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オーケストラがコロナ禍で存続するために2

前回に引き続き、コロナ禍でオーケストラ団体がどのように存続してきたのか、また今後望むことについて、「日本オーケストラ連盟ニュース 38ORCHESTRAS vol.105」より掲載いたします。

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J-LODlive、「ARTS for the future! 事業」など事業をおこなうことでの支援

桑原 既存の収録映像を海外に配信することに対して支援するという経産省の J-LODlive(コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)は、中止になった公演の補填をするためなのに、公演の映像が必要という矛盾点もありました。また、手続きの煩雑さや金額の少なさについて指摘されましたが、いかがでしたか?

志田 申請し、12月公演分を5月に入金いただきました。手続きについては、聞いていたよりは大変なこともなかったと担当者は話しております。

桑原 並行して文化庁の「ARTS for the future! 事業」では事業をおこなうことでの支援でしたが、中止となった公演の支援も申請できるようになりました。トライしてみましたか。

工藤 楽員費(自らの出演料)が対象にならない J-LODlive は手間を考え申請しませんでした。文化庁の「ARTS for the future!」事業の方も最初は人件費が対象になかったのですが、その後、固定費部分が新しくある程度対象になっていました。

桑原 国から出ている情報の自らのこまめなチェックが必要ですね。状況によっては、また中止公演が増えることもあると思いますが、予算が決まっているために申請が早い者勝ちのような状態になっています。他に文化庁では「大規模かつ質の高い文化芸術活動を核としたアートキャラバン事業」もあり、日本オーケストラ連盟でも47 公演を予定しています。「ARTS for the future! 事業」はそれぞれの楽団から申請できる事業ですが、申請している楽団はありますか?

赤穂 主催公演ではおこなっていませんが、依頼公演で主催者が申請しているケースは4公演ありました。楽団に興行のリスクがないためありがたいです。

今後、支援に望むこと

桑原 事業の形での支援には、大変ありがたい一方で、多くのオーケストラにとってはスケジュールに余裕がないという問題があり、活用できる楽団と厳しい楽団に分けられてしまっています。令和 4 年度の予算が厳しいという見込みの中、コロナ禍が続いたらどんな支援を望みますか。

赤穂 「舞台芸術創造活動活性化事業」は厳しくなると聞いています。アフターコロナを考えると元来ある助成金の拡充は最低限、現状維持で確保してほしいと思っています。

西濱 赤穂さんと同じ考えです。今後の状況については不安があります。コロナ支援で国家財政が厳しくなる中で、従来の支援が少なくとも維持されることを望みます。「文化芸術による子供育成総合事業」も同様に。コロナの中で「不要不急」ではない活動として国・芸術団体一丸となって発信力を強化してきました。社会的価値を高める活動を展開するうえでも、舞台芸術支援の方向性を国とも協議していきたいですね。

工藤 雇用調整助成金も国の支援も失業率を上げないために、人よりも企業に対し支援をしているように見えます。自粛要請や入国制限、感染対策など政府に協力しましたが、通常の採択された助成金の一部を返還することになりました。自立していかなければならないと感じています。

志田 工藤さんが仰ったことはその通りで、以前より肝に銘じていました。自分たちだけ存続するためでなくオーケストラ業界全体が存続することで自分たちも存続していければと思っています。

桑原 助成金は役に立ち、ありがたかった一方で、手続きを簡単にしてほしいという気持ちもあり、長年実績を持っている団体を評価して別に扱ってほしいということは主張していきたいと思っています。支援に頼りすぎないようにしなければならないですが、あるものは活用していきたいです。また、コロナ禍で増えた予算の反動で、来年の予算が減らされるということがないようにしていかなければならないですね。みなさんありがとうございました。

まとめ

 コロナ禍においての国の支援をうまく活用することは大事だが、事業をおこなうことによって得られる支援はスケジュールの確保が難しいという現状がある。また、感染が収束した際―“ アフターコロナ ” になった時に、コロナ禍以前に得られていた助成金や支援が得られなくなることがあるとすれば本末転倒である。自立した運営を目指すとともに、コロナ後にも変わらぬ支援を望みたい。