サイクリングと呼吸について理解を深める
今回も海外記事のご紹介です。
Cycling weeklyというニュースサイトに掲載されていた記事になります。
この海外記事の冒頭ではEILO(運動誘発性咽頭閉塞症)に関する記載がありますが、その箇所を省いた形で抜粋しています。
意訳、要約も行っていますので、予めお伝えしておきますね。
◆ご紹介する記事
良くない呼吸はどれほどパフォーマンスに影響するのか?
呼吸トレーニングを支持する人はその効果が明らかだと主張する一方で、呼吸トレーニングに懐疑的な人はわずかな利点と思われるものに時間をかけることに疑問を持っています。
ケント大学の呼吸エクササイズクリニックのジョン・ディックソンは呼吸トレーニングによって呼吸が改善出来れば、パフォーマンスの改善につながると主張しています。
(ここからの内容は、ジョン・ディックソンさんの見解です)
適切な呼吸パターンは呼吸筋の負担を減らします。
効果的な呼吸であれば、運動中の酸素摂取量の10%が呼吸筋にとって必要な酸素量です。
しかし誤った呼吸だと、必要な酸素量は全体の18%にもなります。
サイクリング中の姿勢の改善や呼吸筋のトレーニングが呼吸の改善につながります。
典型的には、以下のような兆候は乱れた呼吸パターンと言えます。
サイクリストの中には早く息を吐くほど早く空気が体に入ってくると勘違いしている場合が見受けられますが、呼気が必要以上に早い場合、それ自体が問題を引き起こす場合があります。
空気を急速に吐き出そうとする場合、上半身に緊張が生まれ、呼吸の質を下げることにつながります。
例えば瞑想のような呼吸法で呼気が行えれば、胸部の弾性によって自然な空気の出入りが行えて、サイクリストは自身の姿勢を正しく保つことに集中することができます。
呼吸パターン改善の利点
乱れた呼吸パターンの改善のカギは、横隔膜などの吸気筋の強化です。
タイムトライアリスト(20km、40km)の呼吸筋のトレーニングに関する研究では、平均して3.5%のタイム改善と主観的運動強度の低下が見られました。
呼吸の改善のためには胸郭が前後左右、そして上下に可動することをイメージするとよいでしょう。
全方向への可動がしっかりと行われるために、胸郭の下部から呼吸を始め、胸郭の横方向への拡がりを促すように行ってみてください。
この動きを意識するために、胸下部にレジスタンスバンドを取り付ける方法もあります。
胸郭の横方向への拡がりを意識して、胸郭下部でスムーズに呼吸を行うイメージを持ってバンドを拡げていきます。
このトレーニングは基本となるもので、ストレッチやヨガセッションで行うと良いでしょう。
いきなりこの呼吸方法をサイクリング中に実施することは他の集中すべきタスクが多く(周囲の確認や姿勢、ペダリングなど)、困難な場合があります。
概してライド中はハンドルバーを強く握って肩に力が入っている場合が多く、体幹部の筋は呼吸ではなく姿勢を保持する役割が大きくなっています。
極度に力が入っていると体から脚へとうまく力が伝わらずに、ペダリング効率も下がってしまいます。
鼻呼吸はサイクリストにとって効果的か?
鼻呼吸は呼吸法の一つとして有名なテクニックですね。
鼻呼吸では肺に空気が入る前に空気をろ過し、湿度を与えるため休息中には良い呼吸法だと言えますので、是非実施すべきです。
しかし運動強度が上がると鼻呼吸は難しくなってきます。
ライド中始めは鼻呼吸が出来ていても、強度が上がると徐々に口呼吸に移行せざるを得ません。
呼吸トレーニングを行うおススメの器具はあるか?
吸気トレーニングでは主として横隔膜による呼吸パターンを強化します。
パワーブリースなどの器具などで行うことができますが、それが効果的なものになるためには、まずは呼吸パターンの改善が必要です。
パワーブリーズなどの器具を用いたとしても、呼吸パターンの改善には直結しませんし、乱れた呼吸パターンを繰り返すことにより問題を悪化させてしまう可能性もあります。
しかし正しく行うことが出来れば、これらのトレーニング器具により横隔膜の強化が期待でき、吸気の改善によってパフォーマンスの向上も期待できるでしょう。
呼吸パターンの乱れを改善し、吸気筋の強化が進むと更に良い利点があります。ある研究によれば乱れた呼吸パターンを改善すると、心拍数が下がり、主観的な運動強度も低くなり、血中乳酸値も下がることが示されています。
体本来の機能を信頼し、自然な呼吸を行いましょう
鼻呼吸などにも言えますが、ある呼吸テクニックだけに執着しすぎないようにしましょう。
何故なら、自然な呼吸よりも効果的ではないという研究も存在します。
気持ちを落ち着けるために – 不安の軽減
呼吸によって交感神経による“闘争と逃走”反応を促す場合もあれば、副交感神経による“休息と消化”反応を促す場合もあります。
ゆっくり落ち着いて、鼻と腹部で呼吸してみましょう。
そうすることで迷走神経を刺激し、心拍数を下げ、心と体に安らぎをもたらしてくれます。
以下に3つのエクササイズごご紹介します。
長い呼気(息を吐く)を行いましょう:4秒かけて鼻から空気を吸いこんで、8秒かけて鼻と口から息を吐き出しましょう
ケイデンス呼吸:3秒間鼻から空気を吸い、3秒間息を止めます。その後6秒かけて鼻から息を吐き、3秒間息を止める、を繰り返します
ボックス呼吸:4秒間鼻から空気を吸い込み、4秒間息を止めます。その後4秒かけて鼻から息を吐き、4秒間息を止める、を繰り返します
ヒルクライムやレースの終盤では体が辛くて肩に力が入りがちですが、その状態だと呼吸は非効率なものになってしまいます。
日頃の生活、トレーニングから良い呼吸パターンを意識して、大会でも良い呼吸が出来るように準備していきたいですね。
今週の記事ではサイクリングと呼吸に関する論文をご紹介する予定ですので、是非そちらにも目を通してみてください。
今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
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