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がんばろうNOTO 被災地に寄り添う演奏を

 石川県のオーケストラであるオーケストラ・アンサンブル金沢に伺いました。2024年2月下旬のことです。


1月1日

 16:10 能登半島に大地震が発生。オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)が本拠地とする金沢市も大きく揺れ、北陸を中心に日本海沿岸広域にわたって、人的被害、家屋倒壊、火災、津波など甚大な被害をもたらしています。
 地震発生後、OEKメンバーと連絡を取り、避難所へ避難しているメンバーもいましたが安否を確認し、X(旧ツイッター)でメンバー全員の安全が確認できたことを発信することが出来ました。

1月2日

 石川県立音楽堂の被害状況を確認。事務局のモニターは棚から落ち、目視ではコンサートホールのオルガン内部にパイプのずれを確認できたのみでしたが、その後設備の不具合が見つかり、点検を要することとなったため、1 月8日に予定していた定期公演は延期としました。

1月4日

 リハーサル初日となるはずでしたが、メンバーや指揮者を交えたミーティングの時間とし、地震後、初めて全員が顔を合わせることができました。1 月7日に富山県射水市で行う公演は予定通り実施することとなり、5日から現地でリハーサルをおこなうこと等、公演へ向けた準備を始めました。

1月7日

 射水公演開催。公演冒頭に、広上アーティスティック・リーダーのメッセージを代読し、公演を開催。
 被災地でもある射水市にも配慮しながら、ロビーに募金箱を設置させていただきました。イタリアから来日した指揮者のエンリコ・オノフリは家族や友人から心配する連絡を受けていたそうですが、「金沢は無事だ」と返信していたようです。
 石川県立音楽堂では1月11日、コンサートホールの点検が終わり、安全に使用できることが確認され、1月13日以後すべてのホールの使用が再開されました。

1月19日

 音楽堂コンサートホールでランチタイムコンサート開催

 公演開催地での募金活動、OEKチャリティーコンサートの開催、被災地応援メッセージボードの設置、さらに被災地の状況や要望を踏まえ、ボランティアコンサートの実施など、今後の石川県音楽文化振興事業団としての復興支援活動内容を観客、報道関係へ向けて発表しました。

1月27日

 今年初めての定期公演を開催。前半のシューマンの交響曲第1番「春」の終了後、募金を呼び掛けるアナウンスを行い、指揮者のクリストフ・コンツとともにOEKメンバーによるバケツ募金を実施。735,445円の義援金をお預かりし、石川県を通じて被災地へ送付しました。バケツ募金は創設音楽監督である岩城宏之氏の発案で、1995年阪神・淡路大震災時にも実施され、以後、OEKは大きな被災が起こるたびに実施しています。

 後半のブラームス「交響曲第1番」は観客の熱狂と共にコンサートを締めくくりました。当公演には輪島市で被災され、県外に二次避難されていた被災者の方も来場され、後日お手紙をいただきました。

「ロビーにてメンバーの皆様のあたたかなメッセージと素晴らしい演奏を目の当たりにし心が震え、涙が滲みました。どの様な時でも場所であっても音楽はいつも身近で大事なものだと改めて思いました」

チャリティーコンサート開催

 1 月29日には広上淳一アーティスティック・リーダーが石川県を訪れ、今後OEKは被災地に寄り添った活動を展開すること、チャリティーコンサートへの来場を、地元マスコミを訪問し伝えました。その夜、金沢駅内のレストランで毎月開催しているミニコンサートでも、被災地への想いを伝え、これからのOEKの取り組みを宣言しました。

2月6日

 「がんばろうNOTO」のスローガンを掲げ、「祈り、安らぎ、勇気」をテーマにチャリティーコンサートを開催。広上アーティスティック・リーダーのビデオメッセージとともにお亡くなりになられた方へ黙とうをささげ、松井慶太OEKコンダクターの指揮によるバッハのアリアを、続いてOEK名誉楽団員であるルドヴィート・カンタ独奏によるハイドンのチェロ協奏曲第1番を松井指揮で、最後は川瀬賢太郎OEKパーマネントコンダクターによるベートーヴェンの交響曲第7番を演奏しました。

 アンコールでは松井、川瀬二人の指揮により「ふるさと」を観客の皆様の歌と共に演奏しました。終演後はロビーでお客様をお見送りし、新たな募金やお客様から被災地へ向けたメッセージをいただきました。収益すべてを義援金として被災地へ送ることとしています。


 全国のオーケストラから公演時に募金活動を行ったとの知らせを数多くいただき、感謝とともに勇気づけられています。震災後、真っ先にご連絡をいただいた仙台フィルとは2011年に金沢で復興支援コンサートを開催し、2023 年12月に仙台で合同演奏会を開催いただいたばかりでした。先日、日本フィルが展開している「被災地に音楽を」の活動をご紹介いただきました。仙台フィルや日本フィル、全国のオーケストラが取り組んでいる活動を学び、OEKはこれから被災者の皆様に寄り添った活動を本格的に展開いたします。

オーケストラ・アンサンブル金沢 ゼネラルマネージャー 
床坊剛

編集追記

 2月19日OEKは能登半島地震の被災者が一時的に身を寄せる金沢市内の1.5次避難所2カ所で、弦楽四重奏など「がんばろうNOTOコンサート」を開催した。
 今後は金沢以南や受け入れ態勢が整った能登方面の避難所でも開催を予定している。復興の道のりを共に歩むオーケストラがいることに触れて頂き、少しでも力となって欲しい。

写真提供:オーケストラ・アンサンブル金沢

2024年3月29日発行
「日本オーケストラ連盟ニュース vol.113 40 ORCHESTRAS」より


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