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48日目:財産の評価

48日目は、財産の評価について学んでいきます。

1.財産の評価

  • 宅地の評価:自用地としての評価額に一定の倍率をかける倍率方式や、市街地にある宅地の評価方法として用いられる路線価方式があります。また、貸宅地や貸家建付地などの場合は、借地権割合や借家権割合、賃貸割合などを考慮して評価します。

  • 株式の評価:上場株式の場合は、課税時期の終値や終値平均のうち最も低い額で評価します。非上場株式の場合は、類似業種比準方式や純資産価額方式などで評価します。

  • ゴルフ会員権の評価:通常の取引価格に70%をかけた額で評価します。

  • 生命保険契約に関する権利の評価:原則として、解約返戻金額相当で評価します。

  • 定期預金の評価:預金残高に既経過利息から源泉徴収税額を引いた額を加えた額で評価します。

2.宅地の評価

1️⃣宅地の評価単位

宅地の評価単位とは、相続税や贈与税の計算において、宅地の価額を評価する際に用いる単位のことです。宅地の評価単位は、一筆の土地ではなく、利用の単位となっている1画地の宅地とされています。利用の単位とは、他から制約を受けることなくその土地を自由に使用収益及び処分できる単位です。

宅地の評価単位を決めるときには、以下の3つの観点から考えます。

  • 地目:原則として、地目ごとに評価単位を分けます。地目とは、宅地、田、畑などの土地の種類のことです。ただし、一体利用されている場合や市街化区域等で一体評価した方が合理的な場合は、地目が異なっても一体評価することができます。

  • 権利:土地の上に他者の権利がある場合には、権利ごとに評価単位を分けます。権利とは、借地権、借家権、使用貸借権などのことです。土地の上に他者の権利がない場合には、権利の観点からは評価単位を分ける必要はありません。

  • 取得:遺産分割等による取得によっても評価単位が異なります。一体として評価すべきと判定された土地でも、それを別々の相続人が取得した場合には、その取得した者ごとに評価単位を分けます。ただし、不合理分割に該当する場合は除きます。

2️⃣宅地の評価方法

宅地の評価方法について詳しく書いてほしいということですね。この内容は、相続税や贈与税の計算に必要な知識です。宅地の評価方法は、その土地が路線価が定められている地域にあるかどうかで異なります。路線価が定められている地域では、路線価方式を用いて評価します。路線価が定められていない地域では、倍率方式を用いて評価します。それぞれの評価方法について説明します。

1.路線価方式
路線価方式とは、路線価という道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額を基にして、宅地の価額を評価する方法です。路線価は、国税庁が毎年公表している「路線価図」1で確認することができます。路線価方式で宅地の価額を計算するには、以下の手順に従います。

例えば、路線価が20万円、各種補正率が1.0、土地面積が300㎡の宅地の価額は、20万円×1.0×300㎡で6,000万円となります。

2.倍率方式
倍率方式とは、固定資産税評価額という市町村が定める土地の価額に一定の倍率をかけて、宅地の価額を評価する方法です。固定資産税評価額は、毎年4~5月に送られてくる固定資産税の課税明細書で確認することができます。倍率は、国税庁が定めたもので、評価倍率表3で確認することができます。倍率方式で宅地の価額を計算するには、以下の手順に従います。

  • まず、宅地の所在地に対応する固定資産税評価額を見つけます。固定資産税評価額は、土地の地目や地区によって異なります。固定資産税評価額は、1平方メートル当たりの価額ではなく、1筆当たりの価額として表示されています。

