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グミ・チョコレート・パイン

ここ1ヶ月ほど、本を読む時間が増えた。

我が部屋にある本の大半は東野圭吾とオーケンで占められているもので、最近はオーケンの本を手に仕事へ出掛けていく。

敏太郎さんとの対談、『人生で大切なことはオカルトとプロレスが教えてくれた』に始まり、『エッセイSR311』を読むところから読書習慣が復活した。

それからユリイカの今敏の世界(すごく分厚くて細かい文芸書)を読み終え、再びオーケンの書く活字の世界へ戻る。

『グミ・チョコレート・パイン』の3部作を再び手に取った。

2年前の夏、オーケン沼に落ち、職も失い(予定通り)、皆んなが楽しむ姿を見るのに耐えきれずTwitterから離れていた。

そんな時に図書館でこの3部作を借りて、2日ほどで読み終えてしまった記憶がある。

その後、日々の生活に忙殺されすっかりどんな内容だったのか忘れてしまったのでコレクションついでにブックオフで3部作の単行本を買い、読み始めた。

あれ…こんなに下ネタだらけだったっけ??

メンタルが完璧に参ってる時は表紙の絵がエロくても中身がおバカな高校生の性処理の話から始まって1冊の大半が下ネタ塗れでも全く気にならなかった。全編家で読んでたからか?

あれから時は経ち、電車で「これはエロ本だな」と思いながら表紙にカバーも付けずに読み耽った。ほんの少しだけ、周りの目が気になった。

様々な思いが自分の中で交差していく…

「自分には他の人にはない才能がある」「人が知らない知識を映画や音楽、本で溜め込みたい」「自己嫌悪マント」「みんなに笑われている、悪口を言われている」…どれも身に覚えがありすぎて深い沼の淵に追い落とされそうな気分になった。

しかし、悪いことだけじゃない。グミ編では実在のアーティストの名前がよく出てくるし、映画のタイトルも沢山出てくるので知っているものがあると嬉しい。

それどころか、「ポルノ映画館で会った女(ひと)だろ」がP-MODELの1stシングル「美術館で会った人だろ」のオマージュであることに気付いてテンションが上がる。

チョコ編のあとがきで「既に自殺した登場人物ですら幸せになって欲しい」と書いてあった。

…オーケンもこれを書いていた頃は本当に辛かったんだな。

それからパイン編で完結するまで7年の空白があり、パイン編の文章の雰囲気がグミ編チョコ編とは異なっていた。

7年間の間にオーケンを取り巻く環境がすっかり変わって色んなことを経験して…自分の辛い経験までもを取り込んで作品として消化する力は凄いな、と読みながら感じた。

山口美甘子主演映画のタイトルはオーケンの2ndソロアルバム「I STAND HERE FOR YOU」。山之上の詞は"散文詩の朗読<UNDER GROUND SARCHLIE>"や"鉄道少年の憩"が出てくる。

読んでて「あ!」となるような2年前には出来なかった体験ができたのも楽しかった。

完結するまで11年掛かってしまったとパイン編のあとがきには書いてあったが、間に7年空いていたからこそ出来た作品だと思うし、ちゃんと物語を最後まで終わらせてくれてありがとう、と登場人物たちも思ってると思う。

何だかまとまりのない文章になってしまったが、人生で腐りそうになった時もそうでない時もまた読み返したいと思う1作であることには違いない。