鬼生田貞雄の文学 ―第五回― 「それは苦難の道だよ」(四)
鬼生田貞雄は生涯を通して同人雑誌に小説を寄稿し続けることになる。そこでその当時の同人雑誌の位置について、十返肇の「文壇放浪記」に踏み込んだ解説があるので引いておくと、「同人雑誌に書いて、多少名前が知れだすと、他の同人雑誌から原稿の依頼がくるのだ。もちろん原稿料などはないが、それでも、自分の同人雑誌以外に書くわけで、まず他流試合に出るようなものである。“流行児”になると、同時に二つも三つもの同人雑誌に書く。これが、私のいう“同人雑誌大家”で、井上友一郎や田村泰次郎は、その最た