  • 次に、宅地の所在地に対応する倍率を見つけます。倍率は、土地の地目や地区によって異なります。倍率は、1.0~2.0の範囲で設定されています。

  • 最後に、固定資産税評価額に倍率をかけて、宅地の価額を求めます。

例えば、固定資産税評価額が5,000万円、倍率が1.1、土地面積が300㎡の宅地の価額は、5,000万円×1.1で5,500万円となります。

3️⃣宅地の評価

宅地の評価は、その土地の利用形態や上に存する権利によって異なります。自用地、借地権、貸宅地、貸家建付地のそれぞれの評価方法について説明します。

1.自用地の評価(路線価方式を前提)
自用地とは、自分で利用している自己所有の土地のことです。自用地の評価は、その土地が路線価が定められている地域にあるかどうかで異なります。路線価が定められている地域では、路線価方式を用いて評価します。路線価方式とは、路線価という道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額を基にして、宅地の価額を評価する方法です。路線価方式で自用地の価額を計算するには、以下の手順に従います。

例えば、路線価が20万円、各種補正率が1.0、土地面積が300㎡の自用地の価額は、20万円×1.0×300㎡で6,000万円となります。

2.借地権の評価
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいいます。借地権は、土地の上に他者の権利がある場合に評価単位を分ける要因となります。借地権の評価は、借地権の種類や残存期間によって異なります。代表的な借地権の評価方法は以下の通りです。

例えば、自用地としての価額が6,000万円、借地権割合が30%、通常の権利金割合が10%、実際の地代が0円、相当の地代が1,800万円、通常の地代が600万円の借地権の価額は、(1,800万円-600万円)×(1-0.03)^20で約1,000万円となります。

3.貸宅地の評価
貸宅地とは、借地権など宅地の上に存する権利の目的となっている宅地のことです。貸宅地の評価は、自用地の評価額から借地権の評価額を控除した金額により評価します。借地権の評価額は、自用地の評価額に借地権割合をかけた金額により求めます。借地権割合とは、借地権の価額が自用地の評価額に占める割合のことで、国税庁が定めた評価倍率表1で確認することができます。

例えば、自用地の評価額が6,000万円、借地権割合が30%、土地面積が300㎡の貸宅地の評価額は、次のように計算できます。

  • 借地権の評価額 = 6,000万円×0.3 = 1,800万円

  • 貸宅地の評価額 = 6,000万円-1,800万円 = 4,200万円

4.貸家建付地の評価
貸家建付地とは、貸家の敷地として使用されている宅地のことです。貸家建付地の評価は、自用地の評価額から、借地権や借家権などの他者の権利による減額を行った金額により評価します。借地権や借家権などの他者の権利による減額は、自用地の評価額に借地権割合と借家権割合と賃貸割合の相乗積をかけた金額により求めます。借地権割合と借家権割合は、貸宅地の評価と同様に評価倍率表1で確認することができます。賃貸割合とは、貸家の各独立部分がある場合に、その各独立部分の賃貸状況に基づいて計算した割合のことです。

例えば、自用地の評価額が6,000万円、借地権割合が30%、借家権割合が50%、賃貸割合が80%、土地面積が300㎡の貸家建付地の評価額は、次のように計算できます。

  • 借地権や借家権などの他者の権利による減額 = 6,000万円×0.3×0.5×0.8 = 720万円

  • 貸家建付地の評価額 = 6,000万円-720万円 = 5,280万円

3.小規模宅地等の課税価格の計算の特例

小規模宅地等の課税価格の計算の特例とは、相続税の計算において、被相続人が自宅や事業用に使っていた宅地等の評価額を一定の割合で減額する制度です。この特例を受けることで、相続税の負担を軽減することができます。

この特例の対象となる宅地等は、以下の4種類に分けられます。

  • 特定居住用宅地等:被相続人の自宅として使っていた宅地等

  • 特定事業用宅地等:被相続人の個人事業(貸付用を除く)として使っていた宅地等

  • 貸付事業用宅地等:被相続人が貸地や貸家など貸付用としていた宅地等

  • 特定同族会社事業用宅地等:被相続人の会社(同族会社)として使っていた宅地等

この特例は「小規模」という名の通り、使える面積に限度があります。各種類の適用できる限度面積と減額割合は以下の表の通りです。

種類                               限度面積 減額割合
特定居住用宅地等             330㎡    80%
特定事業用宅地等             400㎡    80%
貸付事業用宅地等             200㎡    50%
特定同族会社事業用宅地等 400㎡    80%

