小さな村の小さなダンサー (2009) MAO'S LAST DANCER 監督 ブルース・ベレスフォード

毛沢東時代の中国。山東省の貧農の少年がその身体能力を共産党に買われて選ばれ、11歳で北京の舞踏学校へ。バレエが何なのかすら知らなかったところから、毎日の厳しい練習を経て、共産主義プロパガンダのために踊る。ところがひょんなことからテキサスのバレエ団へ3ヵ月の研修に行くことになり…。

実在のバレエダンサー、リー・ツンシン氏の自叙伝をもとにした映画だそうです。

中国の共産主義の歴史、文化大革命、四人組とその追放とか、細かい年代を追っての知識がないと感じきれない部分もあるんだろうな、とは思ったところ。

それにしても、少年期、若い青年期、青年期と3人の俳優がリーを演じるのだが、体の柔らかさとか(当然すぎる感想?)踊りの迫力が凄い。特に現役のバレエダンサー、ツァオ・チー氏が演じる青年期。アジア人の力強いバネ、躍動感を感じて、鳥肌がたちます。このバレエのシーンだけでも、十分に観る価値があると思います。でも2番目の子の顔が可愛くて好みだったなー(余談)。

幼い頃の両親との別離、厳しい訓練、恩師との出会い… それぞれに見所はあるものの、わりとあっさりめに流されている印象。

本のほうは読んでいないんだけど、ヒューストンに来てからの決心/事件に至る、彼の心の動きというのが性急すぎて、伝わりきらないというか納得しきれないような。初めてアメリカに来るまでの彼は、従順に共産主義を信奉していたのだろうし、そのように描かれているのだから。

ひと言であっさり言ってしまえば「自由」を感じたということなのでしょうが。そのことに関わった女性、友人、中国に残された家族への代償が大きいだろうことは想定していたんだろうになあ、と、少し割り切れない気分が残りました。

アメリカに初めてきてカルチャーショックをうけるリーや、その言葉のやりとりが、微笑ましく、笑えます。そして感動の再会のシーンに、この演目「春の祭典」かい! というのは心の中でちょっとつっこんでいたのだが(いや、素晴らしいのだけど、奇抜だし)その突っ込み心を代弁してくれる場面もあり、満足しました。


追記)邦題のこと。多くの人が既に指摘しているが、原題はMao's last dancerであり、Maoとは毛沢東の毛のこと。小さなダンサー云々は、思いきり「リトルダンサー」の二匹目のどじょうを意識している邦題で、あこぎ。かつ、子供の頃の話が中心という訳でもないので、小さなダンサーというのはちょっと内容としてもそぐわないのは残念です。

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