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台風とバックパッカー再び

三泊四日分の荷物を背中に詰めて
朝5時前に起きて
台風にベクトル向けるみたいに列車に乗る

何時の電車に乗るのと聞かれて
6時半と答え
げ、まるで一日を少しでも有効に使いたいからって海外旅行行くみたいやん
ただの国内旅行やんと
娘らに突っ込まれるけど

バックパッカーの朝は早くなければならない
働く人が動き始めるよりも前に
朝日が昇るよりも前に
次の街への移動を始めなくっちゃいけないんだ
日が高くなって街に人が溢れてから動き出すなんざあ
バックパッカーの風上にはおけない苦笑

そう
旅なんだ

別に遠くに行く旅が最上級だとは思わないし
バックパッカーが旅のヒエラルキーの肉食獣だとも思わない

けれど

ひょんな偶然がいくつも重なって
一番はマネカれているという例の勘違いが発動したからなんだけど

私も誰のことも知らない人の中
誰も私を知らない場所で
何十年も生きてきて
ジャラジャラぶら下げてしまったタグを外しに行く
何をするのかもわからないし
そもそも今の自分にそんな風に胸襟を開くことができるのかもわからないところに

行く

やっぱりそれは旅の醍醐味で
うまいもん食って
きれいな景色を見に行くのとは
違うって言いたいトコだけど

もちろんそれも
別の言い方をすれば
見たことのないものを見たいと思って
やはりサイトをシーイング
(ルー大柴さん風に)
見ることを目的にしているんだから
本質的には大同小異なんだけど

ひとりで
看板なしに
お名刺なしに
赤毛のチコですって
ジャスト・ミー
ゼロから視線を交わして

勝手の知らないひとん家の台所に並んで
フィリピンの女の子二人と夕餉の支度
長期滞在最早スタッフと宿泊客の境界をなくした青年とふたり便所掃除しながら両親から受け継いだ食の好みの不思議を語り
ベッドメイクしながら
チコちゃんは年齢のこと気にしてるのかなって、そんな気がするんだけど閉経とか辛い?
って一回り上の人生のパイセン尋ねられて
普段人に尋ねるばっかりだもんで
聞かれるとドギマギしちゃって
そんなふうに見えるようなこと口にしてるんですね
自分では気づいてませんでしたけど
拘ってるんですねえと
シンミリしたり

なんかまだまだ皮被ってんなあアタシって

ゲストハウスのフリした
街に暮らす人に
安心して自分のことを表現できる場を作りたいと
詩人が始めた場所に
押しかけ女房
やってきた







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