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アカマルに出会った日

 まだ寒さが残る2020年2月9日、私たちはこれから先の生活を共にすることになるアカマルに出会った。

 「みんなのブリーダー」のサイトで見つけた紹介文では、3人きょうだいの1人だったアカマル。この日も3人きょうだいで仲良く出迎えてくれた。他のきょうだいは、ケージから飛び出さんばかりに私たちにありったけの愛嬌をふりまいてくる男の子。そして、元気さと優しさのバランスが完璧な女の子。ちなみにこの2匹は既に引取先が決まっているとのことで、アカマルのみがフリー。当のアカマルと言えば、この2匹の背後から時々様子を伺う感じ。顔は同じくらいキュートなのになんとMOTTAINAI!!。「積極性」とは、かくも残酷なものなのか。

 正直に言おう。私たちの第一印象ではこの売約済の2匹の方がアカマルよりも断然輝いて見えた。しかし、既にキッラキラの2匹は売約済み。そう聞くとなおさら輝いて見える不思議さよ。「欲望とは他者の欲望である」(ラカン)の言葉をかみしめる。

 その一方で、長らく「積極性」の呪縛に悩まされてきた日本人代表としては、「今こそ控えめさの美徳の復権を!!」と声高に叫びたい気持ちがふつふつと湧いてくる。恥ずかしがりやさん最高!アピール上手よりも品がある。この仔の魅力は奥ゆかし過ぎて他の人にはなかなか気づかれにくいかもしれないけれど、シャイな私たち家族だからこそ、気づくことができたものなのだ、と。

 しばらくは家族4人じっと3匹を観察する。無言だ。頭の中を去来していることはだいだい同じことだったに違いない。敢えて言葉にしないだけで。

 つまるところ、選択肢は1つ。アカマルに決めるか、決めないか、だ。優しそうなブリーダーの方からアカマルを抱っこさせていただく。写真参照。軽くて温かい。そしてとてもおとなしい。家族で代わる代わる抱っこさせてもらいながら、もはやこの仔を我が家に迎えないという選択肢はなかった。

 それでも、もうちょっとだけ背中を押してほしくて、「この仔は本当におとなしいですね。大人になってもおとなしいままでしょうか」とブリーダーさんに聞くと、「いや、わかんないです。どこかでスイッチが入ってやんちゃになるかもしれませんし」。正直過ぎる返事だ。うう。し、し、信頼できるブリーダーさんだから、き、き、きっと安心だ。

 最後に背中押されなくとも、私たちはアカマルを迎えることを決めることにしたのだった。


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