山本貫太(たんかともま)

なで肩。何でも書きます。スキ欄は日記以外の文章をまとめています。日記の内容は架空です。…

山本貫太(たんかともま)

なで肩。何でも書きます。スキ欄は日記以外の文章をまとめています。日記の内容は架空です。 ご連絡はメール(akaimukade@gmail.com)かX【Twitter】(@tankatomoma)にお願いします。

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題名をクリックするとAmazonの商品ページが開きます。 【小説】 「ソルター・マーシー」 江古田文学101号掲載 「パッチワーク」 江古田文学102号掲載 「毛穴」 江古田文学105号掲載 「執筆用資料・メモ」 江古田文学108号掲載 【官能小説】 「一回だけで、いいの?」 新鮮小説 2020年4月号掲載 「お義母さんは、僕専用のオナティッシュ」 特選小説 2021年9月号掲載 「×××ゲーム」 新鮮小説 2021年12月号掲載 「わたしで抜いたことある?」

    • 日記0432あるいは快尿

      「快便があるなら快尿って言葉もあるんですかね?」 「さあなぁ」 我が社の健康診断は変わっていて、効率のため、三人ずつ検尿をする。 「木村さん、めっちゃでますね」 「オレンジジュース……、がぶ飲みよ、がぶ飲み」 「え、ビタミンとっちゃだめですよ、検査前」 「マジか?」 検尿コップから黄色い尿がボタボタと溢れる。 「ちょっと、木村さん、溢れてますって」 よく見ると、検尿コップだけではない。あらゆる便器が逆流し、水かさが増え、溢れている。 「なんだよ、これ、なんなんです

      • 日記0431あるいは麻美と水槽と赤いランプ

        目的地に付く前に、男は必ず僕を見つけ挨拶もなしに本題、あるいは、一聞しただけでは真意をつかめない話をし始める。 「遊びの語源は麻美(あさび)、要するにタイマですよ」 男のタトゥーは顔にまで及んでいた。痩せこけた頬には脚の本数が三本余計な蜘蛛が彫られている。 「こんな人混みでクスリの話なんかするな」 「タイマはクスリじゃないですよ、草です、ハッパです」 「まあ、そうかな」 人が人を避けたり、避けきれずにぶつかったり、諦めて座り込んだりしている。誰もがどこかを目指すか、迷

        • 日記0430あるいは禍の素

          「コレを入れるだけで料理に禍が生まれます!」 禍学調味料だそうで。 「不味いのに、不思議と癖になりますね」 こんなアホな調味料に大金を払って、睡眠時間も削って金を稼いで、ゲップも臭くなって、何がしたいんでしょうね、私は。 瓶を割る。 「禁断症状ですか?」 「かもしれません」 「つらいですか?」 「いや、慣れました」 頭が重い。眠れていないからか、調味料のせいか。 「あれ、ただのアミノ酸ですよ、無害です」 「え、じゃあ、私のつらさはどこから?」 「生まれつきでしょ

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          日記0429あるいはツマランオチダナ

          予想通りとはこうもツマラナイのか。 「落下します、手すりにお掴まりください」 ツマラナイ、だけならまだいい。 ツマラナイし、不快だ。 手すりはガムテープで補強されている。 一握りでいいから、何か越えてきてほしい。 頼むよ、おれの予想を超えてくれ。 フタを開けてみる。小人が歩いていた。いや、止まっていた。横断歩道の信号待ち。 「ステーキご注文のお客様ァー」 おれは茶碗蒸。無視無視。 「お客様ァ、おきゃ、お客様ァアア」 金払ってるだけの人間に様なんて、つけなく

          日記0429あるいはツマランオチダナ

          日記0428あるいはthe kenner

          正義感を拳でしか表現できないような馬鹿に殺されてたまるか。 「お前がやったんだろぉ、なぁ、おい、お前がやったんだろぉ?」 まず、何を疑っているのかくらい言語化してくれ、と思いながら頬を殴られる。内頬が切れ、話そうにも痛みで話せない。 「なんか言ったらどうだ、あ?」 クォーターだかハーフだか知らないが、ずいぶんと背が高く、また、力強く、片手でおれの身体は宙に浮く。 「おいっ!」 ちらちらと男は後ろを振り返って、女たちに自分は強いんだぞアピール。 「ファイトー!」

          日記0428あるいはthe kenner

          日記0427あるいはぶち猫が横切る

          黒い猫は幸福を意味するらしく、だからこそ、横切ることが不吉とされる。 「ぶち猫は?」 ふと気になって、占い師に尋ねた。吉凶混合、あるいは、平々凡々とかだろうか? 「猫は猫よ」 なんとも悲しい現実。ひどく疲れた。こんな言葉を聞くために、私は大金を払ったのか。 「立ち止まってはくれないね、野良猫だもの」 「抽象的な言葉で誤魔化すなよ、占い師なら未来の一つでも当ててみろ」 占い師は「当てるも何も……」と言ってから、鼻で笑った。 「破滅。自分でも気づいてるでしょ?」

