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cEDHを始める前に読んでほしい記事

先日の神決定戦、史上最高に激しく熱かりしカードバトルが繰り広げられ、僕が企画していた飲酒鯖でのライブビューイングも90人以上(!)の人にご参加いただくという非常に素晴らしい結果となりました。

僭越ながら事前解説などをさせていただいたので、神決終了後の皆さんの意見をTwitterでチラチラ見るなどしていたのですが、こんな声が。

「cEDH始めてみたい」

これほど冥利に尽きることは無いですね。自分が界隈の発展に少しでも貢献できたことがとても嬉しかった反面、心配なことが。

あまり言うと炎上しそうなのでたとえ話にとどめておきますが、初心者とやる柔道が一番危ないみたいなアレを想像してもらえればと思います。

【cEDH】神決直前!cEDH観戦メモ/秋風

これは僕が前回の記事で書いたことではありますが、このフォーマット、ある程度お作法がわかっていないと自分だけでなく、他人のプレイ体験にまで悪影響を及ぼす場合があります。

そんなわけで、今回はcEDH初心者指南、みたいな記事です。
目標は、「cEDHベガ立ちおじさんに詰められないプレイを」です。


1."c"EDHって?

まず、cEDHの"c"のお話からしていきましょう。

この"c"は"competitive"の頭文字で、この場合は「競技的な」という意味に捉えておいてください。
つまり、"cEDH"とは「競技的な統率者戦」のことを指します。

では、「競技的」とは何でしょう?

答えはとてもシンプルです。MTGにおける「競技的」とはスタンダードやモダンなどの2人構築と同じように、「メタゲームを理解し、その環境で勝利することを目的としてデッキを選択・構築したり、プレイングを高めること」であると言えます。

一度EDHに話を戻してみましょう。
EDHには、デッキパワーレベルという概念があります。

物議を醸すことも多い

「同じ志向を持った者同士でゲームをプレイしたほうが面白い」、という思考の元、不特定多数の人間の間で多人数戦を楽しむために作られたものですが、これは決してEDHにのみ通用する論理ではありません。
2人構築でもいわゆる「ガチファン論争」などと呼ばれる争議があるように、MTGの枠に収まらず、全てのカードゲーム、全ての対戦ゲームに適用されうる事項であると言えるでしょう。

つまり、デッキパワーレベルはデッキの志向性を示すものでしかなく、必ずしもデッキの上下、貴賤に関わるものではないと言えます。
2人構築で考えてみても、ガチガチの環境トップデッキと、ファンデッキが対戦したらお互いに求めるようなゲームは出来ないでしょう。
つまり、これはあくまで楽しくゲームをプレイするための棲み分けの指標でしかないのです。

ではその場合、「競技的」という志向はどのように解釈するべきでしょうか?
cEDHを募集するとき、飲酒鯖でも良く「8上で」というような募集の仕方がなされることがあります。統率者ごとのデッキパワーレベルの上下はともかくとして、果たしてそれは「競技的」でしょうか?
トップメタのデッキを使いトップメタのデッキと対戦することのみが「競技的」なのでしょうか?

答えはです。

少し前のスタンダードで「ジェスカイ変容」が、在りし日のモダンで「Super Crazy Zoo」が、黎明期のパイオニアで「タカオーラ」が。
他のカードゲームでも、「チューザビート」が。「シンクロダーク(9期)」が。

メタの隙間を縫った者たち

それまで全く注目もされていなかったデッキが、メタの隙間を縫い、大会で華々しい結果を残すことはあまり珍しいことではありません。EDHにおいてもそれは同様です。
先日の神決定戦で《厚顔の無法者、マグダ/Magda, Brazen Outlaw》が一位で予選を通過すると予想できた人は何人居たでしょうか?
《トレストの密偵長、エドリック/Edric, Spymaster of Trest》・《黎明起こし、ザーダ/Zirda, the Dawnwaker》・《敬愛されるレンジャー、ミンスク/Minsc, Beloved Ranger》が予選を突破すると予想できた人は何人居たでしょうか?

