人喰いの大鷲トリコ__20200203164236

人喰いの大鷲トリコ レビュー 少年の不思議な思い出は高尚な愛の物語だった。

総合評価9(名作)

ゲームプレイの部分には、問題点が多い。しかし、物語の点では、非の打ち所がない。ここまで、美しい冒険を私は体験したことがない。

本作の欠点について

まず初めに、悪い点から話そう。第一に、操作中のカメラワークだ。ジャンプ操作とヨロイとの戦闘で主に悩まされた。ex.地面に穴があるから飛び越えたいのに、その穴を確認しながらジャンプすることができなかったりする。また、緊急性の高い場面で、主人公を画面に捉えることが難しかったり、照準がずれたりすることがあった。

第二に、操作性である。少年と大鷲は違う動物だ。だから、意思疎通はうまくいかないのは当然である。意思疎通における判定の難しさについては正直なところ、仕方ないものだと感じている。しかし、少年を操作する際の判定のいい加減さは残念だ。目の前の樽を持ちたいのに、近くの物を拾ったり、、、、もう少しAIなんとかならなかったか。。。

上田監督の才能〜キャラ設定と世界観、ストーリーテリング〜

上田文人監督は、"変わった人間""異なる神聖な生物や人間"との"美しい交流"を描くことが多いと感じるし、本作はまさにその交流であった。この点は他の映画監督と比較して、秀逸な点であると思う。

具体的に、"変わった人間"とは、ICOでいうツノの生えた少年(イコ)であり、本作で言えば、タトゥーのような紋様が体中に刻まれた少年
"異なる神聖な生物や人間"とは、ICO真っ白な肌のヨルダで、本作では人喰いの大鷲トリコだ。神聖と捉えた理由は、ある種の神話的要素を含んでいる設定ばかりだからだ。例えば、ICOや本作は一種の禁足地のような空間でのアドベンチャーだ。トリコとは原題の"the last guardian"である。本編のネタバレになるので詳しい言及は避けるが、トリコに関する設定や世界観はどれも神聖だ。

変わった人間や異なった生物で神話的なものが絡むとなると、デヴィッドリンチ作品のような奇作になって、異形が出たりすることが多いと思う。しかし、上田監督の作るキャラクターは客観的に見て、不純さを感じさせない。これってすごく難しいことだと思ってます。
一方、フェリーニ監督のキャラのようなどこか笑えるような捉え方もあります。(映画、"道"のザンパノ)でも、上田監督のキャラはコメディさはないが、愛らしさを感じさせてくれます。

        (道より、ザンパノ。胸筋大道芸人おじさんです。)

世界観という点では、既に少し触れた通り、神聖さで溢れている。具体的には、仏像、ヨロイ兵士、建物内の文字、人の話す言語だ。他にも、自然の描写が綺麗だった。風で揺れた木々の隙間から見えるトリコ。トリコの食べ物である、光る樽の周りに飛ぶ青い蝶。

(本作で、何度も立ちはだかるヨロイくん。主人公を捕らえて拉致しようとする。主人公は基本的にヨロイには無力なので、トリコに倒してもらう必要がある。)

(トリコは樽が好物で、丸ごと食べてしまう.....笑)

ストーリーテリングもゲーム体験ならではの、インタラクティブ性に富んだ形式であり、この点も秀逸だ。本作では、お互いが助け合い、そして心が成長していき、信頼関係を構築していく。最終的には、信頼というより、当事者にしか理解できない"愛の絆"が芽生えている。当事者とは、主人公とトリコ、プレイヤー3人だ。

演出も素晴らしい。特にトリコ周りが際立っていた。動物ならではの愛情表現に満ち溢れていた。例えば、トリコは不意にも主人公を傷つけてしまった。トリコは動物だから、言葉を話せない。ならどのようにして、トリコは感情を主人公に伝えるだろうか。この答えは是非ともプレイして体験して欲しい。

(いつも主人公のことを見てくれるトリコ。離れると寂しそう。笑)

(綱渡りを見守るトリコ。時間がかかるし、集中力を伴うアクションであっても、画面にトリコがいると和む。笑)

不純さがなく、愛らしさのある二つの生物による交流は、プレイヤーを含めた3つの間で強固な絆を形成し、ストーリーが進むごとに感情移入していく。ラストには強く感動し、自然と涙が流れてしまう。これこそが、"美しい交流"であり、上田監督作品の最大の醍醐味なのではないかと私は感じている。そして、他のゲームでは体験できない唯一無二な上質な物語であることに違いない。

総評

このゲームは一本道で、やり込みはあまりありません。探索もあまりできないです。クリアまでは20時間以内程度です。こんなボリュームなんです。しかし、コントローラーを握って、トリコとの達成感(喜)、カメラワークなんとかしてくれよ!!(怒)、トリコや少年についての理解(哀)、トリコとの冒険(楽)、等々、喜怒哀楽様々な感情を抱かせてくれます。トリコ逆方向行かないで!!こっち行ってくれ〜〜なんて場面も多々。。(私、トリコに怒ったことはありません。)
こんなゲームそうそう出会えないです。

僕は、あまりゲームで泣くことが少ないです。昨年だとDEATH STRANDINGだけ。人生で号泣したのはFF9、ラストオブアス、ICOくらいだと思います。この3タイトルに並ぶか、それら以上なのが、この"人喰いの大鷲トリコ"です。

”人喰いの大鷲トリコに出会えて、プレイできたことが本当に良かった!ゲーム好きで良かった。”
こんな気持ちにさせてくれるゲームにまた出会いたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?