          日記0427あるいはぶち猫が横切る

          日記0426あるいはドドド

          きょうはでんしゃにのりました。 にんげんはどうぶつみたいにちゃんとくさいです。 ぼくはくちこきゅうしました。 ほんとうに にんげんは つまらなそうです。 にんげんはたぶん のうりょくとかでじゃなくて うまれでおおよそのことがきまってるみたい。 どんどんたべものはたかくなって おにぎりもたべられないんだって。 おなかいっぱいたべた。おかねはないです。 でんしゃにゆられます。

          日記0426あるいはドドド

          日記0425あるいは予約未来振込遊戯

          逃げて捕まって、闘うくらいなら、はじめから闘え。 「そうも言ってらんないのさ」 車を片手で運転しながら、生意気な弟が笑う。 「一度逃げて、有利な環境を整える。はじめから闘うより勝率は高い。仲間も増やせる」 私は爪楊枝の数をかぞえながら、シートベルトをガチャガチャといじる。 「そんなにいやか?」 「わからない」 「降りたいか?」 「わからない」

          日記0425あるいは予約未来振込遊戯

          日記0424あるいは6分と拍手と

          「見事、お見事!」 拍手、拍手につぐ、拍手。そんなに褒められるようなことはしていない。 「実にご立派、よッ!」 心にも無い褒めに囲まれて、下駄を履かされて、腹立たしいな。 「ほら、たーんとおたべ!」 日本食をご馳走になる。何もわかってない。手を加えることが料理だと思っているのだろう。本来料理とは素材の魅力を引き出すことのはずだ。女性の化粧だって、元々の魅力あってのもの。女の肌を舐めたい男はいても、チークを舐めたいとは思う男はごくわずかだろう。それがどうしてことに料理

          日記0424あるいは6分と拍手と

          日記0423あるいは弱反対のデメリット

          辛い食べ物を欲するように、必ずしも幸福や心地よさばかりが人間を満足させるわけではない。むしろ、自分の形にピッタリとフィットする不幸を選ぶことの方が、幸福以上の満足をもたらす。 「辛いなぁ」 涙が止まらない。鼻水も。首筋には濁った汗。 大きな風呂にでも入ろうと思う。

          日記0423あるいは弱反対のデメリット

          日記0422あるいは12位×☓✗

          ダメダメな日ってありますよね。 そんなときどうするか。 えー、他人に頼る。 ダメなことってたぶん、向いてないことなんですよ。そこを努力だとか頑張りで乗り越えようとするから、ダメだという思いが強くなる。 端から挑戦などせず、人に頼っていればダメと向き合うことはないわけです。 え? 人に頼っている方が、自分がダメに思えてくるって? うーーーーーん。 実際、ダメなんだからしゃーない。しゃーないですよ。でも、みんなダメな部分ありますって。 できる人ばかり損する世界かも

          日記0422あるいは12位×☓✗

          日記0422あるいはクルンチュ

          はい、と、いいえ。 この2つを適当に答えているだけで、何かしらの病気になれる。狂人の判子をもらうことはいともたやすく、普通の人の判子は存在しない。逃れる方法は、自ら狂人の判子を取りに行かないこと。これに尽きる。 「病院へ行きましょう」 「病院へ行きましょう」 「病院へ行きましょう」 「精密検査をしましょう」 「精密検査をしましょう」 「精密検査をしましょう」 安心は不要です。不安定なままで結構です。どうか、判子を押さないでください。

          日記0422あるいはクルンチュ

          日記0421あるいは怪鳥

          「あーーーー」 私がおにぎりをモサモサと食べていると怪鳥の鳴き声が隣室から響いた。人のものとは思えないため、便宜上、怪鳥と呼称したが、多分、隣人の奇声だろう。 「鳥でした!」 確認に遣わせた小野さんから連絡が届く。私の隣室には鳥が住んでいた。 「恩返し系のアレみたいですね、人間のフリをする鳥なんて」 「そうだね、まあ、ただ隠れて過ごしてるだけだから、昔話と違って私と接点はないわけだが……」 「隣人ってだけで十分な接点ですよ!」 「ないよ、田舎ならまだしも。都会に交流な

          日記0421あるいは怪鳥

          日記0420あるいは被害者兼加害者ごっこ

          正当防衛なんです、本当です。 いえ、確かに、私の方が先に暴力をふるいましたよ、はい、ええ……。 でも……、私を殺す計画が進められていたのです。一人、また一人とその計画に参加者が増えていくんです。 私が気を許せば、そこに人が群がって、罵り、否定し、そして罰を下そうとするのです。いえ いえ、妄想なんかじゃありませんよ! 実際に当人の口から言われたのです。一人二人からじゃありません! 確かに、私は善人とは程遠い人間です。しかし、悪人というわけではありません。 罰を甘んじ

          日記0420あるいは被害者兼加害者ごっこ

          日記0419あるいはスパイスふたたび

          「また来るオモッテタ」 インド人は粉のニオイを嗅いでから、茶色い袋へザラザラとスパイスを入れた。 「香りが、足りなくなって……」 「シゲキ、が足りなくなったンデしょ」 「……そうかもしれません」 気怠い身体に、鈍った五感にスパイス。毛穴が全て開き、鼻腔となり、あらゆるニオイに敏感になる。 「忘れられませんよ、本当に。一度してしまったら……」 「ダカラね、また来るオモテタ」 「本当は頼りたくなかったんです、幸せになれないし、辛さから逃げるべきでもないって。もし受刑者が一

          日記0419あるいはスパイスふたたび