遺伝か、それとも環境か?
この問いは、だれしもが一度は見聞きし考えたことがあるものでしょう。
今回、この問いに対して1つの解をもららしてくれる良書に出会いました。
以下の本です。
今回は本書を読んで、わたしがとくに注目した箇所について感想を書いていきます!
二者択一ではない
まずは、能力を決定する要因は「二者択一ではない」ということです。
わたしたちは、つい「遺伝か?環境か?」というふうに遺伝と環境とを対立するものと見立て、どちらかが正解(でもう一方が誤り)という答えを求めてしまいます。二者択一の○×(マルバツ)問題のように考えてしまうのです。
しかし本書では、能力の決定要因とは「遺伝 or 環境」という二者択一ではないと解説します。
遺伝と環境は相互に影響を与え合うもので、それも時間的奥行をもっているといいます(これを「交互作用」という)。目の前に2つの選択肢があったときにどちらを選ぶかは遺伝が強く影響し、その選択によってあたらしい環境が得られ、その環境から何を感じて何を得るかは遺伝によって違いがあり、その次の環境選択に影響していく……、という繰り返しによって、わたしたち人間は能力を身につけていくのだそうです。
人間の能力は「遺伝か?環境か?」ではなく、「遺伝も、環境も」影響し合っているのです。
パーソナリティーは一生変えられない
また本書では、その人の性格的な個性である「パーソナリティー」は一生変わることがなく、変えられるものではないという指摘がされています。
本書では身体や知能、学業成績や問題行動などのさまざまな人間の特徴に影響を与える要素を、「遺伝」、「共有環境」(同じ親に育てられた等、同じ環境で過ごした影響)、「非共有環境」(育った環境とは無関係な個人差)の3つにわけて統計データを示しています。
このデータをみると、身体的な特徴(伸長の高低など)は大半が遺伝によって決定づけられ、知能は遺伝と共有環境が半々くらい影響を与えるなど、どの特徴にどんな要素が強い影響を及ぼすかがわかります。
そのなかでわたしが特に注目したのは、パーソナリティーに与える共有環境の影響が「ゼロ」(皆無)だという点です。パーソナリティーとは、神経質や外向性、開拓性、同調性、勤勉性といった性格的特徴にひもづくものです。これらに影響をあたえるのは、おおむね半分が遺伝、残り半分が非共有環境(個人差)だそうです。
これはつまり、子どもが神経質かどうかや勤勉であるか否かは、親の教育やしつけ(共有環境)によって改善したり向上したりできるものではないということが示唆されているのです。
変えられないけど、状況適応はできる
パーソナリティーは遺伝と非共有環境で決定づけられしまうという事実を受け入れると、自分の性格に弱点や嫌いなところがある方は絶望的な気持ちになるかもしれません。その性格的特徴は一生直せないと言われているようなものだからです。
しかし本書では、ここに救いを与えてくれます。
わたしたち人間はパーソナリティーという個人が生まれつきもっている素質自体を変えることはできないが、その素質から生まれる行動をコントロールすることはできるというのです。このコントロールを本書では「状況適応」という言葉で解説をしています。
感情的になりやすく怒りっぽい性格の人でも、感情を抑える対処法を身につけたり、そもそも怒りの感情が溜まりやすい場所に行かない等の対応はできます。自分の性格的特徴を理解し、その弱点や望ましくないクセ・傾向を表出させないようにする(表出する頻度を減らす)ことは可能なのです。
生まれながらにして怒りっぽいパーソナリティーをもつからといって、そのまま一生「怒りっぽい人」として生きなければならないわけではないのです。自己理解を深め、状況適応力を身につければ、周囲から見て「あまり怒らない、穏やかな人」になることは可能なのです。
今回は以上です。
今回紹介した本は、自分自身の能力形成について理解を深めたい方はもちろんのこと、お子様の教育に関心の高い子育て中の親御さんにおすすめしたい良書です。
ご興味ある方は、ぜひ一度読んでみてくださいね。