フシギナパラダイス 3話 不思議な傷 1/8【期間限定無料公開】

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そこは暗闇の室内である。

しかし、なぜかその室内から雷の音ながり、光が溢れた

「ふふ」

「ふふふふふ」

「ふふふふふふふふふふ」

そしてその部屋からは、少女の不気味な笑い声も聞こえた。

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「私は夢でも見てたんだと思う。」

下校中、私は足をピタリと止め、近くを飛んで付いてくる鳩に向かってそう告げた。

「なんです突然。」

「だって、あんなことがあったから、もっと頻繁にいろんなことがあるのかなって、結構身構えてたんだけど…もう一週間何もないじゃん」

光星くんが鳩の姿で喋ってくれるおかげで、あぁ夢じゃなかったんだ…と思い出せるけど、そうじゃなければあの一件は入学式に見た白昼夢のような出来事だったようにしか思えない。

そのくらい、静かなのだ。

「あんなに嫌がってた割には、積極的なんですね…でも別に彼らだって毎日やってくるわけじゃないですよ。力も回復させないといけませんし。限りがありますから。何もないならないでいいじゃないですか、平和で。」

「確かに平和で結構だけど、せっかく色々ありえないこと受け入れて、やる気出して気を引き締めたのに、平和ボケしそう」

「…でしたら一緒に他の生まれ変わり探すの手伝います?」

「え?他の生まれ変わり?」

神様の生まれ変わりって、私だけじゃないの?

