フランケンアカガネの開頭記、その2
■ふたたび自己紹介から
はじめましての人は、はじめまして。そうでない方は、やあどうも。三割なほら吹きおじさんの銅大です。
SF作家やゲームデザイナーなどの文筆業を営んでいる59才です。
今回は、脳腫瘍と開頭手術のその後についてです。
事実を元にしてはおりますが、私という主観フィルターを通しており、内容はフィクション寄りです。そのため、記事内の場所や名前はA病院やK医師となっています。ご了承くださいませ。
■抜糸、そして日常生活への復帰
2月7日:入院。
2月8日:手術。
2月16日:退院。
日々の石鹸つけての洗髪を欠かさなかったことで、感染症もなく、抗生物質の点滴も最低限ですませることができました。
9日間の入院で、退院は早かったとはいえ、頭にはまだスキンステープラーをパチパチはめたまま、フランケンシュタインのような状態での退院となりました。
2月21日:一回目の抜糸。
2月28日:二回目の抜糸。
なお、二回目の抜糸時に、K医師から、退院前日の2月15日に撮った造影MRI画像をみせていただきました。最大6cmの大きな脳腫瘍(良性の髄膜腫との診断)があった場所には、液状のものが満ちており、圧迫された左前頭葉が、じんわりと戻りつつある様子も伺えました。
私が、今後の生活で注意することはありますかと聞くと、K医師は笑顔で答えられました。
「日常生活に、制限はありません」
飲酒・喫煙などの嗜好品も。
スポーツやサイクリング、サウナなどの活動も。
バイクや車の運転も。
特に控える必要はないとの指導でした。
それを聞いて、私はみぞおちの辺りが、すうっと軽くなりました。自分がこれほどに安堵している、つまり、それだけ緊張していたことに、かえって驚いたほどです。
一月末。脳腫瘍の診断と、開頭手術の決定時には、場合によっては麻痺などが残って、杖をついて生きる結末も脳裏にありました。
普通に暮らしてよいとの診断は、まことに、ありがたいものでした。
なお、再発の危険はゼロではありません。
半年後の8月に、MRI検査の予約をしました。これで問題なければ、脳腫瘍まわりについては、まずは一安心です。
■快気祝い
3月5日無事に退院できたことを祝い、広島市胡町にある割烹料亭ひぐちで、家族と快気祝いをしました。
母と妹に祝ってもらい、嬉しかったです。
うっかり写真を忘れていましたが、先付けと、コース料理の間に、魚の煮付けが入っております。
ひぐちは、亡くなった父の代から懇意にさせていただいており、祝い事で、たびたび、お世話になっております。
快気祝いのランチコースも、本当に美味しく、素直に味わえる幸運を、しみじみと感じました。
■入院で役立ったもの
スマホです。
新型コロナ(COVID-19)のせいで、入院中のお見舞いには制限があります。
法律上は5類感染症に移行したとはいえ、新型コロナ(COVID-19)の危険がまだ残っているのはしかたありません。オーストラリアで野ウサギ駆除に粘液腫のウィルスを使った事例から類推して、新しい病気とヒトがバランスを取るまで、三世代から四世代、120~140年と息の長い時間がかかります。
そこで、見舞いの代わりにスマホを用いた連絡です。
このおかげで、ずいぶんと気楽に入院中をすごすことができました。
LINEを使えば、通話だけに比べて、忘却防止のメモも一緒にとれます。開頭手術で意欲が減退している時でも、スタンプだけで無事を送れるのは、助かりました。なるほど。これは流行るわけです。
参考文献:
ウィリアム・H・マクニール『疫病と世界史』
■これからの人生の使い方について
今年、私は還暦(60才)を迎えます。
江戸時代の信州横内村の宗門人別改の記録では、この年齢まで生きられるのは、17世紀で7%。18世紀でも14%しかいなかったそうです。己が一般に老人と呼ばれる年にまで生きられたのは、素直に寿ぐべきでしょう。なお、2022年の調査では、今の日本で60才以上は推計で4,263万人と人口の34%で、珍しくありません。
よい時代になりました。‥‥心身ともに健康であるならば、ですが。
今回の脳腫瘍手術では幸運でしたが、サイコロを振り続けるということは、いつかファンブルを出すということでもあります。
日常生活で調子に乗って病気や事故、災害で、健康が奪われないよう、健康に関するサイコロ判定を、できるだけ避ける人生を心がけたいものです。『死を忘れるな』です。
また、お世話になった家族や友人。K医師やJ病院の方々。ご心配をおかけしたX(Twitter)のフォロワーの皆さんにも、何かの形で恩返しができぬものかとは思います。
特に母には、あわや逆老老介護の心労を負わせてしまい、息子として面目次第もありません。
今は元気で、週に二回も友達と鈴ヶ峰に登る母は、1939年生まれで今年は85才になります。中学進学で広島大学付属福山分校の図書館に入った時に、何万冊もの蔵書を前に
「ここにある本、全部読むぞー!」
と、『本好きの下剋上』の主人公のマインのような意気込みをみせたほどの活字好きです。
なんとか健康を維持し、母を見送るまで頑張らねばと思うしだいです。
参考文献:
鬼頭宏『文明としての江戸システム』(日本の歴史19)
香月美夜『本好きの下剋上』
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