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長期記憶に釣り糸を垂れて シチリア編

方向音痴は音痴なんだけど

プラスして見切り発車気味で

迷子は想定内で既定路線なのもある

つまり確信犯の迷子だ。

多分絶対に迷わないようにしようとすれば、迷子率は下げられると思う。でも全くその気はない。

一番面白かった迷子は

学生時代、バックパッカーで一ヶ月、イタリアをシチリア島から北上縦断したときのこと。

旅の相棒は、ニューシネマパラダイスのファンで、私はモモのファンで、2人ともシチリア島に行ってみたかった。(出発地がシチリア島だったから、今思い返すと、旅の目的をかなり早い段階で達成するという、稚拙なルート取りだったが、若さはそんな小さなことは気にしないのだ)

ローマから州都パレルモに飛び、列車でシチリア島を巡る。まあ、列車も時刻表通りに来やしないし、ホームが変わるなんて日常茶飯事過ぎて話題にもならない。でも、パンクチュアル女子には一大事だ笑その度に軽くパニクる笑

なんとか、モモのモデルになったという円形劇場のある街、シラクーサに、アグリジェントを経由して向かう列車にのる。いや、乗ったつもり。

後方に飛び去る景色を眺めながら、やっとここまで来たと感慨に耽る。駅で買ったシチリア名物のアランチーネなんか食べ始めちゃってご機嫌さんだ。

しかし、なんか変だ。通過する駅名がちがう。まさか、反対方向行きに乗ったか?

イタリア人の車掌に身振り手振りで、シラクーサに行きたいこと、この列車は確かにシラクーサに行くのかと必死の形相で尋ねる

ーマンマミーヤ!アグリジェント!アグリジェント!この汽車はアグリジェントには行かないよ!日本のお嬢さん!カピート?反対方向だよ!

多分そんな感じ涙 イタリア人車掌が興奮しはじめ、何やら運転室とゴチャゴチャ目の玉ヒンムイテやり取りをし始める。

うわーヤバいなあ、間違えちゃったみたいだ。次の電車何時間後だっけなー今日中にリカバリーできるかなあ

走馬燈のように不安が巡る

ーシー!シー!(イタリア語のイエス)車掌さんが満面の笑みを浮かべ戻ってくる。身振り手振りの説明によると

5分後に反対方面の列車とすれ違うことになっている。

だから、お前たちは、この列車を降りて、アグリジェント行きに乗り換えろ!どうだ!万事解決だ!

みたく言ってる。マジ?駅じゃないところで、列車2本止めるって?そんなことしていいの?許可とか?え?

半ばパニックになりながら、ホラホラと背中を押されて、線路に降りて反対方面から来る列車を待つ。

ポッポー?汽笛は鳴ったか、鳴らなかったか忘れたけど、この際だから鳴ってもらおう笑

向こうから走り来たる列車はドジなジャパニーズガールズ2人を前にピタリとドヤ顔で止まり、運転室から乗りな👍とジローラモオジサンが笑う。

ーグ、グ、グ、グラッチェ!

慌てて列車に乗り込む。これが結構キツかった。デカイリュック背負ってるし涙

はあ、と

さっきと逆に景色が背景に去るのを見ながら

安心して眠くなる笑

すごいな。イタリア人。日本では考えられない。個人の裁量と判断とおおらかさ。だって人間運ぶために走ってるんだぜって。人間中心、人生中心、何を真ん中に据えて生きるか、見せてもらった気がして、30年近く前の記憶なんだけど、忘れられない。



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