この写真を

梅雨の時期に入り自宅にいることが多くなった

私は久々にアルバムを引っ張り出してきた

「あら!ねぇあなた、この写真覚えてる?」
「うん?何の写真だい。」
「ハート形のアジサイの写真よ。」
「俺には蜂の顔に見えるぞ。」
「もぉ、この時も同じこと言ってたわよ。」
「本当かい?」
「本当よ。もう四年くらい前かしら。」
「八年前じゃなくて?蜂だけに。」
「それもこの時言ってたわ。私は鼻で笑ったわ。花だけに。」
「あちゃ、上手い!一本取られた。」
「やめてよ恥ずかしい。」
「ははは。ところでこの写真はどこで撮ったやつだい?」
「これは旅行で行った長崎での写真ね。あなた覚えてないの?」
「うーん、カステラを食べた記憶しか…」
「もう。観光二日目に雨が降ったのよ。ちょうど梅雨の時期だったかしら。」
「あー、そうだったっけな。」
「ホテルに戻る途中に、あなたが見つけたのよ。『蜂の顔だ』って。」
「そんなんだったけな~。よいしょ。トイレ行ってくる。」
「はいはい。」

そうよね。四年も前の結婚記念日旅行覚えてないわよね。
この時ちょうど25年記念だったの。
旅行先であなたがこのハート形のアジサイをみて真面目に言った
『これは運命だな。君と出会えたことと同じだ。
この先も一緒に運命を見つけていこう。
このハート形みたいに、愛をもって。』
あなたは照れ臭そうだったけど、とても素敵な言葉だった。
そうね、私が覚えていればいいのよね。

「おっと、こんな所にお嬢様が。」
「もう、何ふざけてー」

振り返って目に入ったのは、綺麗な青アジサイ。

「…なんで?」
「すまんな、青しかなくて。それに丸いアジサイなんだ。」
「いえ…えっと」
「今日結婚して30年記念だ。こんなご時世だから旅行はできないから。」
「アジサイのこと覚えてなかったんじゃないの?」
「俺が運命を忘れるとでもいうのかい?
愛をもって君に接している紳士だぞ。」

あぁ。あの時の照れてるあなただわ。

「ありがとうございます。受け取らせてもらうわね。」
「うんうん、それでよしだ。よーし、何か映画でも見るかい?」
「そうね、カステラでも食べながらね。」
「え、カステラ?」
「もちろん。スーパーのだけれど。」
「十分だよ。30年も一緒にいれば、考えも似るもんだな。」
「そうですね。ふふふ。」

映画の結末はわからないけど、
私たちの話はハッピーエンドになりそうです。
それと、外はまだ梅雨は明けてないですけど、
私の梅雨は早くも明けました。

梅雨の時期も案外悪くないかもしれません。

今回も長くなってしまいました。
私もいつかこのような会話ができる相手を、
探してまいります。
私は梅雨の時期、少し気分が沈みます。
なのでこのような珍しいのを探してみようと思っています。

今回は「hanairoのきろく」さんの写真をお借りしました。
ハート形なかなか珍しいですよね。
綺麗なお写真ありがとうございます。

読んでいただきありがとうございました。

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