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愛すべき黒い宝石。

初めに。

今回からはエールの種類別に、
解説していきたいと思います。

ラガーの時のように一つの記事にまとめようと思ったのですが、
種類がありすぎてまぁ〜無理でした。

それならそれで、
一つ一つ突っ込んで説明できるからいいか。
って感じです。

まずは黒いエール。
ポータースタウトのお話です。

いやぁ〜よく聞く議題ですよね。
ビール女子さんや
キリンさんのHPを調べればすぐ出てくるし。

このnoteでも、
ビールについて書いてる記事、ブログ等々に肩を並べるべく、
取り扱っていきたいと思います。

今からお話しする時代のビールですが、
まだ暗い色のビールの時代です。

19世紀、ピルゼンにて黄金色のビールが出来るまでは
ビールは基本的に暗い色のブラウンエールです。

ポータァァァアーーー‼︎‼︎‼︎

時は18世紀、ロンドン。

当時、
古くなったビール
造りたての若いビール
そして、ペールエール

この3種類をブレンドして飲むのが流行っていて
それは、“Three threads”(3本の糸)と呼ばれ、
エールハウス(今でいうパブ)の主人は、
お客さんの好みに合わせてビールをブレンドしていました。

こんなに人気なら、いちいち混ぜるの大変だし…と、

とあるロンドンの醸造所のオーナーである
ラルフ・ハーウッドという男が
あらかじめブレンドしたビールを一つの樽に詰めます。

これは”ハーウッド・ブレンド”や”Entire”(ひとまとめ)と呼ばれ、
瞬く間にイングランド全域で大ヒットします。

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左側の説明に、ラルフ・ハーウッドは
ロンドンで特別なポーターの醸造家と書かれてますね。

しかし、どういう訳か
先程の名前では浸透せず、

醸造所からビールを配達しにきた運搬人が
エールハウスに到着すると、「ポーター!」と

つまり、「運んできたよ!」と叫んでいたのが広まり、
皆皆、このビールをポーターと呼ぶようになりましたとさ。

諸説ありですが、これが一番有力とされています。

運搬人=ポーターが愛していたビールだから、
ポーターと呼ばれるようになったって説もあります。

兎にも角にも、ロンドンの酒飲みに愛されたビールなのです。

帝王ギネス

そうして一大ブームとなったポーターですが、
人気になったということは、前回のペールエール同様、
同じ物を造りたい!ってところが出てきますね。

最早この流れの定番です。
同じ物を造りたくても、現地の水の特性を活かしたビールが故に、
オリジナルを超えることがなかなか出来ないのが定説ですね。

ペールエールではバートンでの水質がバートン特有の味わいを造りだしたり、
ピルスナーでは、ピルゼンの軟水があの黄金色を誕生させたりと。

そしてポーターも、ロンドンの水の特徴が故に、
他の土地ではポーターをうまく真似することが出来ませんでした。

しかし、このロンドンのポーターに立ち向かった会社が登場します。

それが、アイルランドダブリンに創業したギネス社です。

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理想的な泡の厚さは1パイントのグラス 18~22mmとされてます。

ギネス社はこのポーターを徹底的に研究し、
1806年にはポーター専業を宣言します。

この頃になると、ギネス社のポーターは
ロンドンのポーターを凌駕し、
ポーター市場を席巻します。

ギネス社はポーターの醸造法を
独自に開発し、ポーターより強い
スタウトポーター”を開発します。

スタウト”とは”強い”という意味なのです。

このスタウトは長距離の輸送にも耐えうる品質だったので、
海外でも人気を博するのです。

これがポーターとスタウトの成り立ちです。

スタウトも、元を辿ればポーターからの派生ではありますが、
スタウトはポーターと違ったドライな味わいで
(ギネススタウトが水のように飲めるのがドライということだろうか??)
全く違うビールとして扱われていました。

それぞれの種類。

さて、現代では
ポーターにもスタウトにもいくつか種類が存在します。

ブラウンポーター
ロブストポーター

現代において、ポーターというのは黒ビールのイメージが強いですが、
元々は黒というより、暗いブラウン色をしていました。

こちらがいわゆるブラウンポーター
ナッツぽい甘みがあるような。

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黒というより、赤みがかかった茶色でしょうかね。

しかし、ギネス社が真っ黒なスタウトを開発してから
本家のポーターもスタウトを意識するようになり、
真っ黒に変化していった。らしいです。

材料のことを言うと、
ローストバーレイ(焦がした大麦)を使用することによって、
真っ黒になります。
ギネス社のスタウトはロンドンのポーターと違い、
このローストバーレイを使用することによって、
味わいも色合いも異なるビールとなったのです。

