日記0431あるいは麻美と水槽と赤いランプ
目的地に付く前に、男は必ず僕を見つけ挨拶もなしに本題、あるいは、一聞しただけでは真意をつかめない話をし始める。
「遊びの語源は麻美(あさび)、要するにタイマですよ」
男のタトゥーは顔にまで及んでいた。痩せこけた頬には脚の本数が三本余計な蜘蛛が彫られている。
「こんな人混みでクスリの話なんかするな」
「タイマはクスリじゃないですよ、草です、ハッパです」
「まあ、そうかな」
人が人を避けたり、避けきれずにぶつかったり、諦めて座り込んだりしている。誰もがどこかを目指すか、迷