cEDHの目的は1つだけです。「勝利する」こと。

そのためにはどんなデッキを使ってもいいのです。
流行りのデッキを分析して、自分のデッキの立ち位置を理解して、勝利のためにゲームをする。それがcEDHです。
そうでなければ、《Timetwister》が、《Mishra's Workshop》が、《Bazaar of Baghdad》が入っていようがcEDHとは言えないですし、高額カードが入っていなくても勝利を目的にしていれば十分それは「競技的」と言えるでしょう。実際、神決定戦で8位の成績を残したミヤグニさんのリストにはデュアルランドが入っていませんでした。

いわゆる「高レベル帯」というイメージをこのあたりで一回取り払って、この後を読んでいただければと思います。


2.cEDHを始める前に

ちょっと上でなんかごちゃごちゃ言ってますが、「高レベル帯」のデッキは強いから「高レベル帯」に数えられてるわけで、とりあえず始めるときはネット上にリストも多く出回っているであろう流行りのデッキから使うことをオススメします。

オススメのデッキも後述しますが、デッキを選んだ後でも前でも、まずやらなければならないコトをいくつか書きます。


2-1.デッキの志向/最大値を理解しよう

cEDHで用いられるデッキは明確にゲームプランが設定されていることがほとんどです。

まずは、自分のデッキに入っているカードの効果をしっかりと把握し、どのゲームプランが自分のデッキにとって一番勝利に近いのかをしっかり理解する必要があります。

その際に参考にしてほしいのが、アーキタイプという考え方です。

①TurboNause(大量のマナ加速で早期に《むかつき/Ad Nauseam》を打つことを目指し、妨害なしなら2~3キルを最低ラインにしてプレイする)
②Midrange(TurboNauseを妨害してなお自分のコンボへ向かうだけのリソース獲得能力を持ち、ゲームが伸びた際も戦えるだけの持久力を有する)
③Control/Stax(自分以外の全てを敵に回しながら3人の行動を縛り続け、そこから抜け出そうとする敵の共倒れを狙い、縛っているうちに殴り切るか制圧しきる)

自分のデッキがこの3つのうちのどれに当てはまるのかなーということだけでも考えておくとこの後の作業がグッと楽になります。


2-2.キープ基準を考えよう

自分のデッキが得意なゲームレンジを把握できたら、次は理想のゲームに持ち込むためのキープ基準を考えます。
cEDHではほとんどすべてのデッキが3~4ターン目までには妨害なしならば勝利することが出来るポテンシャルを秘めています。
つまり、そこまでに見ることの出来るカードの枚数は99枚ないし98枚のデッキの中のほんの一部。しっかりとゲームに参加するにはきちんとしたマリガンをすることが大切です。

キープ基準を自分の中で明確に持つためには、1人回しをするのがてっとり早いです。
いけそうだな、と思った手札をキープして、妨害が無い前提で1人回しをしてみましょう。それで目標とするようなゲーム展開に持ち込めなかったのであれば、その手札はキープするに値しない手札であったということです。

まずはこれを繰り返して、自分の最大値を目指すパターンのキープ基準をしっかりと持ちましょう。
また、1人回しを繰り返すことで、リストを眺めていただけでは気がつけなかったカード間のシナジーに気がつけたり、搭載されているコンボに行けるかどうかの判断がスムーズに行うことが出来るようになるなど、いいことづくめです。

このあたりがしっかり出来るだけで、「ゲームできたな」感が上がるのでちゃんとやっておきましょう。


2-3.勝利に繋がるプレイをしよう

試合の前に「勝つプレイをするぞ~。えい、えい、むん!」と気合を入れてください。

cEDHに臨むマチカネタンホイザ

……えっと、冗談ではなくて、ここで言う勝利につながるプレイとは、主に妨害の撃ち方の話になります。

例えば、あなたが3ターンキルの手札をキープできたとしましょう。
ですが、自分より上の手番のプレイヤーが仕掛けてきたので、それにカウンターを撃つ。
自分が1ターン貰えば勝利できるという確信の下に行われたこれは勝つプレイであるといえるでしょう。

では、このような場合はどうでしょうか?
次の自分のターンに勝てる見込みは無い。だが、自分の手札には十分な妨害札がある。
自分の前の手番のプレイヤーが仕掛けてきた、となれば、ここに妨害を当てるべきでしょうか?