この特例を受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。要件は、宅地等の種類や相続人の関係によって異なりますが、一般的には以下のようなものです。

  • 配偶者:無条件で特例を受けられる

  • 同居親族:相続発生時に被相続人と同居していたこと、申告期限までにその宅地等を所有し続けていること

  • 別居親族(家なき子):被相続人に配偶者や同居相続人がいないこと、相続開始前3年以内に自分や親族が所有する家に住んだことがないこと、申告期限までにその宅地等を所有し続けていること

この特例を受けるためには、相続税の申告書を提出する必要があります。申告書には、宅地等の評価額や面積、特例の適用要件を証明する書類などを添付する必要があります。

この特例の計算例を示します。被相続人が自宅として使っていた宅地(評価額8000万円、面積400㎡)を、配偶者が相続する場合を考えます。この場合、330㎡までの部分の評価額を80%減額できます。なお、それを超える部分は通常の評価額で計算します。その結果、相続税評価額は8000万円から2720万円まで減額できます。具体的な計算式は以下の通りです。

相続税評価額​=(評価額×面積×減額割合)+(評価額×(面積−限度面積))
                     =(8000×330×0.2)+(8000×(400−330))
                     =528000+560000
                     =1088000
                     =2720万円​

このように、小規模宅地等の特例は、相続税の節税に有効な制度です。ただし、適用要件や計算方法は複雑で、宅地等の種類や相続人の関係によって異なります。相続税の申告には専門的な知識が必要ですので、相続に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

4.その他の財産の評価

家屋の評価とは、相続税や贈与税の計算において、相続や贈与などにより取得した家屋の価額を求めることです。家屋の評価方法は、その家屋の利用形態や状況によって異なります。一般的には、以下の4つのケースが考えられます。

  • 被相続人が自宅や事業用に使っていた場合

  • 賃貸アパートの場合

  • 第三者に貸していた場合

  • 建築中の建物の場合

それぞれのケースについて、評価方法と計算例を説明します。

1️⃣家屋の評価

被相続人が自宅や事業用に使っていた場合

被相続人とは、亡くなった方のことです。この場合、家屋の評価額は、その家屋の固定資産税評価額に1.0を乗じた金額により評価します。固定資産税評価額とは、市町村から毎年送られてくる「固定資産税課税明細書」に記載されている価格のことです。

例えば、固定資産税評価額が5,000万円の家屋を相続した場合、その評価額は次のように計算できます。

家屋の評価額​=固定資産税評価額×1.0=5,000万円×1.0=5,000万円​

賃貸アパートの場合

賃貸アパートとは、複数の部屋を借り手に貸している家屋のことです。この場合、家屋の評価額は、その家屋の固定資産税評価額から、借家権割合と賃貸割合をかけた金額を控除した金額により評価します。借家権割合とは、借り手が家屋を借りて使用する権利の価額が家屋の価額に占める割合のことで、30%と定められています。賃貸割合とは、貸している部分の床面積の割合のことです。

例えば、固定資産税評価額が2億円、部屋の床面積の合計が300㎡、貸している部屋の床面積の合計が150㎡の賃貸アパートを相続した場合、その評価額は次のように計算できます。

賃貸割合​=部屋の床面積の合計貸している部屋の床面積の合計​
              =300㎡150㎡​=0.5​

家屋の評価額​=固定資産税評価額−(固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合)
                     =2億円−(2億円×0.3×0.5)
                     =1億7,000万円​

第三者に貸していた場合

第三者に貸していたとは、被相続人が自分や親族以外の人に家屋を貸していた場合のことです。この場合、家屋の評価額は、その家屋の固定資産税評価額から、借家権割合をかけた金額を控除した金額により評価します。借家権割合は、賃貸アパートの場合と同じく30%と定められています。

