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誰にも会わない旅 5日目。最終日


郡山の夜はなんだか雰囲気が物騒だった。

コンビニに来ただけなのに歩みが少し小走りになってしまうので、夜の散歩には向いていない街だと思う。


曇りでも、日が昇り朝は来る。ここを離れる前に歩いて行ける『郡山市歴史資料館』に向かう。Googleレビューの情報があまりない。単独HPが無くても市の施設一覧でもいいが魅力は教えて欲しいところだ。

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資料館に向かう道すがら知らない街並みを見て興味をそそられる。ここが自分の地元だったら、どんな暮らしをして、どこが生活圏なのかと想像しながら歩く。通りすがりに見えたビルの蔦と擬態化した樹は面白かった。


ある店の前だけに人が並んでいるので立ち止まる。その『たけや』の暖簾には“おにぎり だんご“と書いてあり外のショーケースからは稲荷寿しが見えた。出てくる客の手に持つ袋から草餅の香りがするので早速、寄り道。

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外側のケースには、おにぎり系、店内のケースには団子の甘味系、その上にお惣菜がいっぱいで魅惑の店内で何を選ぶか迷ってしまう。さすがの米所は餅系が強い。こんな充実した店が近所に欲しい限りで羨ましいのである。


寄り道しながら着いた『郡山市歴史資料館』は古いビルであった。昭和の造りに懐かしさを覚える。中の展示は撮影禁止であるが、資料館の撮禁で守っているのは何だろう。縄文土器がそこそこあるが建物の造りの方が気になる。時間が限られるので後で学習するために資料を貰っておいた。

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すぐ後ろの郡山公会堂は大正時代の建物で中は入れない。たまたま管理の方が入口から見せてくれた現役のホールは素敵な舞台だった。昔から大きい街は建物遺産があるのは良い。ここは一週間後の爆発しゃぶしゃぶから近い場所だったので、その時はさぞかしビックリしたろう。

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『たけや』で買った高菜おにぎりを頬ばりながら次の黒磯に向かう。

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東北から帰る時に乗り換え時間が発生するので、来なれた黒磯駅周辺だが、今回は連れのたっての望みで『N's YARD』に行く。駅から離れているのでタクシーなら片道3000円ほど。バスも本数は無い。しかし今回、事前電話予約の『ゆ〜タク』を使う。乗合タクシーで時間は自由にならないが格安。群馬の予約の乗り合いバスもだが、地方交通は定期より乗り合いにシフトした方が便利だ。


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先に『旧青木家那須別邸』へ。外務大臣の青木周蔵が明治時代に建てた別邸で、字名の「青木」も名字発祥なのか?昔の外務大臣がどれほど偉いか分からないが、別邸というには夢のお金持ち屋敷である。外国の貴族が奥様で、娘はハーフの美少女。ドレスで洋館で過ごした時代の写真が残っているが、70年代の少女漫画の世界。明治のリア充最高峰で壁紙も麗しい。

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後のお孫さんが使用していた大正時代のルイ・ヴィトンのワードローブは超貴重。あと、血縁関係ではないらしいがペルー日本公邸立てこもり事件の青木さんの曾祖父がここの当主とはビックリな繋がり。あの事件の後にたまたま、警備のバイト現場が東京の青木邸の近くで、案内で雑談したが(何の工事?な)ダンディなのは血筋だろうか。


明治のお屋敷を堪能して『N's YARD』に向かう。道路からの入口にホースが落ちているかと思ったら車にはねられた大きな1m程のアオダイショウであった。我々にはどうする事もできず、苦悶の顔を葉っぱで隠してあげるだけの無力さよ。

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N's YARDは美術家・奈良美智さんのアトリエのような美術館で館内にはカフェも併設。敷地の庭にも作品があり施設というより森の中の小さな世界だ。印刷物やアートSHOPではよく見かけるが、実物は前に弘前の煉瓦倉庫で『AtoZ』を見て以来だと思う。絵を単体ではなく展示で見せる良さを初めて知った展覧会だった。その時に見た作品の印象は夜の森のイメージだった。

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入館すると受付で撮影可のエリアと、半券で再入場との説明を受けてレコードジャケットと可愛く癖のある置物がいっぱいの細い通路を通る。レコジャケ等は作品ではないが、作家の世界に至る産道のようなエントランスだ。

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最初の部屋で、村瀬恭子さんの水のような見る者の体内の水と呼応してワシャワシャとかき混ぜられる浮遊感覚がある作品に出迎えられる。この空間で昼寝をしたい気分。


次の部屋から作品が始まる。やはり展示が凄く良い空間で、どこに立ってもしっくりくる。

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並べられた写真。「旅する山子」の作品と風景の組み合せは楽しく自由で、館内に差し込む光とともに観る風のようなシリーズだった。


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正直なぜ女の子ばかり描いているのかと思っていた。しかし実物を前にすると受け止め方は違い、夜のうちに静かに地上に降る“宇宙のしずく”が少女の形で見えているような気がしてならない。大きな目からこぼれる涙も星の瞬き。以前の夜の森ではなく今は地上を旅する風のイメージ。最後の部屋は床が大谷石で、他の部屋とは違った感覚で作品と向き合えるようになっていた。


外に出ると、大きな鳥の巣と白い森の精霊がたたずんでいる。バスの時間に追われていたのでカフェに寄れないのが唯一の心残りだ。眠るアオダイショウにサヨナラしてからバスに乗った。

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駅に着いたら和菓子屋『明治屋』が終わっていて残念無念。『タミゼ/クロイソ』に立ち寄る。来る際は営業日に合わせるようにしている。

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昨年、鹿の湯以来の半年ぶり。いつも先に寄り、目的地から帰ってきて2回は行く。高橋さんの気持ちの良い接客と素敵な品々。前回、連れがオリジナルの【YOSHIDA ZUBON】を購入して愛用しているが、男性でも女性でもどちらが履いても様になるカッコよさだ。

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その時に自分はアイヌ半纏を着ていて店主の吉田さんのアイヌの服に対する知識が深く感心した。いつ来てもナニかがある店なのだ。

今回はインド人が腰に巻いている青い布を購入。すべからく柄が良いので選ぶのに苦労する。

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黒磯は、また機会があれば訪れたい場所である。ヒグラシの音が響く静かな街で旅が終わった。



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