ここが少し難しい場面で、まずは卓を見渡してみましょう。
例えば、自分の下家にマナをたくさん構えた《トリトンの英雄、トラシオス/Thrasios, Triton Hero》デッキがいるとします。

《トリトンの英雄、トラシオス/Thrasios, Triton Hero》

このような場合は妨害を打たずに、トラシオスのプレイヤーに優先権をパスするのが得策と言えます。
しかし、下家がフルタップの非青デッキであればそのまま自分が敗北してしまう可能性があります。その場合は妨害を切ったほうが良いと考えることも出来ます。

これは相手の仕掛け=通ったら負けるものに対する対処なので比較的簡単なのですが、相手のアドバンテージ源や妨害札に対する対処は更に難しくなります。

この妨害の撃ち方も自分のデッキの特性をよく知っておくことで、何を妨害して、何をスルーするべきなのか、ということがわかってくるようになると思います。
ここが脅威度の測定と言われる大切な要素になっていて、これは経験によるところが大きいので追々身につけていきましょう。


3.初心者にオススメのデッキ!

ここまでcEDHを始めるにあたって必要なコトをいくつか書きましたが、何よりもまずはデッキのアーキタイプを把握することが大切であるとしました。

ここからはそれが比較的やりやすい初心者オススメデッキを紹介していきたいと思います。


3-1.《ロフガフフの息子、ログラクフ/Rograkh, Son of Rohgahh》+《愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット/Tevesh Szat, Doom of Fools》

行くでヤンス

☆神決定戦4位のしもっちさんの記事はこちら☆

詳しい回し方とかはここに全部書いてあるのでこれを読んでください(まるなげ)。

アーキタイプとしてはTurboNauseに区分されます。
キープ基準がはっきりしている上に、受けが広いので1人回しで学べることが多いです。
プレイングの言語化も↑の記事でやってくれているのでしっかりと読み込んでから回してみましょう。

しもっちさんのリストだと《死の国からの脱出/Underworld Breach》コンボが少し難易度が高めのものになっているので、《命取りの論争/Deadly Dispute》と《死後の一突き/Postmortem Lunge》を《研磨基地/Grinding Station》と《霊気貯蔵器/Aetherflux Reservoir》にすると前のめりになってコンボルートも簡単になります。

《死の国からの脱出/Underworld Breach》コンボ
①《研磨基地/Grinding Station》キャスト。自身が出たことによりアンタップが誘発。
②アンタップ前にマナファクトをサクりアンタップを解決。もう一枚マナファクトをサクる。(墓地6枚)
③《魔力の墓所/Mana Crypt》などのマナが増えるマナファクトを《研磨基地/Grinding Station》で出し入れし、デッキを回す。(墓地が3枚減って3枚増えるを繰り返す)
④《霊気貯蔵器/Aetherflux Reservoir》がめくれたら一度それを脱出し(墓地3枚減)、またマナファクト出し入れを繰り返すとライフが151点になり勝利。

コンボの練習も含めて強気にプレイすることを心がけましょう。


3-2.《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》

いくわよ

☆サンプルリスト☆

アーキタイプとしてはControl/Staxに区分されます。
ヘイトベアーを並べて殴り切るのがメインの勝ち筋になりますが、スタックスデッキの弱点として挙げられる「時間だけが過ぎていって脱獄されて負ける」という点を、ウィノータの火力の高さで補っている形になります。

キープ基準は3tウィノータ誘発を最低ラインにしましょう。
《魔力の墓所/Mana Crypt》+《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster》+土地2枚でゲームが出来るのでこちらも強気にマリガンすることが大切です。

どのヘイトベアーを出すか、というところが難しいデッキですが、基本的にチェインコンボの多い環境では《法の定め/Rule of Law》系のカードを出しておけば大丈夫です。

単色デッキがいる場合の《月の大魔術師/Magus of the Moon》や、マウントを取っているプレイヤーを3人で止めなければいけない場合の《法の定め/Rule of Law》系はそのプレイヤーを有利にするだけなのでやめておきましょう。

殴る順番は《むかつき/Ad Nauseam》系→マスデス撃ってきそうなやつの順です。
《法の定め/Rule of Law》ハマってるなら青系とマスデス優先。(《サイクロンの裂け目/Cyclonic Rift》のようなバウンスが強いので)

クリーチャーの配分とかは考えて作ってあるので、とりあえずこのまま回してみてください。

コンボらしいコンボは入っていないのですが、《オーラ掠りの魔道士/Auratouched Mage》+《憤怒の息吹/Breath of Fury》で(ほぼ)無限コンバットのギミックが入っています。


4.対戦しよう!

