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小説新人賞に応募し続けるということ

3月27日、『小説すばる新人賞』に応募した。よく覚えてないけど、2年ぶり7回目かな? 

7回か。(遠い目)

もう1カ月以上過ぎてしまったけど、直後の雑感を記録として書きます。

誰に頼まれたわけでも強制されたわけでもなく、ただ自分のために週末と夜を小説書きに捧げるって酔狂だと我ながら思う。

この2年は同居人がいたので孤独は感じにくくなったけど、過去5年ぐらい、独り暮らしで年末ぐらいから会社以外の人に会わず飲み会も行かずひたすら架空の話を考えては文をこねくり回して推敲して梗概も書いて、なんて、よくやってたよなあ。

ただ、自分はパソコンに向かって文こねくり回す自体が心癒やされる時間なので、いつの間にか心の支えになっていたんだなあと。特に自分は会社がストレスフルなので、嫌なことがあるたびにますますポメラに向かっていた気がする。

ファイル日付で振り返ると、今回は去年の5月ぐらいから書き始めていた模様。ちょうど新型コロナで世の中がテレワーク、ステイホームモードだった頃。「この時間を利用しない手はない」とは思ったかもしれないが、実際コロナ前に比べて長く書けていたかはよく分からない。テレワークも結構働き過ぎちゃったりするので、メリハリがつけにくかった。

今回は初めてポメラDM200で執筆した。これは大変良かった。持ち運びしやすいし、パッと開いてすぐ書けるし、何より家のどこででも書ける。ソファに座りすぎて腰が痛くなった時は、布団で寝ながら書いてた。1ファイル10万字っていうのがネックだったけど(結局17万字ぐらいになったので2ファイルに分けた)。

意外と難儀なのが、提出準備。「40字×30行で縦書き印刷」って、難易度高くないすか。ただ、ダテに年数だけはくっていない。ポメラ前は私はずっと「O's Editor2」を使っていて(シナリオ台本モードなどもあるエディターソフトなんだけど、これの原稿用紙モードが使いやすい!)、ここに「40字×30行 原稿用紙」設定を保存してあった。最後はポメラで書いたテキスト全文をこっちにコピペし(なぜか3点ダーシの変換がうまくいかず、手打ちで直すハメにはなったけど)、さくっと印刷できた。

夫の応援にも後押しされた。「小説家なんていつまでも夢みたいなことを」などと言わないどころか、3月の締め切りを前に日に日に仏頂面でろくに口も利かず、会社から帰って来るなり夕飯・入浴を秒で済ますや12時半、1時前までリビングの生活動線上にある(邪魔)一人用ソファに陣取りポメラに向き合うわたくしを、陰に陽に支えてくれた。

夕食づくりをはじめ家事全般を執り行い、テレビもワイヤレスイヤホンを購入して静かに視聴。土日はあちこちのファミレスで数時間書くわたくしに付き合い、Kindleに入れた『鬼滅の刃』全巻を2回通読しつつ静かに見守り……。

ある日のファミレスで、ドリンクバーでカカオリッチココアを手に席に戻ろうとした時、空いた店内でポツネンと『鬼滅の刃』を読む夫の姿が目に入り、なんてできた人、自分は何と恵まれた環境にいるのだろう、と、ホロリとしたものだった。応援してくれる人の存在の有難みを知り、とても感謝している。

と、ちょっと美談ぽいけど、一方で夫のとある性質が全開になったのもこの1~3月。その性質とは「鬼編集者キャラに変貌すること」

「今、それ読んでる時間あるのかな」
「あ、それは俺がやっとくからいい。あなたは全力で執筆に集中して」
「外行くのもいいけど、往復時間もったいなくないかな。家なら1時間余計に書けるよね。あ、別に俺はどっちでもいいよ。あなたの意思次第だから」
「今からなら2時間はいけるね。頑張って」(→自分は寝床に)

……うん。ありがたい。一人で向き合うのが当然の世界で、ライ○ップのトレーナーのような人間がそばにいる。結果として「ちょっと息抜きしようかな」と揺れかけるわたしを一人ソファに引き戻す効果を確かにもたらしていた。

しかしイライラは募る一方で。

自分のペースを乱されたような、「あなたは意思が弱い人間。俺がいないと」をグイグイ押しつけられたような気がして。

たまる睡眠不足と進まない執筆、増す日中の仕事でイライラを募らせるわたくしはこれらの発言が勘に障り、家事全般をやってくれている彼に感謝はしつつも怒りをぶつけるのだった。「じゃ、やめちゃえば?あなたが決めてやってることでしょ?」とまたあおってくるのも、ムキ~となり。。

ただ、確かに勝手に自分の都合に巻き込んでいるのは私。理不尽な思いをしているのは彼の方で、締め切り1週間前ぐらい、道筋が見えてきた頃に「打ち上げはどうしようか」という話をしたら「俺も打ち上げたい。俺だって……いろいろ、溜まってたわけだし!」と心の叫びを吐露していたので、当たったりして悪いことをしたと思いました。

さて、最後に。コスパがどうとかいう時代にこんな生産性のない酔狂なことを何年も続ける意味。人それぞれと思うけど、私は提出した瞬間の爽快感につきる。

何年か前に出した後、その足で六本木に行き、青山ブックセンターに広がる本棚を隅々まで見た時の感動を私は今でも思い出す。

今回も、近所のポストに入れて、夫と近くの川まで散歩に行った。ちょうど咲いていた桜の美しかったこと……。

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その後、工業地帯に入ってしまい迷子になったけど、何もかもが楽しい。もう帰ってから書かなくていい。推敲しなくていい。好きな本も漫画も読める。映画館にも行ける。受験生の雰囲気をいつまでも味わっている感じというのか。確実に私の生きるメリハリになっている。

一方で、これはこれで充実しているんだけれど、いつまでも自己満足ではいけないな、何かやり方を変えなければいけないのかも、とも思う。

そして。書くことは自己と向き合うこと。全国で千何百人、他の賞も入れればもっともっと、同じ時期に同じように〆切目指して孤独に自分と向き合っている人たちがいる事実に勇気をもらう。

お疲れさまでした。

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