例えば、固定資産税評価額が2,000万円の家屋を第三者に貸していた場合、その評価額は次のように計算できます。

家屋の評価額​=固定資産税評価額−(固定資産税評価額×借家権割合)
                     =2,000万円−(2,000万円×0.3)=1,400万円​

建築中の建物の場合

建築中の建物とは、被相続人が亡くなった時点でまだ完成していなかった家屋のことです。この場合、家屋の評価額は、増改築等前の家屋の固定資産税評価額に、増改築等費用から死亡日までの償却費を引いた金額の70%を加えた金額により評価します。増改築等費用とは、建築中の家屋にかかった費用のことです。死亡日までの償却費とは、増改築等費用の90%に経過年数を乗じて耐用年数で割った金額のことです。経過年数とは、増改築等日から死亡日までの年数のことで、1年未満の端数は切り上げます。耐用年数とは、家屋の種類に応じて国が定めた年数のことです。

例えば、被相続人が亡くなる11年前に木造の家屋を増改築等した場合、その評価額は次のように計算できます。増改築等前の家屋の固定資産税評価額が2,000万円、増改築等費用が500万円、木造の住居の耐用年数が22年とします。

死亡日までの償却費​=増改築等費用×90%×耐用年数経過年数
                                ​=500万円×90%×22年11年
                                ​=225万円​

家屋の評価額​=増改築等前の家屋の固定資産税評価額+(増改築等費用−死亡日までの償却費)×70%
                     =2,000万円+(500万円−225万円)×70%
                     =2,192万5,000円​

2️⃣株式の評価

株式やゴルフ会員権などの財産の評価は、相続税や贈与税の計算において重要なポイントです。評価方法は、財産の種類や市場価格の有無によって異なります。ここでは、ご質問の内容に沿って、各財産の評価方法を簡単に説明します。

1.上場株式の評価
上場株式とは、証券取引所や店頭市場などで取引されている株式のことです。上場株式の評価額は、その株式の相続発生日(死亡日)の終値により評価します。例えば、相続発生日に100株のA社の株式を相続した場合、その評価額は次のように計算できます。

上場株式の評価額​=株式の終値×株式の数
                            =1,000円×100株
                            =100,000円​

2.取引相場のない株式(非上場株式)の評価
取引相場のない株式とは、上場株式以外の株式のことで、非上場株式とも呼ばれます。取引相場のない株式の評価額は、その株式の発行会社の規模に応じて、以下の3つの方式のいずれかで評価します。

  • 原則的評価方式

  • 類似業種比準方式

  • 配当還元方式

原則的評価方式とは、株式の発行会社の純資産価額(資産から負債を引いた金額)を株式数で割って求めた1株当たりの純資産価額により評価する方式です。純資産価額は、財産評価基本通達の定めにより評価した金額により算出します。

例えば、発行会社の純資産価額が1億円、発行株式数が10,000株の取引相場のない株式を100株相続した場合、その評価額は次のように計算できます。

1株当たりの純資産価額​=株式数純資産価額​
                                      =10,000株1億円​
                                      =1,000円​

取引相場のない株式の評価額​=1株当たりの純資産価額×株式数
                                      =1,000円×100株
                                      =100,000円​

類似業種比準方式とは、株式の発行会社の業種と類似した業種の上場株式の市場価格を参考にして、株式の価額を評価する方式です。この方式は、原則的評価方式による評価額が市場価格を反映していないと認められる場合に適用されます。

例えば、発行会社の業種が製造業で、類似業種の上場株式の市場価格が1株当たりの純資産価額の2倍であるとすると、その比率を取引相場のない株式にも適用して評価額を求めます。

取引相場のない株式の評価額​=1株当たりの純資産価額×株式数×比準率
                                      =1,000円×100株×2
                                      =200,000円​

