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立花のお婆さんと幽霊寿しの話。

高校生の時に小僧寿しでバイトをしていた。

ある日、パートの渡部さんが来るなり言い放つ。

「立花のお婆さん亡くなったらしいよ」

それを聞くなり、えっと驚いた。立花のお婆さんは週2回ほど買いにきて、その度おしゃべりをしてから帰る常連客だった。確かにここ一月は来ていなかったように記憶している。

渡部さんは立花のお婆さんと家は同じ方面だが具体的な住所は知らないそうだ。今朝たまたま犬の散歩の途中で御葬式の準備をしている家があり、通りかかって初めて知ったらしい。

「あら〜イヤねえ、残念ねえ」

顔見知りのパートさん達は皆ため息をついた。立花のお婆さんの歳がいくつなのかは知らないが、知り合った頃からお婆さんだったので年齢的に突然のお別れが来ると知っててもショックてある。

高齢のパートさんは人ごとではないねと、ボヤいていたが次第に忙しくなり、やがてその日の営業は終了した。

お疲れさまです!とバイトは先に退社してパートさん達が閉店の準備に入る。表のシャッターを降ろそうとした時に人影が見えた。

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暗がりに目を凝らすとそこに立っていたのは立花のお婆さんだった。ビックリしたパートさん達で声をかけると病院の帰りで寄ったという話だった。渡部さんはアレっと思ったが今朝のは何かの見間違いだったのかと思いすっかり安堵して、少しお喋りをしてから別れた。


みんなで片付けを終わらせてからタイムカードを押す。渡部さんは朝の御葬式の準備が見間違いとしたら一体誰だったのか気になってしまい、その家を回ってから帰る事にした。

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翌日、時間にバイト先に行くとパートさん達で大騒ぎであった。何事かと話を聞くと青い顔をした渡部さんが堰を切って話し始めた。

昨日亡くなったと思っていた、立花のお婆さんが訪ねて来たのでもう一度朝に見た御葬式は誰だったのかと、帰りに確認に行ったらしい。するとその家で行っていたのは、やっぱり立花のお婆さんの御葬式であるいう事が判明した。ではさっき会ったのは誰なのか、幽霊なのか?あまりの驚きで足が震えあわてて帰った。出勤してから他の人にも確認したい。という事で騒ぎになっていた。

お婆さんを見たのは渡部さん他2人なので見間違いではなさそうだった。そして足もちゃんとあったらしい。その場にいなかった他の人は不思議な話を興味深く話を聞いている。

「入院したから、お寿司食べたかったのねえ」としんみりとした空気になった。あの時にお寿司あげられば良かったねと、皆言い出すので

「それなら幽霊寿し(当時の小僧寿しの夏のメニュー)が良いですよ」と、張り切って提案したら全員に却下されて話が終わった夏の思い出。


そして、この話のテキストを打っていたら突然データが消えたのがビックリしました。


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