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別府に帰りたい…

大分からグループホームに入居された利用者さんが帰ろうとします。

先日、大分県別府市から飛行機とタクシーを乗り継いで利用者さんが入居しました。
ご家族は、絶対家を離れないというご本人をなだめたりすかしたりして連れてきました。
飛行機を1便乗り過ごしホームに到着したのは、予定より5時間遅れて17時30分。

夕飯はお寿司とお酒を用意して、
ご家族を交えおもてなしの宴会です。

ご本人は、楽しかったらしく満足気でしたが、
ご家族が帰ると、
「なしかえ息子がおらんの?」
「帰るのは良い。でも何で一言母親に言ってから帰らんの?」
「東京?そんな訳ないやろ」
と、とりつく島もありません。

気をそらそうと
他の話しをすると
会話は盛り上がるのですが
最終的には帰る話しになります。

本人の物を置いて安心してもらおうと
ご家族が写真を持ってきてくれたのですが、
「何で人様の家に旦那や子供の写真を持ってくるのだろう。恥ずかしい」
となります。
ホテルか何かだと思っているので、
言っている事はその通りです。

「玄関どこ?」と言うので
一緒に廊下をぐるぐる回ったりして胡麻化していましたが、
少し私が離れた際に、他の利用者に玄関の場所を聞いて外に出てしまいました。

外に出てしまったら、もう引き留める事はできません。
家に帰るつもりなので、
タクシーを拾って帰ろうとします。
車道に出て止めようとします。
危険と感じて、後ろから着いていくも
「邪魔せんといて―」
「あなたは帰ってください」
となってしまいます。
自分の家にタクシーを拾って帰ろうとするのに
後を付いてくる奴がいたら邪魔だと思うのは当然です。

結局、息子さんに電話して来てもらい
ホームに連れ帰ってもらいました。

息子さんが
「ここは東京だから帰れない」
と言っても
「そんな事ない。あんたはなんでそげな嘘つく?」
と、全く信じません。
押し問答になってしまいます。
息子さんが悪いみたいになっているので、夜勤の女性職員が話しを聴き、
その間に息子さんには帰ってもらいました。

すでに0時過ぎ。
お部屋で1時間程お話しを聴き
楽しくなってきたようで
「あんたも寝ぇ」
と言うので私は寝ましたが

本人は、居室をお部屋だと認めず
畳で横になっただけで
結局、一睡もしませんでした。

開けた朝は玄関まて行き
夕方はまた外に出て行きました。

夕方は、付いて来る私を不審者だと思い
交番に行きました。
チャンスと思いおまわりさんにお願いし、
ホームに連れ帰ってもらいました。

本人の身になって考えると、
ここに居る理由がありません。
自分の家に帰りたいのです。
帰るのが当たり前です。


ホームに来る前から、
別府を離れるのは本当に本人の意思を大切にしているのか
という葛藤がありました。

ご家族もそうだと言っていました。
家から出たくないと抵抗する姿に
何度も迷ったそうです。


でも、
実際にホームに来て
ご様子を見て
ホームに来たのは悪い選択ではなかった
と私は思っています。

なぜなら、
一緒にご飯を食べていたり
職員や他の方とおしゃべりをしていると
ところどころで
「独りで寂しかった」
「人と居ると楽しい」
とおっしゃるのです。

友達と会合していたのも
公民館でカラオケや生け花をしていたのも
どうやら、少し前の記憶のようです。

実際には、恐らく
ここ最近は
ずっと独りだったし
風呂にも入っていなかったし
趣味もやってなかったようです。

そこに
本人が言うような昔の人に頼られる姿はなかったように感じます。

だから、
ホームで
そのような関係性を作っていこう
本人のやりたい事をできるようにしよう

改めてそう思いました。

ただ、当面は
本人は間違いなく
「ただ、ただ、帰りたい」
という強い気持ちでいるので、
外に出る日は続くでしょう。




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