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友成好伸先生プレゼンツ 医・歯・薬学部の英語対策!(前編)

 基礎固めの夏休みが終わりました。
 いよいよ志望校受験に向けて、具体的な対策を考えはじめた人も多いのではないでしょうか。
 特に医歯薬系(医学、歯学、薬学、看護学など医療に関わる分野)の学部・学科を目指す受験生の中には、たくさんの受験科目の得点を、どうすれば効率的に伸ばせるのか、悩んでいる人もいるはずです。
 医歯薬系入試の二次試験では理系科目も重要ですが、必ずと言って良いほど課されるのが英語です。ここでどれだけ得点が取れるかで、合否は変わります。
 今回はそんな「医歯薬系の英語」対策について、『医歯薬系の英単語[4訂版]』著者で、英語講師の友成好伸先生にお聞きしました。

Q1.まず、医歯薬系入試の英語にはどのような特徴がありますか?

 各大学の出題傾向にもよりますが、長文読解は、医療、健康、衛生、環境に関連したテーマの文章からの出題が多いと考えてよいでしょう。

 たとえば2021年度の私大医学部入試の出題テーマを全て見てみますと、睡眠、運動、ストレス、喫煙などの健康要因、地域医療、高齢化社会に伴う医療、生と死(臓器移植を含む)に関わる生命倫理、感染症(新型コロナを含む)とワクチン、公衆衛生(公害問題を含む)、生活習慣病(がん、心臓疾患などを含む)、AIやITの医療への活用、先端医療、医薬品開発、医療制度、生理学、疫学、進化や動物全般、知覚と認知、脳科学、うつなどの精神疾患、学習障害といったもので全体の7割を超えます。

 過去数年、このような医療分野の専門性が極めて高い文章のみを読解文として出題している大学が、私大にも、そして国公立大学にもあります

 一方で、他の学部・学科で多く出題が見られる文化全般、文明論、様々な科学技術、エネルギー問題、SDGs関連、気候変動や自然災害、経済とビジネス、AIやIT(医療関連除く)、情報社会、教育問題、国際化社会、国連を含む国際政治、宇宙、共生社会、歴史、言語、エッセーや小説(医療関連除く)、哲学(医療関連除く)、コミュニケーション(医師と患者間を除く)、社会学、芸術、青少年問題といったテーマが占めている割合は3割以下です。

 このことが端的に意味するのは、医歯薬系入試を受験する人にとって、一般的な大学入試に定評のある単語集を使うことは、ボキャブラリーを習得する上で必ずしも効率的ではない、ということです。

 専門的な用語はもちろんのこと、一般的によく使う単語であっても、医学的な文脈では違う意味を持つものはたくさんあります
 例えばcontract「契約」を覚えるなら「病気に罹る、筋肉などを収縮する」を、general「全般的な、一般的な」を覚えるなら「全身の」を、communication「コミュニケーション、意思疎通」を覚えるなら「伝染」を、一緒に学習しておくべきです。
 医歯薬系の学部・学科を受験するなら、このような単語については両方の意味を覚えておく必要があるでしょう。

 また大学に入った後、英文で当然目にすることになる医療単語も、受験の段階で習得しておくと、読解がスムーズに進められるようになるでしょう。

 しかしもちろん、バランスの良いリーディング経験を否定して、医療的な内容の文章ばかり読むことを奨励しているわけではありません。
 次のQ2.でも触れますが、分野を限定せず、400~500語程度の標準的な文章なら読めるように慣れておくべきです。

Q2.限られた時間の中で英語の得点力を上げる効果的な勉強法はありますか?

 リーディング力をつけるには、多読精読を両輪に勉強すると良いでしょう。

 まずはテーマを限定せずに400語程度の文章をざっと読んで、内容が理解できるか確かめます。
 子供の頃から読書が好きで、英語でもペーパーバックの本を時々読むような人であれば、苦手なジャンルはないかもしれませんが、入試で主に出題される説明文や論説文では、そのような「読書経験」はあまり関係ありません(ただし、分野に合わせた語彙の習得は大事です)。
 とにかく多くの英文に触れましょう。

 次に復習する段階では、文章を音読しつつ、構造や意味について考えながら読むことをお勧めます。
 このぐらいのレベルの英文が、初見で概ね理解できた、と実感できるようになれば、後は分量が増えるだけなので、気持ちを楽にして取り組んで下さい。
 「文章経験」に基づく分析力は確実にアップしていきます。

 リーディングでは
①  文法的感受性…文の中で言葉が果たす役割(主語や目的語など)を認識する能力
②  語彙と構文の記憶
の2つが重要で、読んでいるときにはこれらが同時に必要になります。
 つまりバランスの良い「文章経験」文法記憶力がキーワードです。

 最近の大学入試は読解の分量が増えているので、問われ方によっては、スキミング(拾い読み)とスキャニング(設問箇所を集中的に意識して読む)をすることを主眼に、一言一句全ての意味を理解しようとせず、7~8割程度の内容理解でもよし、と判断することも重要になります。

Q3.最近の入試英文は、長いものが多い印象があります。「速読が苦手」という受験生の声もよく聞きますが、どのような対策をすれば良いですか?

 「読むスピードが速くならない」と相談にくる生徒は多いのですが、母国語だろうが外国語だろうが、人によって読むスピードは異なります
 いきなり倍速にすることはできません。

 文章を読む速度を上げたければ、リーディングをする際に時間を設定し、自分に負荷をかけながら、速く読めるように心がけることが重要です。
 その経過の中で、『ディスコースマーカー(「一方」「しかし」など、文の流れを示す言葉)に注意する』などといった基本的な技術は自然と身につくようになります。

Q4.英語の共通テスト対策と二次対策はどのようなバランスで進めたら良いでしょうか?

 国公立大の医歯薬系学部を受験する場合は、共通テストの出来栄えをみて実際の受験大学を決める人も多いと思います。
 12月の初旬~半ばまでには、私立大学の入試に合わせて、英作文も含め、まず受験の基本的な準備を万端にしておくことです。
 そうすると、共通テスト後に志望校が決まってから重点的に過去問研究をしても、十分間に合います。

後編では、受験期の生活についてお聞きしています!

友成 好伸(ともなり・よしのぶ)

上智大学文学部卒。医学部専門予備校メデュカパス、東京メディカル学院、クエスト、また都内私立高校で受験生の指導にあたる。医歯薬系だけでなく大手予備校、外国語専門学校、美大予備校、TOEIC講座など多彩な指導経験に基づき、単に英語を教えるのでなく目的に合わせた指導はどうあるべきか日々格闘している。美術鑑賞、現代詩作成、野鳥観察など趣味は広いが、大学受験問題分析もその一つ。美容師免許をなぜか持っている。
 赤本メディカルシリーズ『医歯薬系の英単語[4訂版]』(教学社)執筆。

『医歯薬系の英単語[4訂版]』友成好伸著
『〔国公立大〕医学部の英語[3訂版]』黒下俊和編著


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