだけと言えばそれだけ、

けれどその様を「炎」と表現したことで、その時の太陽の姿を1000年以上経った今でも、ありありと思い浮かべることができる

太陽と月のあいだには「私」しかいないような、この光景を

そしてこの安(阿)騎の野のでは、

日並  皇子の尊の  馬並めて
御猟立たしし  時は来向かふ

柿本人麻呂

という歌も詠まれている


だから「阿騎野」という文字を見た時、
真っ先に並ぶ馬が見えた

たった3文字が引き出す、2つの景色
地名に潜む魔法

その気になればわたしたちは
この扉を開ける鍵をいくつでも入手できる

いつからでも

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