と、言うことで黒くなったのがロブストポーター
コーヒー、チョコレートっぽい味わいでしょうか。

あとは、少し前にバルチックポーターというのが
日本でもちらほら聞かれましたね。

こちらは後ほど説明いたします。

スタウトの種類ですが、
ギネス社が開発したスタウトの中に
ドライスタウトというものがあります。

これは19世紀、ギネス社が税金対策として開発した
ライトタイプのスタウト
ギネス・ドライ・スタウトです。
パブでギネス下さいと注文したら、これが出てきます。
今ではこのドライスタウトがスタンダードです。多分。

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それと、よく日本のボトルでみられる
ギネス・エクストラ・スタウト
こちらは、ギネス社初期のスタウトポーターの味を再現してるとかなんとか。

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また、昔に赤道に近い国への輸出用に、
ホップを多めに使った”West India Porter”
通称”トロピカルポーター”というのもあるのですが、
ちょーーっと飲んだこと無くて…。
海外のブルワリーだと造っているところがあるみたいですが。
今度見かけたら飲んでみます。

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その他、ギネス社は各地に醸造所があり、
その土地毎に特徴的なビールを醸造しています。
海外に旅行した際にギネスを見かけたら飲んでみるといいかもしれませんね。
御当地ギネス。ねっ。

ギネス社以外のスタウトでいうと
乳糖を使用したミルクスタウト
乳糖を使用すると、発酵されずに残るので、甘みが感じられます。
スウィートスタウトクリームスタウトなんて呼ばれたりもします。

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BelchingBeaver Peanut Butter Milk Stout
ほぼピーナッツバターです。めちゃくちゃ美味しんで是非。

牡蠣の殻と身を使用したオイスタースタウト。
アイルランドでは牡蠣の養殖が盛んで、
牡蠣とスタウトを一緒に飲むのが好まれるそうです。
オイスタースタウトと言っても、牡蠣の味がするわけではありませんよ。

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いわて蔵ビール 三陸広田湾産牡蠣のスタウト
日本のオイスタースタウトと言ったらいわて蔵さん!


あとは、オートミールを使った
オートミールスタウトなんてのもありますね。

貿易して進化。

さて最後に、スタウトを語る上で外せない、
インペリアルスタウトのお話を。

インペリアルスタウトは
バークレーパーキンスという醸造所で造られたストロングエール。

前回の記事で、
ホジソンがアジア市場にペールエールを売り込んでいる間、
オールソップとバスは別の場所と貿易してたと書きましたが、
その場所というのは、ロシアバルチック諸国です。

(バルチック諸国とはバルト三国とも言われ、
 バルト海東海岸に並ぶエストニア、ラトビア、リトアニアを指します。)

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当時のロシアの女帝 、エカテリーナ2世が愛飲していました。
皇帝のために造られたビールということで、
インペリアルスタウトと呼ばれるようになりました。

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日本でも皇室御用達のものって、
贅沢だったり、品があったりしますよね。

やはり皇帝用ということで、
味わいもアルコール度数も皇帝バージョンです。

ロシアとの貿易でインペリアルスタウトが誕生しまして、
バルチック諸国との貿易では、先ほどちょろっと出ました、
バルチックポーターなるものが誕生します。

東側への貿易では、
デンマーク コペンハーゲンを経由していたらしいのですが、
この時期にコペンハーゲンでは世界で初めて、
ラガー酵母の純粋培養に成功していました。

そんなこともあり、バルチックポーターは
ラガー酵母を使用している
ラガー系のビールであることが多いようです。

通常のポーターよりも
度数が高めで、味わいもしっかりしています。
インペリアルポーターなんて言い方もするのでしょうか?

正直、私自身そんなにバルチックポーターを
飲んだことがあるわけではなく、データが少ないのですが、
ラガー酵母を使用したインペリアルポーターを
バルチックポーターって呼ぶのか。
エール酵母を使用したらバルチックポーターと呼ばないのか。

情報求…。

最後に。

と、いうことで
黒いエールのお話でした。

現代、世界で飲まれいるビールは
キンキラキンのピルスナーが主流の時代。

このギネス社が誕生したダブリンという街だけは
街中のパブ、どのテーブルを見渡しても
真っ黒なビールしか無い。
と、知人が言ってました。
僕もいつかダブリンでギネスを飲み散らかしたいですね。

黒ビールと言うと何かと嫌煙されがちです。
お店で働いていても、黒ビールと言うのは
他のビールに比べてなかなか注文されませんが、
この記事を読んでいただいた、
そんな日は是非、黒ビールをいかがでしょうか。

日本の大手でも黒ビール出してますし、
これが結構美味しんです。

ポーターの誕生やギネス社のスタウト開発は
ビール界の歴史に残る出来事がたくさんありますので、
また近いうちに深掘りできればと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

それではまた。

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