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小説【続・僕はもう一度キスをした。】


何故…

 深夜、突然ケータイが鳴り出した。
 寝起きでもその内容は直ぐに理解が出来、僕は急いで病院に向かった。
 ハァ、ハァ、ハァ…。
 走ってる間、誰かにぶつかった気がする…。
 ハァ、ハァ、ハァ…。
 息が切れるほど走った。

 ドアの前で息を整え、ドアを開けた。
「やぁ、来たよ」
 沢山のチューブが身体のいたるところに付けられ、細く開けられた真由の瞳と目が合った。
「遅いよ…。ずっと、待ってた、んだよ…」
 酸素マスクごしで、弱々しい小さな声だった。
「ごめん…」
「うん…」
 真由は引きつりながら口の端を持ち上げ、笑んだ。
 僕は椅子に座り真由の小さくて冷たい手を掴んだ。
「最近、眠れてる?」
「うん。大丈夫…」
 下唇が赤く腫れていた。
 痛みに耐えるために、噛んだのかもしれない。
「そう…。でも目にクマ出来てるよ」
「ホント?」
「あぁ。そばにいるから寝たら?」
「やだ…」
「何で?」
「何でも…」
「そりゃ困った」
「じゃ、目が覚めた時いてくれる?」
「あぁ」
「ホント?」
「絶対…」
「じゃ、少し、だけ、寝るね…」
「あぁ、おやすみ…」
 僕は真由の手の甲にキスをした。
 じっと僕を見つめたまま真由はゆっくりと目を閉じた。

 嫌だ…。

 それから直ぐピー--と心肺停止を告げる甲高い機械音が部屋中に鳴り響き僕は母親を見ると軽く首を横に振った。

 僕は静かに病室を出て待合室に行き、椅子に座りながら真由のように下唇を噛み声を殺して泣いた。

 何故、助けてやれない…。

≪end≫




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