「once in a blue moon」 新保博久『名探偵登場――日本編』:創作のためのボキャブラ講義06

本日のテーマ

題材

 そこで思い出されるのは、竹に花が咲くという、珍しいことの喩えに使われる成句だ。英語でそれに相当するのは、'once in a blue moon'。すなわち、アメリカのTVシリーズ「こちらブルー・ムーン探偵社」のネーミングを”翻案”したものではないかと、私は勝手に想像している。

意味

once in a blue moon
 極めて珍しい気象現象になぞらえ、めったにないことを表す慣用表現。


解説

作品概要

 この記事の読者は自分が次に読む本の情報をどこから仕入れているだろうか。現代ではSNSが一般的だろうが、ネットがあまり普及していない時代は雑誌や新書のブックガイド的なものが役に立った。あるいは小説の解説で紹介された本を読んでみたりとか。

 新保博久は言わずと知れた日本推理小説業界の有名評論家である。氏が1995年に用意した『名探偵登場』は総勢73名の名探偵を紹介するブックガイドである。一応Amazonのリンクは以下に用意するが、手に入れるのは難しそうなので地元の図書館を探した方が確実かもしれない。

 さて本日のテーマとなる単語が登場したのは紹介71人目、藤田宜永の手による探偵竹花の紹介である。ハードボイルド探偵にありがちなこととして、名前が一部しか分からないこの探偵はややノリの軽いところのある探偵でもあるようだ。

言葉について

 英語の慣用句と日本語の慣用句。ともにめったにない実例を用いることで、極めてまれな様を表すものである。

 英語の方はそのまま月が青くなる様と、ひと月に二回満月を見られる現象のことを指すという説がある様子。いずれにせよ珍しいことである。

 竹に花が咲くのは120年に一度とも言われ、どうやら単に珍しいだけでなく凶事を知らせる象徴でもあるようだ。竹花と書くとハードボイルド探偵の名前としては少し華やかだが、逸話を聞けばいかにもそれっぽい。

情報

作品情報

新保博久『名探偵登場――日本編』(1995年8月 筑摩書房)

リンク


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