配当還元方式とは、株式の発行会社が将来支払うと見込まれる配当金の現在価値の合計額により評価する方式です。この方式は、同族株主以外の株主が取得した株式について、その発行会社の規模にかかわらず原則的評価方式に代えて適用されます。

例えば、発行会社が毎年1株当たり100円の配当金を支払うと見込まれ、基準年利率が1%であるとすると、その現在価値は次のように計算できます。

1株当たりの配当金の現在価値​=基準年利率配当金
                                        ​=0.01100
                                        =10,000円​

取引相場のない株式の評価額​=1株当たりの配当金の現在価値×株式数            
                                      =10,000円×100株
                                      =1,000,000円​

3.ゴルフ会員権の評価
ゴルフ会員権とは、ゴルフ場の施設を利用する権利のことで、株式や預託金などから構成されるものがあります。ゴルフ会員権の評価額は、その会員権の形態や市場価格の有無によって異なります。一般的には、以下の4つのケースが考えられます。

  • 市場価格のある会員権

  • 株主でなければ会員となれない会員権

  • 株主であり、かつ、預託金等を預託しなければ会員となれない会員権

  • 預託金等を預託しなければ会員となれない会員権

それぞれのケースについて、評価方法と計算例を説明します。

市場価格のある会員権とは、ゴルフ会員権の売買が行われている会員権のことです。市場価格のある会員権の評価額は、その会員権の課税時期(相続開始日)の通常の取引価格の70%により評価します。通常の取引価格とは、ゴルフ会員権を取り扱う業者のホームページや雑誌などで確認できる価格のことです。

例えば、課税時期が令和5年5月31日で、その日の通常の取引価格が1,000万円の市場価格のある会員権を相続した場合、その評価額は次のように計算できます。

市場価格のある会員権の評価額​=通常の取引価格×70%
                                         =1,000万円×0.7
                                         =700万円​

株主でなければ会員となれない会員権とは、ゴルフ場の運営会社の株式を保有していなければ会員になれない会員権のことです。株主でなければ会員となれない会員権の評価額は、その株式の評価額により評価します。株式の評価額は、上場株式であれば市場価格、取引相場のない株式であれば原則的評価方式、類似業種比準方式、配当還元方式のいずれかで評価します。

例えば、課税時期が令和5年5月31日で、その日の市場価格が1,000円の上場株式を100株保有している株主でなければ会員となれない会員権を相続した場合、その評価額は次のように計算できます。

株主でなければ会員となれない会員権の評価額​=株式の評価額
                                                                            =市場価格×株式数
                                                                            =1,000円×100株
                                                                            =100万円​

株主であり、かつ、預託金等を預託しなければ会員となれない会員権とは、ゴルフ場の運営会社の株式を保有するとともに、預託金や入会金などを支払っていなければ会員になれない会員権のことです。株主であり、かつ、預託金等を預託しなければ会員となれない会員権の評価額は、その株式の評価額と預託金等の合計額により評価します。株式の評価額は、上記と同様に市場価格または非上場株式の評価方式で評価します。預託金等は、その額面により評価します。

例えば、課税時期が令和5年5月31日で、その日の市場価格が1,000円の上場株式を100株保有し、預託金として500万円を支払っている株主であり、かつ、預託金等を預託しなければ会員となれない会員権を相続した場合、その評価額は次のように計算できます。

株主であり、かつ、
預託金等を預託しなければ会員となれない会員権の評価額​=株式の評価額+預託金等
                                                                                              =(市場価格×株式数)+預託金
                                                                                              =(1,000円×100株)+500万円
                                                                                              =600万円​

預託金等を預託しなければ会員となれない会員権とは、ゴルフ場の運営会社の株式を保有していなくても、預託金や入会金などを支払えば会員になれる会員権のことです。預託金等を預託しなければ会員となれない会員権の評価額は、その預託金等の額により評価します。

例えば、課税時期が令和5年5月31日で、預託金として500万円を支払っている預託金等を預託しなければ会員となれない会員権を相続した場合、その評価額は次のように計算できます。

