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プロのタイムスリップ

祖父が亡くなってから少し経ったある日の夜、僕は祖父の部屋にいた。祖父へ最後の義理を果たすために。

祖父は寡黙で真面目な人だったが、晩年は何処か違ったように思う。呼びつけられ、襟を正して病室に入って酒を勧められるとは考えもしなかったし、財産としてガラクタにしか見えない石を押し付けられるとは。

もう時間だろうかと思い酒に手をかけた瞬間、視界が暗転。体は拘束され、口には布が詰め込まれた。抵抗を考える頃には全てが終わった後だった。

そして、展開に思考が追いつかないままに頭に巻かれたものが解かれていく。

僕の視界に映ったのは果たして、病衣のまま、無邪気な笑顔でこちらを見て闇に消えていく祖父だった。

右手にはガラクタにしか見えない石を、左手には僕が買ってきたお酒を持って。

もしかすると、祖父は真面目なフリをして生きてきたのかもしれないなと、そうナース服で縛られた僕はふと思った。

この状況、あの形見で何とか果たして何とかなるだろうか。


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