私は光星くんにキョトンとした顔を見せる。

ちゃんと察したようだ。

「…最初にちゃんと説明しましたよ、何人か選んだって…」

「ごめんごめん、あの時は半信半疑だったから…で、何人だったっけ?」

私は胸の前で手を合わせ、軽く謝罪する。

その様子に呆れてため息を吐くと神様は指を折って数え始めた。

「えーっと、最初に…地上に降ろされた初代生まれ変わりがのがアマテラス入れて計6体で、現在こちら側がシナツヒコ、カグヅチ、タカオカミ、ツクヨ…」

光星くんが神様の名前らしきものを読み上げてる最中、

ちゅどーんという、大きな音ともに振動が伝わった。

「うわっ!」

「な、なんですか今の音!襲撃ですか!?」

光星くんがそう思うのは仕方がないこと、だって自信だったらあんな変な音はしない、でも現時点で平和なこの日本に爆弾が落とされるようなことはまずないはず。

しばらくすると、煙が上がってきた。

それは…うちのある方角だった。

それでようやく合点がいった。

「…多分…そんなに心配いらないかな。」

「何をいってるんですか!あんなに煙が上がってるんですよ!接待被害者いますって!僕行ってきます!」

青ざめた光星くんは、文字通り飛んで煙の上がっている方へ向かって行ってしまった。

私の制止を聞くことなく。

「…まぁ、確かにいつもより大きいかも…様子くらい見てこようかな。」


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予想通り。

煙は自宅の隣から上がっていた。

モクモクと真っ白な煙が。

門の外から本来見えるはずの庭と二階建ての建物は一切見えなかった。

そしてそこから少年の太めの叫び声が聞こえる

「ふんぎゃあああ」という、奇妙な叫び声が。

その様子に光星くんは怯えきっていて、早く早くと私を急かした。

「ゲホッゲホッ…今日は一段とひどいな…」

私は煙の元となっているであろう方向に咳き込みながら足を踏み入れる。

すると、そこには口にガムテープ貼られ倒れた椅子にぐるぐる巻きにされ縛り付けられている少年が「もがもが」と言いながらその縄から逃れようと必死だった。

その少年は…知っている人物だ

「ちょ、心矢…どうしたの!?大丈夫!?今日は何されてるの?」

私は急いで駆け寄って縄を外そうとする…が頑丈で解けない。

光星くんはこの状況に驚いた様子で

「あの、これ人の仕業ですか?だったら、然るべき組織に連絡を…」

と提案した

普通だったら、そうするべき事案である。

でも警察沙汰にしたくない。

なぜなら、身内であるうちもただでは済まないからである。

知ってる相手だし…

「その前に直接本人と話してみる…なるちゃん!なるちゃーん!どこにいるの!?」

私は奥の方にいるであろう彼女の名前を呼んだ。

そう、この私の家の隣から大きな煙を出しているこの家は、幼馴染兼従姉妹のなるちゃん…『杉野成子』ちゃんの家なのである。

しかし、その本人の名前を呼んでもなかなか出てこない。

「おかしいな…いない…わけないよね…心矢、なるちゃんはど…」

「あらあらあら、ダメよ触ったら、今繊細な実験中なんだから。」

ようやく出てきた彼女は黒いつなぎ姿だった。

やはり何か今日は機械を作ってるらしい。

「また大掛かりの機械だね…何作ってるの?」

「あら〜それは企業秘密よ〜完成したらおしえてあげるわね♪」

どうも奥の方にある大きな機械が爆発した原因を探っているようだ

爆発したということは、おそらく失敗ってことなのだろう。

なるちゃんは首をかしげる

「おかしいわね…爆発してるのに、起動はちゃんとしてるし…故障箇所も見当たらない…作動自体は問題ないってことかしら…

心矢、なんか変化あった?」

さっきは繊細な実験中だから触るなと注意したなるちゃんだったが、実験の効果を知りたいのか、口に貼っていたガムテープを思いっきりペリッと引き剥がした。

すると

「いやあああああああああああああああああああああああああああああああ」

と、心矢にしては高めの声で悲鳴をあげた、まるで何かに怯えているようだ。

「ちょ、大丈夫?心矢どうしたの!?」

これは普通じゃない、早く止めさせないとと、なるちゃんに提案しようと振り返ると

「根性ないわねぇ…このくらい耐えなさいよ」

なかなかに鬼畜の所業。

これは私が何言っても聞かないだろうと、喉まで出かかっていた言葉を飲み込んだ。

でも、一体心矢は何に怯えてるのか…

すると

「いる!そこに!なんか!」

と話し始めた。

「ん?」

私となるちゃんは心矢の視線を追った。

その視線の先にいたのは、鳩姿の光星くん。

これに怯えてるってこと?いや、でも、鳩姿の光星くんってみんなに見えるのが普通で…怯えることは何もないはず…

現になるちゃんは

「鳩がどうしたっていうのよ。公園にいくらでもいる鳩を今更怖がってどうするのよ」

と心矢に言っている。

心矢は何とか説明しようとしているも、装置のせいなのかうまく説明できていない。

「だ、だだだだ」

というか、痺れているのか口がうまく動いていない。

「な、なるちゃん…一回止めた方が…」

「大丈夫よ、死ぬような設定にはなってないもの」

ケロリと真顔でそういうけど、この家の庭からモクモクと煙が湧いている様子は、とても大丈夫には見えない。

説得力は0だ…けど…

「よし、もう少し調整してトライしてみるか。」

本人はやめる気は無いみたい。

「あ、ルイちゃん暇なら手伝ってもらえる?それか実験」

「ううん、やめとく。帰るねバイバイ。」

私は心矢の呼び止める声を無視して家を出た。

ごめんね心矢、私に彼女を止める力もなければ、立ち向かう勇気もないの。

その一部始終を見ていた光星くんは私の肩に乗ると少し怯えた様子で

「すごい方がお知り合いなんですね…」

と呟いた。

神様を怖がらせるって、逆にちょっと感心する。

「どのようなご関係で?」

「え?あぁ…」

そういえば、光星くんは二人を見るのは初めてか。

まあ見えない人に見えない人を自分の知り合い紹介したりしないから当たり前なんだけど、光星くん的にはきになるよね…こんな地獄絵図見たら。

「二人とも幼馴染だよ。なるちゃんの方は従姉妹でもあるけど」

「ほぅ…」

光星くんはなんともいえない眼差しを私に向けた。色々誤解されたくないのでわざわざ発表したくないしすることはないんだけど、今後何かのきっかけでどうせ知られるのであれば正直に言った方がいい。

「で…あの方は何を?」

うん、次はそういう質問になるよね。

「うーん…なんか作ってるんだろうね…その実験台になってるんじゃないかな」

「実験?」

「そう、なるちゃんは機械とか薬作るの好きなんだけど、年々作る物が複雑になってて、途中で試作品を作って問題無いかチェックするようになったんだけど、その実験台が8割型心矢でね…」

ここ一年はなるちゃんが何かを作るたびに、翌日心矢がボロボロになっていることが多い。

そしてそのうちの殆どは、その成果が見られず完成品を拝むことはない。

まぁその分、完成品見せてもらえるときは結構使える物だったりするんだけど。

「あの…良いんですか?助けなくて」

「うん、私には手が追えない。」

そう言ってなるちゃんの家から一歩出た後、地響きと悲鳴が聞こえた。
これはまだまだかかりそうだ。