預託金等を預託しなければ会員となれない会員権の評価額​=預託金等
                                                                                              =500万円​

4.生命保険契約に関する権利の評価
生命保険契約に関する権利とは、保険契約者が保険会社に対して有する権利のことです。例えば、保険金の受取権や解約返戻金の受取権などがあります。相続税の評価では、相続開始の時においてまだ保険事故が発生していない生命保険契約に関する権利の価額を評価する必要があります。その場合の評価方法は、以下の通りです

  • 相続開始の時においてその契約を解約するとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額によって評価する。

  • 解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合にはこれらの金額を加算する。

  • 解約返戻金の額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額(復興特別所得税の額に相当する金額を含む)がある場合には、その金額を差し引く。

なお、保険事故が発生しなかった場合に返還金が支払われない生命保険契約(いわゆる掛捨て保険で解約返戻金のないもの)については、契約者に返還金を受け取る権利(財産価値)がないため、評価額は付されません。

解約返戻金相当額がわからないときは、契約先である生命保険会社などに照会し、確認してください。なお、生命保険会社などへ照会する場合には、あらかじめ時間的な余裕をもって照会する必要があります。

5.定期預金の評価
定期預金とは、期間を決めて預入することで、普通預金よりも高い金利が適用される預金のことです。相続税の評価では、相続開始の時における預入高と同時期現在において解約するとした場合に既経過利子の額として支払を受けることができる金額から当該金額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額を控除した金額との合計額によって評価する必要があります。ただし、定期預金、定期郵便貯金及び定額郵便貯金以外の預貯金については、課税時期現在の既経過利子の額が少額なものに限り、同時期現在の預入高によって評価することができます。

既経過利子の額とは、預入期間のうち相続開始の時までに経過した期間に対する利息の額のことです。既経過利子の額は、預入期間の経過割合に応じて計算されます。例えば、1年ものの定期預金を100万円で預入した場合、金利が0.1%とすると、1年後には1,001,000円が支払われます。このとき、相続開始の時が預入から6か月後だとすると、既経過利子の額は1,001,000円×6/12=500,500円となります。この金額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額を差し引いた金額と、相続開始の時の預入高である100万円との合計額が、定期預金の評価額となります。

※FP3級試験練習問題

財産の評価に関するFP3級の試験問題と回答を作成してみました。

# 財産の評価に関するFP3級の試験問題と回答

## 問題1

次のうち、相続税の評価において、
相続開始の時における預入高と同時期現在において解約するとした場合に
既経過利子の額として支払を受けることができる金額から
当該金額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額を
控除した金額との合計額によって評価する必要があるものはどれか。

1. 定期預金
2. 普通預金
3. 定期積金
4. 定額貯金

## 回答1

1. 定期預金

## 解説1

定期預金は、期間を決めて預入することで、普通預金よりも高い金利が適用される預金である。
相続税の評価では、相続開始の時における預入高と同時期現在において解約するとした場合に
既経過利子の額として支払を受けることができる金額から当該金額につき
源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額を
控除した金額との合計額によって評価する必要がある。
なお、定期預金、定期郵便貯金及び定額郵便貯金以外の預貯金については、
課税時期現在の既経過利子の額が少額なものに限り、
同時期現在の預入高によって評価することができる。

普通預金、定期積金、定額貯金は、期間を決めずに預入することができる預金である。
これらの預金は、課税時期現在の既経過利子の額が少額なものに限り、
同時期現在の預入高によって評価することができる。
したがって、これらの預金は、相続開始の時における預入高と同時期現在において
解約するとした場合に既経過利子の額として支払を受けることができる金額から
当該金額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額を
控除した金額との合計額によって評価する必要があるものではない。

財産の評価は、相続税の計算において重要な要素ですので、しっかりと理解しておくことが必要です。
これらの内容がFP3級試験に役立つことを願っています!

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