手巻きタバコと読書

喫茶店でバナナタルトとストレートティーを注文し、本を読んでいたら一人の男の子と相席になった。髪が長くて眼鏡をかけていて、古着がよく似合う。本当に古着かはわからないけど。彼は鞄から分厚い本を取り出してテーブルに置き、ブレンドコーヒーを注文した。店員は迷わずに灰皿を持ってきた。常連客なのだろうか。 
他の女性客にも声をかけられていた。近くの大学生か。この喫茶店に来る客は近所に大学があるから、そこの学生が多い。私は着慣れないスーツが鬱陶しくて、その黒い生地に灰を落としながらタバコを吸った。
横目で男の子がゴソゴソと何かを取り出しているのを見た。手巻きタバコだ。初めて見た。慣れた手つきで紙を巻いて、舌で舐めて閉じて、それを咥えて火をつけた。ライターのカチッと鳴る音がなんだか心地よく耳に残った。煙がわたしの方へと漂ってくる。タバコの匂いは正直好きでもないのだが、悪い心地はしなかった。

文学少年のような風貌の彼が、本を読んでいる姿はなんだか好きだ。私も本を読みながら、読んでいる本は違っていても、見えているものが違っていても、少し同じ世界にいるような気がして、微かに微笑んだ。

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