最近,おしっこ,もらしましたか?

全障研兵庫支部機関紙「はあとぶりっじ」2019年6月号
からの転載です。
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ヨシタケシンスケさんというかたの絵本が我が家で大人気。小1の息子も,中1の娘も,そして,私も,何度も何度も読んでいます。

私が,ヨシタケさんの絵本に魅かれる理由は,次の3つが絵本からにじんでいるからです。1つは,ゆるやかな寛容さ。2つは,異質を気づき,おもしろがっているところ。3つは,ほんのりとした共感,です。

寛容さ,異質,共感がいい感じでまじりあっているヨシタケさんの最高峰作品が,『おしっこ ちょっぴり もれたろう』(PHP)です。

おしっこをするたび,パンツがちょっとにじんでしまう男の子が主人公。男の子は悩みます。そして,周りの大人や子どもに「あなたも,実はもれたろう?」と尋ねるところからお話が進んでいきます。
 悩んでいる主人公に,おじいちゃんが声をかけます。「だいじょーぶ。だってちょっぴりなんだから。」「しばらくすればかわくんだから」と。確かに,そうですよね。寛容さがあふれるおじいちゃんの一言。
 周りの友達は,おしっこで困ってはいないけど,でも,服がチクチクして困っているなど,それぞれに困りごとを抱えています。そんな友達の声を聴くなかで,主人公の男の子は,「そとからみたらわかんないけど みんなそれぞれそのひとにしかわかんないこまったことがあるんだな…」と気づいていきます。異質さに愉快に気づいていきます。

 極め付きは,「もれたろう」友だちの登場。『おしっこけっこうもれたろう』くんと出会います!「わざとじゃないんだよね」「そーそー」とお互い,自分の悩みをわかりあうなかで,絆を深めます。そうなんですよ,おしっこがにじむときはあるんですよ。でもわざとじゃないんですよ!

……日本は,この20年で,たくさんのものを失ってしまいました。経済の力がその最たるものでしょう。でも,それ以上に,私たちは,寛容さを失ってしまいました。少しの過ちでさえ,「正論」という刃を持って,徹底的に攻撃します。そして社会は分断され,社会全体がじわじわと沈んでいきます。
 そんな今だからこそ,「そういうこともあるよね」「その違いっておもしろいよね」「そうそう,わかるわかる」と思える知性・感性を大事にしていきたいなと思いますし,そんな視点がにじみ出る研究・教育・臨床をしなければと思います。
 
ちなみに,ワタクシ,最近,おしっこすんごいもれたろうでして,妻から前立腺の検査を進められました……
みなさんは,最近,どんなものをにじませていますか?

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