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徹底検証『週刊ダイヤモンド 2016年総予測』は当たったか?-世界経済&国内景気編-

毎年年末になると、経済雑誌各紙は来年の予測を特集します。興味深く読む人も多いでしょうが、果たしてその予測は当たっているのでしょうか?検証できるのが1年後になるのでなかなかそこまでしない人も多いと思いまして、経済誌の予測精度を検証していきたいと思います。

一つ一つ検証していくと膨大な量の記事になりますので、各回トピックを絞りたいと思います。今回は『週刊ダイヤモンド 2015年 12/26 ・2016年 1/2 新年合併特大号 [雑誌] (2016 総予測)』の中の、P32から始まる経済の予測です。つまり、2015年末ごろに予測した2016年の状況ですね。

なお本記事はシリーズ化していく予定です。よろしくお願いします。

為替編はこちらです↓


2015年はどんな年?

予測の検証を行う前に、その前提となる2015年はどんな年だったかを振り返ってみましょう。

まずアメリカ大統領について。トランプ大統領が誕生したのは2017年1月ですから、まだオバマ政権です。トランプは大統領選への出馬を2015年中に公表していましたが、ヒラリー・クリントンが最有力候補だとみんな思っていた頃です。

また日本を取り巻く経済情勢としてはTPPが挙げられます。2015年時点ではまだアメリカも批准をしていませんでした。TPPに積極的なオバマ政権下で批准できるかが注目を集めていました。日本はTPPに入る方向で進んでいましたから、関税がなくなることで自動車などの輸出が増えるのではないかと予測されていたと思います。

また日本では消費税が2014年4月に5%から8%にあがりました。この前後で駆け込み需要や反動減がありましたが、2015年には落ち着いていました。予定としては、経済ショックでも起こらない限り2017年4月に10%になる状態でした。(甘利経済再生担当相・TPP担当相(当時))

こうした背景を前提として、エコノミストの予測を見てみましょう。

1 世界経済

世界経済について週刊ダイヤモンドでは「景気減速リスク高まる2016年」としています。2008年のリーマンショックで日米欧で景気が減速したのを尻目に中国は当時のGDPの10%に当たる景気対策を実行。それが功を奏して中国は経済成長を実現、さらに原油需要が増加したことにより原油価格が上昇、産油国に好況をもたらしました。また米国が量的金融緩和を実行し、溢れかえったマネーが新興国に流入、景気を刺激してきました。これが2014年前の世界経済の成長パターンでしたが、中国の成長率も陰りが見えてきたことに起因して原油価格はピークの半分まで下落し、ロシアや中東では地政学的リスクもあらわになっています。こうしたことを背景として、2015年には低成長時代が訪れ、2016年以降もしばらくその傾向が続くと週刊ダイヤモンドは見ています。ビジネスにおいては、市場占有率を上げるために大型の企業合併が進んいるのは、大企業も低成長時代を見越してのことだとしています。

では実際の2016年の世界経済はどうだったでしょうか?IMFによると、2016年の世界全体の経済成長率は3.4%(2015年は3.5%)、先進国は1.7%(2015年は2.3%)、新興国・途上国は4.6%(2015年は4.3%)となっています。

新興国・途上国では0.3ポイントのプラスですが、先進国は0.6ポイントのマイナス、その結果世界全体では0.1ポイントのマイナスとなっています。

週刊ダイヤモンドは傾向を予測しただけではありますが、概ね的中と言っていいでしょう。

2 国内景気

続いて国内の景気、具体的には実質・名目経済成長率と消費者物価上昇率の予測を見てみましょう。これはエコノミストへのアンケートを週刊ダイヤモンドが載せています。

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著名な金融機関のおそらくトップエコノミストが行った予測を上記のようにまとめてみました。

では早速実績を見ていきましょう。

まず経済成長率(名目、実質)を見てみましょう。内閣府の統計をベースにしています。

2016年実質経済成長率は0.9%です。これは日本総合研究所の山田氏がドンピシャです。他の方も概ね近い数値ですが、ソシエテジェネラルの会田氏は1.7%ややポジティブすぎました。

そして次に名目経済成長率です。実績は0.7%でした。どのエコノミストもより高い予測をしていました。それもそのはず、次の消費者物価指数上昇率をみなさんプラスで予測していたからです。

消費者物価指数上昇率の2016年度実績はマイナス0.1%です。どのエコノミストもプラスで予測していますね。

なお、消費者物価上昇率の実績は総務省e-statから取りました。

ちなみに2017年度はプラス0.7%でした。2018年度もプラス0.7%ですから2%は未達ですね。なお、この記事を書いている時点では2019年度の結果は出ていません。予測したエコノミストでは最速2017年に達成するとした三菱総研の武田氏が最もポジティブです。三菱総研ホームページ内の同氏の活動を見ると、政府の分科会にも所属されているようですからどうしても政策主導側の予測になったのでしょうね。

最後の予測項目である、「日銀が追加緩和をするか」ですが、2016年度には2回実施しています。これは日本銀行のホームページにありますね。

追加緩和の予測ではなんと7人中6人が追加緩和しない、と予測しています。つまりハズレですね。唯一当たったのが第一生命総合研究所の新家氏ですが、2度やるとは思っていなかったようです。

エコノミスト7氏の予測に対して結果を追加した表を作成しました。

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これを見て、皆さんどう感じますでしょうか。正直、散々たる結果ですよね。

7名のエコノミストを寄せ集めてもこれですから。。。

これからも経済予測や未来予測の本や雑誌をウォッチして記事にしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

参考

IMF
World Data Mapper

内閣府 
2016年 I (平成28年8月26日)-世界経済の直面するリスクと課題-
2016年 II (平成29年1月12日)-先進国の低金利・低インフレ 中国の地域間格差-

総務省
e-stat

日本銀行
「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証

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