ここまでで対戦する前に必要な事柄は大体語りました。

後は対戦してみましょう。
身内でもいいですし、僕のよく遊んでいる飲酒鯖などのDiscordサーバーで高レベル募集をかけてみてもいいでしょう。

それでは、いってらっしゃい!






5.おかえりなさい

お疲れさまです。

結果はどうだったでしょうか?

どのような結果であったにせよ、1人回しでは得られない知見がたくさん得られたことと存じます。
ここからは、試合をした後にするといいコトを書きます。


6.反省会をしてみよう

反省会をする際、1人で出来ることと、卓の参加者と一緒じゃないと出来ないことの2つのやり方があります。

対戦が終わったら、積極的に感想戦をすることをオススメします。
自分の視点からだけでは見えてこなかったものが見えてくるでしょう。
その際には、自分が仕掛けたシーン、妨害したシーンなどで自分がゲームを動かすアクションを取ったが、自分の思うように行かなかった場合や、複数の選択肢が存在し迷っていた場面について他人の意見を聞くなどしてみると良いと思います。

感想戦が終わったら、1人回しで意識するべきこととして述べたキープ基準をしっかりと達成することが出来たかを確認するとともに、その時対戦したデッキに対しての自分のデッキの立ち回りをしっかり考えておきましょう。
EDHはカードプールが広すぎる上に、デッキごとに動きが独特なため、思考段階のみでは対策を想定することが難しいゲームです。なので、経験を積むことを意識して、次に同じ統率者のデッキとあたったときにどのように立ち回るべきかということを考えておくことをオススメします。
この立ち回りの部分は感想戦で聞いてみてもいいでしょう。


7.続けるために

EDHを勝利のためにプレイすると、非常に気分が落ち込んでくると思います。
なぜでしょう?

格闘ゲームのプレイヤーの間などで言われていることですが、人間勝率5割でも「勝ってるな」という感覚がないそうです。
6~7割を超えないと「勝ってるな」と思わないそうで、何なら5割のときには「今日勝てないな」とも思うそう。(要出典)

EDHに話を戻すと、このゲームの勝率は均せば25%。
先程の話に当てはめると、ほぼ毎日「負けてるなぁ」という気分で一日を終えることになります。

MTGに限りませんが、他の対戦ゲームよりも運の要素が強いカードゲームでは、結果よりも過程を大切にしたほうがうまくなると思います。

ついてない日でもしっかりプレイすれば、ついている日の勝ちをしっかり拾えるようになるということです。

cEDHの理論とは矛盾しますが、勝敗の数に一喜一憂するのではなくて、試合の内容にこそ注目するようにしましょう。

また、試合の内容をメモしておくこともオススメです。
デッキと着順、勝敗をメモしておくと、自分が何%勝ったのかを後から見返すことが出来ます。
感覚の話ではなくて、実数値として25%のラインを意識できるようにしておくと、気分が落ち込まなくて良いと思います。(負けてるなぁと言う日でも意外と25%は取れてたりする)

cEDHをやるのが嫌になったら一度離れるのも得策です。
カジュアルなEDHでも勝利しようと思うと結局意識することは変わらないので、むしろ知らないコンボやカードを知れるチャンスとして捉えることも出来ます。

初代統率者神の台さんも決してc一辺倒な人ではなくて、《モンスター見聞家、ヴォーロ/Volo, Guide to Monsters》で10種類以下のクリーチャータイプ限定の珍獣デッキで遊んだり、《黎明をもたらす者ライラ/Lyra Dawnbringer》で天使単ビートダウンをしたり、《秘密を知るもの、トスキ/Toski, Bearer of Secrets》でビートダウンからのコンボを狙ったりと、様々なレベル帯で遊んでいた結果《トリトンの英雄、トラシオス/Thrasios, Triton Hero》+《綱投げ、アキリ/Akiri, Line-Slinger》で栄光を掴むことが出来たわけです。
最後はビートダウンで勝負が決したわけですから、何が起こるかわかりませんね。

神の下僕

皆さんのペースでそれぞれのcEDHライフをおくってくれることを願います。

それでは今回はこの辺で。いつも通り疑問質問いちゃもんは僕のTwitterまで。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

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