記憶で上書きする
夏の早朝が好きだ
まだ寝ぼけ眼の街を朝靄の中
早起きする理由のある人だけが
それは旅人だったり、仕事だったり、朝帰りだったり
色々だけど
こっそりおはようと目配せして通りすぎるような
昨日1日私が吐き出した二酸化炭素と悪意を
なんとか濾過しといたよって、掃きだめといたよって
ゼロにはなんないけどねって
まあ今日1日胸いっぱい吸いなよって
夜の眠りに感謝して
街に繰り出す時間だから
そう街に繰り出した強烈な朝の記憶があるから
どんな朝だってその朝で上書きが可能
まあいい意味でのトラウマというか
シェムリアップで
カンチャナブリで
コチンで
トリバンドラムで
ムンバイで
圧倒的な朝の記憶が
旅を終えた何十年後の早朝も
まるで自分がそこにいるかのような脳内トラップなトリップをしかけてくる
ドラックなんか目じゃねえ
自家発電の永久機関
記憶が揚力になっていつだって心を飛ばせる
普段の通勤時間じゃあダメなの苦笑
もっと朝日と競争するくらいの時間じゃなきゃ
じゃあ毎日4時半とかに起きればいいのかな?
発想の転換
ちょっと前から家事全般が何故だか急に嫌で嫌で仕方なくて
もう一番最後の最後に押しやって
ぶつくさぶつくさ言いながらやる日々だったのだけど
西成のゲストハウスのお面をかぶった
こえとことばとこころの部屋というキャッチフレーズで
アイドルみたいな笑
表現と出会う場を大阪西成の心臓部、動物園駅前の商店街のど真ん中で営む場所に押しかけ女房
体裁としてはGHのお手伝い押しかけボランティアというテイでいってきたけど
そこでスタッフなのかボランティアなのか滞在者なのかよくわからない人たちと過ごしてみると
洗濯ものを畳むたびに
かなよさんと、庭で汗だらだら流しながら
愛の共同作業ですねってふたりで
シーツやタオルを畳んだことが思い出されるし
布団を上げるたびに
ちょっと厳しめにダメだしされながら
そうえいば、チコちゃんは年齢のこと気にしてる?って
いいい、いきなりグさああッと
会って2日目に
昨日のご飯の時ふとそう思ったのよねえって言われながら
おさとうさんに、ベットメイキングのイロハを
教わったことが思い出されるし
お皿を洗う度に
まだ拭き残しているよって無言で笑顔で
つき返してくるフワフワヘアがビックバードみたいな
デイブの薄青い瞳が笑っていないのを思い出すし
トイレを掃除すれば
トビーさんが汗だくになって
伝説のGHで掃除のノウハウを教わったことを話してくれたことを
そしてこの場所への愛の深さを感じて
ああそういう人がいるからここは居心地がいいんだと
ただのカオスに整頓を与えてくれる人がいるから
カオスがカオスでいられるんだと
思ったことを思い出すし
ご飯を作っていれば
ルームメイトだったケイトリンとメイと
フィリピン料理を作ったことや
まくわうりを切ってきゅうりみたいなメロンだねって
みんなでカブトムシになったみたいに
うまいうまいって食べたことを思い出すし
多分東京で食べてもまくわうりは絶対にあんなに上手いことはない
皿を拭けば
全国津々浦々から集まった
大学生の男子たちに
家に帰っても今日みたいにやるんだよー
お母ちゃんにいつもありがとうって
照れずに言うんだよーって
ハッパかけて笑
一緒に30人分の食器をわっちゃわちゃ言いながら
合宿みたいに給食みたいに
ゲバラはさ、広島の平和祈念館にお忍びで来てるんだよね
なんで日本人はこんなひどいことされてアメリカに怒らないのかって
代わりに怒ってくれたんだよ
私たちはゲバラのTシャツ着る前に知らなくちゃいけないことがあると思うって
語りながら
あ、ゲバラの盟友、フィデル・カストロって知っとる?
ああ知らないの?
ちょうどよかった、今度話すときはスカトロって間違えるところが
掴みだからね、そこんとこよろしくって
いいながらゲラゲラ笑った
リアル給食のおばちゃんやったことを思い出すし
嫌で嫌で仕方なかった行動を上書きする記憶を得て
朝起きて布団を畳み
そしてヤカンにお茶を沸かすところから
私の旅をなぞる旅が始まるようになって
日常の中に、日常を共にした非日常の出会いが入り込んで混然一体
カオスが生まれて
とても居心地がよくなった
インドがそうなのだけど
私が累積記憶で出来ているとしたら
1回でかなりのスペースを上書きしていく
パワープレイな体験があって
それは1回で必要にして十分で笑
日常に新しい意味を塗り替えていく
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