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情報モラル 再考 #3       ~モラルも安全も安心もない情報社会で

 1 情報社会?
 2 誤解
 3 本来の姿
 4 ルールを知る
 5 歴史から学ぶ
 6 情報を守る
 7 情報を読む力をつける
 8 サイバー社会のクセを知る
 9 未来に


#3 本来の姿

 なぜ、情報モラルか。

 他にも情報リテラシーや情報倫理など多方面から情報社会を考える枠組みがある。

 それぞれ領域やアプローチの仕方が違う中で、学校教育として考えるなら、否応なく学習指導要領に定められた「情報モラル」となる。一応知名度もあるし。

 ただし、誤解された情報モラルではなく、本来の姿で。

学習指導要領の定義

 現行の学習指導要領では以下のように記述されている。

情報モラルとは、「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」
(1)他者への影響を考え、人権、知的財産権など自他の権利を尊重し情報
  社会での行動に責任をもつこと
(2)犯罪被害を含む危険の回避など情報を正しく安全に利用できること
(3)コンピュータなどの情報機器の使用による健康との関わりを理解する  こと

高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総則編

 さらに、情報モラルを身に付けるための考える学習活動項目を6つ掲げている。

(1)情報発信による他人や社会への影響
(2)ネットワーク上のルールやマナーを守ること
(3)情報には自他の権利があること
(4)情報には誤ったものや危険なものがあること
(5)情報セキュリティの重要性とその具体的対策
(6)健康を害するような行動

高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総則編

 この守備範囲はとてつもなく広く深い。国はこれを指導できる教師を何人供給できるつもりなのだろう。

 情報モラル教育がうまくいっていない元凶は、かつての英語教育の失敗と同様に、教育姿勢や教え方であって、情報モラルそのものではない。

体幹のようなもの

 情報モラルはスポーツにおける体幹や動体視力のような存在といえる。

 体幹や動体視力が優れているから試合に勝てるわけではないが、プレーの質を高め、ケガのリスクを減らす。

 情報モラルも同じように、それだけで何か成し遂げられるものでも楽しいものでもないが、情報活用や情報発信など次のステップに進むための基礎になる。

知識と技能と心がけ

 包丁や自動車といった他人を傷つける可能性のある道具を扱うためには、次の3つが必要。

 ① その物の特性や利用に際する規則などの知識
 ② 扱うための技能
 ③ 他人を傷つけないようにとの心がけ

 知識や技能がおぼつかないが、気合や気持ちでなんとかなるものではない。

 スマホという道具も同じ。

 スマホは、自分を傷つけ、他人を攻撃できる道具でもある。

 前提知識のない人に「OSを最新にしましょう」と言っても「OSって何?」と実行できない。

 知識、技能、心がけの3つがそろうことで情報モラルが成り立つ。

実技科目である

 テストで良い点数を取るためではない。

 情報モラルはメタボや生活習慣病の予防と同じく、知っているだけで実践しなければ効果は出ない。

 ネットサーフィン中に児童ポルノ画像を見つけたら?
 あなたならどうするか。

 ・ 家族に相談する
 ・ 警察に通報する
 ・ サイトの管理者に通知する
 ・ 無視する
 ・ ダウンロードする
 ・ 友人に教える
 ・SNSで拡散する

 本来はどうすべきなのか。優等生的には通報することだろう。しかし、現実的には無視することが無難なのか。

 この課題を判断するには、児童ポルノにまつわる社会問題、人権、法律や条令、利用規約、不正プログラム、通報窓口の有無について等多くの知識が必要。

 そうした知識を身に付けて、実際に起こり得る場面を想定して対応を考えておくことでいざという時に実践できる。

(つづく)

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